広告に見るデボネア

新聞広告

一般に、運転手が付くような高級車はめったに広告を出しません。センチュリー・プレジデントは言うに及ばず、クラウンやセドリック・グロリアでも自家用狙いの広告がほとんどです。デボネアも、自動車誌で広告を見ることはごく稀です。しかし、まったく宣伝活動を行わなかった訳ではないようで、デボネア発表の頃の新聞を探すと、それなりの数の広告が見つかりました。

ちなみに初代デボネアの登場は昭和39年。GHQの財閥解体で三社に分離していた三菱重工が再合併し、同年10月には名神高速開業と東京オリンピック開催、また翌年には、10年来禁止されていた外車輸入が解禁になる、という中でのデビューでした。時期的には岩戸景気といざなぎ景気の谷間にあたり、「戦後最大の不況」と呼ばれた不況の真っ只中。高級車にはいささか不利な条件でのスタートが、その後の不振に繋がった気がしてなりません。

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毎日新聞 1964-07-15
三菱重工・三菱自販 広告

「自由化に放つ! =高級車 デボネア」

発表会は高輪プリンスホテル パレスホールで開催.

極初期モデルのためホイルキャップのセンターが車体色で,ハンドルは白い.
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毎日新聞 1964-07-25
三菱重工・三菱自販 広告

「自由化に放つ! =高級車 デボネア」

外車輸入の自由化は1965年の10月1日から.


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毎日新聞 1964-09-09
東京オリンピック聖火ラリーの伴走

オリンピックPRの一環として行われた.
ルートは鹿児島―東京間の第一コース.

このまま行くと脱輪?

このナンバーはCG誌で小林彰太郎がテストした個体.
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毎日新聞 1964-10-09
聖火東京到着

「愛」ナンバーは64・5年迄

同時期にダイハツは,新車PRのためにコンパーノでアテネ―東京間を走破している.

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毎日新聞 1964-10-04
国際観光ルート走破・全日本ラリー

主催 毎日新聞社

参加車(三菱重工提供)
デボネア   6台
コルト1000 16台

参加チームは一般から募集
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毎日新聞 1965-07-20
住友海上火災 交通傷害保険 広告

交通傷害保険ということで,横断歩道をふさぐ車の写真.

運転者に向けた自動車保険ではなく,主に歩行者が受ける事故に対応した保険商品というところに時代を感じる.

もう一台は310ブルーバード.

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毎日新聞 1965-06-21
高級車デボネア
 完全自動変速機付


<世界のボルグワーナー><世界の三菱>の技術がマッチし〜(中略)〜高性能をフルに引き出します.

美しいイラストによる広告.

NTV系列の土曜ナイターと早朝ゴルフでTVCF放映の告知があり気になる.
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毎日新聞 1965-07-27
社長室の延長です
  風格をはこぶ=高級車デボネア


6/21の広告と似たイメージ.

「風格をはこぶ=高級車デボネア」の言い回しは、カタログと似たセンス.

フェンダーミラーが無いのは描き忘れか.


雑誌広告

デボネアの広告を探し始めた時、自動車雑誌にはまったくと言っていいほど見つからず驚きました。デボネア登場の頃の三菱の広告は、コルト一色なのです。そんな中で唯一見つかった「モーターマガジン」の広告は、表紙の次ページの折込みという力の入ったものでした。

古本屋で昭和39年ごろの雑誌を見かけるたびにチェックしたところ、平凡社の雑誌「太陽」から、沢山の広告が見つかりました。同誌は日本の「LIFE」を目指すべく昭和38年に生まれたグラフ誌で、それに倣ってか自動車の広告も多く掲載されていました。自動車雑誌は主にカーキチ向けの車種を宣伝していますが、一般紙では少し違ったアプローチで雑誌広告を打っているようです。

他の企業の広告でデボネアが使用されている例は、他にも三菱系列の企業を探せば出てくるのでは…と思います。


…と書いてきましたが、長く続けると、皆さんの協力もあって「太陽」以外でも、ビジネスマンや高齢者層向けの雑誌などから相当数の広告が発見されました。他の車種に比べて必ずしも「少ない」とは言い切れなくなってきました。

   
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週刊サンケイ臨時増刊
'64春季 1000万人の乗用車
三菱重工・三菱自販 広告

「自由化に放つ! =高級車 デボネア」

一連の新聞広告と同じ構図だが,車体色が黒から銀に変わっている.

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月刊モーターマガジン 1965-10
三菱重工・三菱自販 広告

「自由化に放つ! =高級車 デボネア」

左側のものと同一に見えるが微妙にアングルが違う.東宝模型のプラモデル箱絵もよく似ているが,これまた角度は異なる.

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ダイヤモンド 1964-08-10
東京菱和自動車 広告

経済誌にデボネアの広告を発見.ディーラーの東京菱和自動車のもの.経営多角化のため目黒区三田にボーリング場を開設とは,なんとも60年代らしい.

ダミーでもいいのでナンバープレートを付けて欲しかった所.

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ダイヤモンド 1964-10-26
三菱重工 広告

「あらゆる分野でお役にたつ 三菱の自動車」

写真は,この年の三菱重工の総合カタログと同一で,高速道路のジャンクションに三菱360,コルト,デボネア,ローザと三菱の各車種が並んでいる.

