やっぱ実演? 〜2019年〜


僕が行った2019年の演奏会の感想です。


<5>12月30日 大阪フィルハーモニー交響楽団「第9シンフォニーの夕べ」

曲目
 ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
指揮
 尾高忠明
管弦楽
 大阪フィルハーモニー交響楽団&合唱団
場所
 大阪 フェスティバルホール

今年も年末恒例の、大阪フィルハーモニー交響楽団の「第9シンフォニーの夕べ」を聴いてきました。
大フィルの年末の第9はちょっと変わっています。第9終演後に合唱団だけが残って「蛍の光」を歌います。二酸化炭素のスモークが出てきます。合唱団は1人1人がペンライトをつけていますが段々消えていき、最終的にはホールが真っ暗になり、舞台から掃けて行きます。それはもう幻想的で、開場も拍手喝采になります。
フェスティバルホールは改修後は緞帳がなくなり、それがちょっと残念ですが・・・。

僕は去年は思うところがあって行かなかったんだけど、すごく後悔してまたまた思うところがあって今年は行くことにしました。やっぱり年末恒例の第9はいいです。


<4>11月14日 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 大阪公演

曲目
 A.ブルックナー:交響曲第8番
指揮
 ズービン・メータ
管弦楽
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
場所
 大阪 フェスティバルホール

演奏もさることながら(特に、ワグナーテューバがよかった)、一番びっくりしたのが、メータが杖を突いて出てきた。そして座って指揮を。そういえば去年のイスラエル・フィルとの来日も体調不良でキャンセルしたし、プログラム冊子で「もう大丈夫」と言っているけど、考えればメータももう83か84歳。盟友アバドやマゼールも死んじゃって、とても心配です。メータに関しては、マッチョどうかは知らないが、大柄でしっかりとした体格をしていると言う印象を持っていたので、かなりびっくりした。非常に心配です。


<3>11月10日 ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2019(第57回大阪国際フェスティバル 2019)

曲目
 R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
 R.シュトラウス:「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
 J.シュトラウスU世:オペレッタ「ジプシー男爵」序曲
 ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「神秘な力(ディナミーデン)
 R.シュトラウス:オペラ「ばらの騎士」組曲
指揮
 クリスティアン・ティーレマン
管弦楽
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
アンコール
 エドワルド・シュトラウスT世:ポルカ・シュネル「速達郵便で」
場所
 大阪 フェスティバルホール

11月10日15時といえば、東京では「祝賀御列の儀」、大阪では「ウィーン・フィル ハーモニー ウィーク イン ジャパン 2019」があった。どちらも盛況だったようでなによりなにより。僕はウィーン・フィル ハーモニー ウィーク イン ジャパン 2019を聴きに行ってきた。まるで「ニューイヤーコンサート」に行ってきたようだった。至福のひとときでした。「ジプシー男爵」は「こうもり」序曲からの変更。正直、こうもりのほうがよかったと思ったら、いやいやジプシー男爵もすごいよかった。「ばらの騎士」組曲の冒頭のホルンのファンファーレにもド肝を抜かされた。ティーレマンが出てきて短い拍手のあと、振り向きざまにあのファンファーレだったから・・・。正直、僕は前半の2曲は全然明るくなかったけど、十分楽しめ、さっきも書いたが、まるで「ニューイヤーコンサート」に行ってきたようだった。(座り心地はフェスティバルホールの方がよかったみたいだが)。いやぁ、よかったよかった。

2つほど「うだ」を。
・開場は14時だったが実際は約25分押し押だった。リハーサルを押してまで、お客さんに最上級のウィ−ン・フィルの音を引き出すのもプロ。ちゃんと決められた時間までに
、最上級のウィ−ン・フィルの音を引き出すのもプロ。さぁ、あなたはどっち?
・フェスティバルホールでのウィーン・フィル、しかも日曜日なのに、なぜタクシー乗り場にタクシーが来ない?


