青い、空の下で。〜中学生編〜

第5話 第6話 第7話第8話


第5話 部活

「ねえねえ、美月は部活どうする?」

「へ?」

入学して2週間ちょい。クラスではじめてできた友達のあかねに言われて「部活動」の存在を思い出した。

「そういえば…何にも考えてないや。あかねはどうするの?」

「陸上部か卓球部のどっちかで迷ってるの。美月決めてないんだったらこの後仮入部一緒に行かない?」

「え、陸上部?」

「え、興味ある?」

「あ、そうじゃなくて。あのね、お兄ちゃんが陸上部なんだ。2年なんだけど。確か長距離。」

「へぇーっ。で、美月どうする?」

「あたし体育苦手だからな〜…。練習についていけそうにないし、よしとく。ゴメンね。文化部全部見て決めるよ。」

「そっか。分かった。じゃ、また明日ね。」

うちの学校の文化部は吹奏楽部、合唱部、理科部、美術部、コンピューター部の5つ。

仮入部期間は1週間だから1つづつ見てみよう…。


〜吹奏楽部〜

「あれ、美月。」

「円香!」

吹奏楽部の練習場所の音楽ホールに入ると、入り口のすぐ近くに円香がいた。

「美月もブラバン?」

「ううん、考え中。とりあえず一人文化部ツアー中なの。」

「運動部は無理だもんね。」

「はは……円香はブラバンにするの?」

「うん。実は小学校のときから決めてたの。うちの両親二人ともブラバンじゃない?

話聞いてるときつそうだけど、でも楽しそうだから。」

「そっか。」

「美月も何か楽器貸してもらえば?」

「ん…?ねえ円香、きついって何が??」

「え?練習よ?なんか筋トレ、ランニング、その他…とか、あと休みがほとんどないらしいし。」

……………

「あたしには…無理だね。」

「そうかもしれないわね…。」

円香に別れを告げてブラバンを後にした。

第6話 部活その2

〜合唱部〜

「合唱部は、年1回のコンクールと、年4,5回の発表会があります。入部するとまず3つのパートに分かれて…。」

吹奏楽部が活動している音楽ホールの向かいにある音楽室。あたしはブラバンの後ここに来てみた。

「基本的に部活は毎日、本番前は土日も活動します。夏休みには学校で合宿も……。」

い、忙しそう…。でも、部長さんも優しそうだし、いい感じ…。

「質問はありませんか?」

「はーい!この列の右端の1年8組青山さんも入るんですかぁ〜?だったらあたし入んない〜!」

!!

よく見ると、1年生の列にクラスの子達が並んでる。その子の周りからくすくす笑いが聞こえる。

「え、えっと〜…。」

部長さんも困ってる……。

「あ、あたし、入んないです!」

そう叫んで音楽室から逃げちゃった。あたしって弱い…。


美術部は興味ないし(図工苦手だったし)、コンピューター部は男子ばっかり。

理科部にはなっつんがいたけど同じく興味ないし……。

はっきり言って、入りたい部活が、ない!!

やちるはテニス部、小1から仲良しの男子、裕は卓球。

みんな部活決めちゃってるのになぁ〜。

「あ、いたいた。美月ちゃーん!!」

「あ、ひーちゃん!」

帰ろうとしたら、ひーちゃんに呼び止められた。

「ねえ、美月ちゃん部活決めた?」

「ううん、入りたいのがなくって。ひーちゃんは何部?」

「英語部!」

ん?

「英語部なんてないじゃん。」

「今年からできるの。あのね、あたしんちの近所に住んでる1こ上の先輩が、友達と作りたいねーって言ってたんだけど、去年は人数が足らなかったんだって。 新しいクラブ作るのには最低5人部員がいるらしくって。今人集め中なの。美月ちゃんもどう?英語の授業楽しみって言ってたし。」

