月は夜ごと海に還り

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  第九章  



(1)


「そうですか・・・」

 リアとのやり取りの一部始終をギルモア博士から聞いた004は、天井を見上げて考え込んだ。
 009は見回りに出ている。リアの話をするには彼が居ない方が好都合だった。リアの尋問を博士自らが行った事は004にとって少なからず驚きであった が、  結局妙な感情のもつれ無しに話が出来る可能性を考えると、やはり適任者は博士という訳で、004は彼に心の中で感謝した。

「結局詳細は分からずじまいじゃ。こうなれば彼の脳内データの解析を急ぐしか方法はあるまい。深層部まで無理に覗くのは気が進まんが・・・」

「彼は何をためらっているのかしら?自分で白状するより脳内データを覗かれる方が彼にとってリスクが高い筈だと思うけど」
003が疑問を口にする。

その時低い声で004が言った。
「博士・・・ひとつ気になるんですが、リアの脳内の謎のリンクって・・・それは・・・」
ギルモアの顔が僅かに引き攣ったのを、彼らは見逃さなかった。
「もしかして・・・」
003は手で口を覆う。
「ああ、君達は聞いたことがあるかもしれんな・・・いや、まだ決まった訳じゃない」
「その研究は00ナンバー第二世代の開発と共に打ち切られたと聞いたが・・・」
博士は頷いた。
「わしもその様に認識しておる。しかしわし達の逃亡でそれまでのサイボーグ開発が大きく見直されたのは想像に難くない。 リアの脳にリスクを犯してまで後からわざわざ付け加えたその真意を考えると・・・辿り着くのは・・・」

考え考え話す博士の声は段々小さくなった。
3人は押し黙った。

「もしそうだとしたら・・・009には事実を知らせるべきかの」
博士の声は苦し気だった。

004はちょっとの間考え、そして言った。

「・・・はっきり伝えた方がいいでしょう。共存が必ずしも幸福をもたらさない事を、あいつは分かってもいい頃です」





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