<2>10月27日 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 

曲目
 スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より第2曲「モルダウ」
 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
 チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴
指揮
 セミヨン・ビシュコフ
管弦楽
 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
ソリスト
 樫本大進(Vn.)
ソリストアンコール
 J.S.バッハ:ヴァイオリンの為の無伴奏パルティータ第3番より第2曲「ルール」
場所
 大阪 ザ・シンフォニーホール

ひさしぶりに大阪ザ・シンフォニーホールに行きました。ご存知だとは思うけど、ここはカラヤンをして「世界一音がいいホール」と言わしめたクラシック専用ホールである。会場の規模が小さいので、オケとの一体感が半端ない。最後方の席でも臨場感がある。しかし、音がいいのは会場内のことであって、もちろんそのほかの施設・設備は別にこの中には入っていない。それどころか、「箱(会場)」は素晴らしいがここのスタッフとハード(会場内部を除く)は平均以下ではないだろうか?特に身障者に対してはその評価は最低クラスと言っても過言ではないと思う。ここのスタッフは「バリアフリー」と言う言葉は知らないんだろう。そんなことだから、兵庫県立芸術文化センターやフェスティバルホールに客を取られるんだ!以前は、開場前になると男性スタッフ数人が喫煙エリアを作っていたんだけど、これがまた全くやる気がなくて・・・。ひさびさに行ってみたら女性スタッフに変わっていた(その時だけかも知らないが・・・)。だれかからクレームでも入ったんだろうか?ちなみに僕は入れていない()。ひさしぶりに行きましたが相変わらずだった。
やれやれ。

さて、ビシュコフについてですが、僕がクラシックを聴き始めたころに、何枚かのロシア物のディスクが出たけど、「唇おじさん」と言われて、ケルン放響とマーラーの3番が出た以降はその名前を聞かなかった。(まぁ、聞かなかったのは、僕の性なんだろうけど・・・)。で、チェコ・フィルの音楽監督と来たもんだからたいそうびっくりした。まさしく寝耳に水なのである。正直な話、あのチェコ・フィルとやっていけるだけの力量があるのか?といささか眉唾だったんだけど・・・。

当夜の演奏なんだけど、「モルダウ」とチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、「悲愴」の3曲。

まずは「モルダウ」から。
もう、文句のつけようがない安定の演奏。チェコ・フィルはこの曲を何回やっているのだろうか?でも、あえて言わせてもらうと、非常にレベルの高い優等生の演奏だけど優等生すぎていまいちなんか足りない。なにが足りないのかはわからないが、連作交響詩として全曲演奏した場合でも、はたしてのちに述べる「悲愴」ほどの感動を味わえることができるだろうか?なにが足りないのか?安心して聴くことができたがあまりに安心すぎて・・・。

ヴァイオリン協奏曲
いやはや大進君って上手いですね。さすがはBPOのコンマス。もう軽々しく「大進君」なんて呼んではいけない。ちょっと重心を後ろに移してつま先をあげて演奏するポーズが何とも言えずかっこいいです。後ろで伴奏する「タン!」という音形がそろっているというかさすがチェコ・フィルという感じでした。
で、「悲愴」
これがすごかった。正直、やりすぎでは?とも思ったのですが、うるうるしてしまいました。普通、楽章間の拍手はタブーとされているけど、当夜の演奏は3楽章が終わったところで拍手がありました。いわゆる「涙なしでは聴けない感動」的な演奏。
「悲愴」というとフェドセーエフを思い浮かべます。フェドセーエフはチャイコフスキー自身の自筆譜による録音を行った。自身による初演のあと、何カ所か修正を行ったということだが、一番わかりやすいのが第4楽章の速度指定である。「悲愴」という標題は、弟のアイデアということですが、この曲が最後の交響曲ということもあって、いつの間にか「涙なしでは聴けない」的な演奏が多くなったが、本当はそうではない、これが本当の「悲愴」だ!ということで録音もし、NHKでもフェドセーエフの考えと演奏も放送された。それを採るならば当夜の演奏は「やりすぎ」ということになるが、チェコ・フィル&ビシュコフによる演奏はそれはそれはすごい圧巻の演奏で、思わず楽章間で起きてしまった拍手にもうなずけます。そして僕のうるうるにも。まさしくビシュコフ恐るべしです。いまのところベストです。