「英語部かあ…。…忙しいクラブになりそう?」

「ううん、今の予定では週3の活動だって。」

「それなら……うーん、入っちゃおうかな。」

ひーちゃんと一緒なら心強いし、忙しくないなら問題もないし。

「本当?やったぁ!」

4月下旬、所属クラブ決定―――。

第7話 ともだちたち

「「おはよー美月!!」」

「円香、やちる!おはよー!!」

毎度お馴染幼なじみの円香、やちるとは小1のころから毎日3人一緒に学校へ行ってる。

クラスが変わっても、朝は一緒にいられる。そう思ったけど…。

「あ。美月、やちる。」

「「何??」」

「うちのブラバン、明日から1年生も朝練するらしいの。だから明日からは一緒にいけなくなっちゃって。ごめんね。」

円香は吹奏楽部で、おじさんおばさんと一緒のトロンボーンっていう楽器に決めたんだって。

「いーよいーよ別に。頑張ってね。ね、やちる。」

「あ〜…あたしもテニス部明日から朝練あるの〜……。美月一人になっちゃうんだ、どぉしよ〜。」

「あ、そうなの?ん、分かった。大変だねー。頑張って!!」

寂しいけど、仕方がないよね。

「「美月、明日から一人でちゃんと学校行ける?」」

二人が聞いてきた。

「行けるよ!いくら何でも。徒歩10分の道のりでどうやって迷えって言うの?」

「徒歩5分の小学校行くのに道間違えたの、」

「誰だっけ〜。」

「いつの話よっっ!!」


「あ、美月。」

それぞれテニス部と吹奏楽部の部室にいく2人と別れたあたしは、げた箱でなっつんとひーちゃんに会った。

「おはよ、なっつん。あ、ひーちゃんも。」

「あ、美月ちゃん、後ろ。」

「へ?」

ひーちゃんが何かに気付いて後ろを指差した瞬間。

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ

ドカッ

靴を履き替えようとしゃがんでいたあたしの上に何か重いものが乗ってきた。

「おーっす、夏目に高槻!!ついでに美月。」

「あ、裕……。」

「お、おはよ、裕君。あの……。」

「どいてよこのチビ!!!

「うわっこいつチビとか言いやがった!自分がちょっとでかいからって言ってはならん事を!!」

「朝っぱらから女子にのしかかる方が悪いんでしょっ!それにあたしがでかいんじゃなくて、あんたがチビなの!!この”ゆう”!!」

「誰がゆうだっ!!!俺は裕って書いてひろだ!分かってるくせに言うなよなっ!!」

「「あ〜あ……。」」


相変わらずの喧嘩を繰り返すあたしと裕を尻目に、なっつんたちは行ってしまった。

こいつ―――桜井裕は小1からのケンカ友達。だけど。

「……ねえ、裕。」

「んあ?」

「裕、知ってるでしょ。あたしの噂……。クラス近いし。あんな風に小学校のときと同じテンションであたしといたらなんかいわれ――ぶっ!!」

話してる途中で今度は頭を殴られた。

「バーカ。あんなしょーもないうわさで俺が友達見放すやつだと思ってんのか?」

「裕………。」

「気にすんなよ。なっ。」

「…だからって殴る事ないじゃん!!リアルに痛かった今の!!!」


裕は昔からこーゆー奴。バカだけどいい奴。

円香も、やちるも、なっつんも、ひーちゃんも、そしてこの裕も。

長い付き合いの大事な友達。

クラスが離れて、新しい友達ができても絶対切れることのない、縁。

親友の縁は、大事にしないと、ね。

第8話 転地学習

宮野市上岡町3丁目2-2-8-204、青山家の朝は、

末娘であるあたし――青山美月(13歳中1)の大声で始まる。


「まい兄、あき兄!!起きてーっ!!」

3人の兄の部屋に押し入って、まい兄とあき兄の枕もとで怒鳴る。

ああ、のどが痛い。

「んあ〜……。こんな早朝から起こすなよ、美月〜。」

「もう7時でしょっ!どこが早朝よ!すー兄は朝練行っちゃったよ!」

「あ〜…。ん?秋羅、お前今日朝練は?」

「今テスト前だから無い。てかまい兄、同じ学校じゃん。テスト覚えてる?」

「ん、ああ。加藤が言ってたよーな……。」

「お、例の同じクラスの?どんな子だよ。」

「あ〜…ったく、俺がどんなにアピールしても気付きゃしねぇ…。」

「狙った女は逃がさない、宮野高校が誇る女ったらしのまい兄がね〜。」

「いーからとっととご飯食べてっ!」

「「お〜……。」」

なんでこの2人はこんなにも、朝が弱いんだろう。

そして、お姉ちゃんはどうやって毎朝この2人を素早く起こしてたんだろう。

「まったく、あたしが転地学習行ってる間どうするつもり?」

「え、もうそんな時期?」

「だってもう5月だもん。20日から2泊3日。」

「「いってら〜。」」

「不安……。」

本気で不安。遅刻のし過ぎで成績下がっても知らないから!


「へー。美月って大変なのね。大丈夫?」

「ん、もー慣れた。」

「ね、それより転地学習って何するんだっけ?」

「えっと、飯盒炊爨とか、登山とか?」

「楽しみ!あたしそういうの好きなんだ!」

「あたしも!」

「え〜……だって、……ね〜。クスクス…。」

あかねと話してると、また教室の女子の集団からヒソヒソ聞こえてきた。

「美月!気にしちゃダメだよ。あたしが一緒にいるんだし。」

「…うん。」

変なうわさで嫌われるのは悲しいけど、すぐ収まるから大丈夫だって。

あかねが言ってくれて以来、少しずつ気分は軽くなっていってる気がする。

「ね、部屋って確かあたしたちの班は1組と一緒なんだよね。

あたしの小学校からの友達がおんなじ部屋なんだ。今度紹介するね!」

「うん。ありがとー。」

少しずつでもいい。

この学校のこの学年のこのメンバーに、馴染んでいけたらいいな…。


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