<1>3月9日 京都市交響楽団 

曲目
 シューベルト:交響曲第7番<未完成>
 マーラー:交響曲第1番<巨人>
指揮
 広上淳一
管弦楽
 京都市交響楽団
アンコール
 エルガー:変奏曲「謎」から 第9曲「ニムロッド」
場所
 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

♪考えたら去年は一回も実演に接することがなかった。年末の大フィルの第九も行かなかった。もちろん考えるところがあってのことだけど、再度考え直していつもどおりとはいかないと思うけど、出来る範囲で実演に接しようと思う。
そこで、今年最初の実演は、偶然にも贔屓にしている広上淳一&京都市交響楽団。まぁ贔屓といっても、大阪に来たときは必ず聴きに行ってるだけだけど。前にも書いたけど、学生時代、京都に通っていたこと、京阪神のオーケストラよりはるかにうまい、ということから贔屓にさせてもらっている。いままで何度か京響の演奏会(本拠地の京都コンサートホールに行ったのも含め)に行ったが、どれもが「行ってよかった」と思えるものばかりで、当夜の演奏会もそうだった。でも、「行ってよかった」どころではなかった。

まずは【シューベルト】
有名な「未完成」ではあるけど、シューベルトの実演は聴いたことがなくて、いや正確に言うと、以前メータ/ISPが来日してマーラーの「悲劇的」をやったときに、3番か5番をやったのを聴いたんだけど、全然記憶がない(笑)。以来シューベルトは全くの門外漢になってしまった。ところが当夜の演奏は少し違った。全然聴きこんでないのでどこがどうかは僕にもわからないけど、「ちょっと聴いてみようかな」と思えた。

で、【マーラー】
ちょっと書いたけど、「行ってよかった」どころではなかった。最初に言っておきます。クラシック音楽の実演に携わって約30年になるけど、恐らく一番感動した演奏会だったと思う。細かくなっちゃうけど、第4楽章の弦楽器が合奏するところ(第4楽章:【3’36”付近〜と11’57”付近〜】)も、あんなに深く美しいのは聴いたことがない。僕がサントリーホールでマゼール/バイエルン放送響の「巨人」を聴いてあられもないブラヴォーを飛ばしたであろう理由は、(【第4楽章:【9’57”】)のところの「タメ」にある。マゼールの「巨人」における強烈な演奏効果だが、僕が知る限り、ここで「タメ」ているのは、マゼールとティルソン・トーマスぐらいで、当夜の広上&京響はそれを再現してくれた。「タメ」はマゼールより長かったかも知れない。そのときの広上の指揮のポーズが、天に向かって高く指揮棒を指し示す格好で、その右奥でシンバルが客席に向かってこれでもかと言わんばかりに広げて、それはもう写真に収めたい奇跡の情景だった。細かくなってしまったけど、ここまで読むと、単に僕の「巨人」お気に入りの演奏スタイルが再現されただけでではないかと思うかも知れないが、もちろん全体のクオリティがよかったのは言うまでもない。ホルンのトリル(第1楽章:【14’32”付近〜】)が音が不揃いだったのと、どこか忘れたけどトランペットが一音だけ音をはずしたのが残念だったけど、どちらも演奏に影響のない細かいミスで、今後ああいう演奏はそうそうあるもんじゃない。終演間近のスタンドプレーだけど、ホルンパート(7人?)とその横にトロンボーンとトランペットがそれぞれ1本づつ立っていました。

アンコールにニムロッドをもってくるのもしぶい。もちろんニムロッドも美しかった。

(【】内の数字は、マゼール/NYPの「巨人」の参考タイム。)



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