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映画パンフ『赤ひげ』 表4広告
三菱重工・三菱自販 広告

昭和40年4月公開の映画『赤ひげ』のパンフレット裏表紙に掲載された広告.黒澤映画とデボネアとは,イメージが合うような,合わないような.

こうして並ぶとコルト,ミニカとのデザインの一貫性が良くわかる.
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週刊文春 1965-01-04
三菱重工・三菱自販 広告

「賀正」

見開きで「初日の出とデボネア」というおめでたい広告.

掲載にあたっては、左右ページの継ぎ目を修正した.

debopacerさん提供
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交通公社の時刻表 1964-10
三菱重工・三菱自販 広告

「走る技術の結晶

新幹線開業特集記事「夢の超特急のすべて」に連動したもので,超特急列車で出張するビジネスマン層に向けた広告.

平和堂さん提供
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月刊太陽 1965-09
三菱重工・三菱自販 広告

霧けむる湖岸に佇む男女が何ともいわくありげ.

思わず「火曜サスペンス」的な場面を連想する.

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月刊太陽 1965-10
三菱重工・三菱自販 広告

一転して健康的な雰囲気.

この時期の「太陽」は高級車の広告が多い.


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月刊自動車技術 1965-04
日本板硝子 広告

上のイラストはデボネアの1964年版カタログのものを転用.

下の写真はワイパー位置などから左ハンドルの外車のようだ.

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月刊自動車技術 1965-06
自動車機器・三菱金属鉱業 広告

上下ともデボネアか?

自動車機器のマスターバック、納入車種にデボネアが載っていない.

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週刊サンケイ臨時増刊
'65秋季 1000万人の乗用車
三菱重工・三菱自販 広告

「ここに豪華さのすべてがあります」

同じ場所で同じモデルさんの登場する写真がカタログにも使用されている.どうやらロケ地は三菱系のゴルフ場、湘南カントリークラブのようだ.

写りこみが気になったのか随分修正された写真だ.男女の髪型も気になる.

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週刊サンケイ臨時増刊
'66春季 1000万人の乗用車
三菱重工・三菱自販 広告

「格調高き高級車 デボネア」

和風建築の前にデボネア.よく見ると玄関前に旅行カバンなど見えるので,ホテルか.手前の男性2人は少し行儀が悪い.
Asian Vox自動車部
JETSUNさん提供
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自動車ガイドブック '65-'66年版
旭硝子 広告

同社は三菱グループである.

「ラミセーフ」は合わせガラス,「テンパーライト」は強化ガラス,「ゾーンライト」は部分強化ガラスの商標.


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ダイヤモンド 1967-01-04
三菱重工・三菱自販 広告

「重要な決定を何処でなされますか」

さすが経済誌『ダイヤモンド』.まさに社長車、という広告.

「格調高いスタイリングは 走る重役室として高い品格をあらわしています」とのこと.

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月刊モーターマガジン 1967-11
日本電池 広告

モノクロのインパクトを生かしたデザイン.

キーを握る手の中に,白黒反転したデボネア.


9kiさん提供
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毎日グラフ別冊 '68春の乗用車
三菱重工・三菱自販 広告

「インテリア一新!
安全性と豪華さのすべてをデボネアにつらぬきました」

折からの安全基準の強化に即して、クラッシュパッド入りのダッシュボードにマイナーチェンジ。

イラストではハンドルの上下を間違えるミス!
   
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毎日グラフ別冊 '68春の乗用車
三菱石油 ダイヤモンドガソリン広告

「高速時代をリードする夢のハイオクタン」
むろんのこと,有鉛ガソリンである.

ややディフォルメされたデボネアが使われている.


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毎日グラフ別冊 '69春の乗用車
三菱石油 ダイヤモンドガソリン広告

翌年の広告にもデボネアが登場.フォグランプ付きのA30.スタンドの看板は最近まで見られたもの.

ミニスカートのお嬢さんがいかにも60年代っぽいですね.ちなみに'翌年の同誌の広告にはデボネア登場せず.
debopacerさん提供
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新車アルバム 1970 国産車特集
三菱重工・三菱自販 広告

「公式な場に優雅なシルエット」

モデル末期のA30型が珍しく広告になっている.なぜか左ウインカーが黒っぽく見える.

アポロ月面着陸の翌年ということもあり,宇宙ブームの盛り上がりを感じるデザイン.

アポロ計画の月ロケットはサターン5,A31の6G34エンジンの愛称がサターン6なのも偶然ではなかろう.
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文芸春秋 臨時増刊 1971-5
天皇陛下の70年
三菱自工・三菱自販 広告

「気品と風格が漂うクルマ。
      <デボネアエグゼクティブ>」

新エンジン搭載のA31型だが、撮影場所はまたもや湖畔である.『太陽』の広告と同じ場所だろうか?

珍しく普通の自動車らしい広告.天皇の本を読むようなオーナー層が想定購買者だったか.
平和堂さん提供
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ヤングバージョン 1986-5
三菱のクリーンカー 広告

「時間に媚びないレトロが好きだ。」

アメリカ風の街並みにフェンダーミラーのデボネアとギャランGTOが描かれた珍しい広告.Be-1の発売など世はレトロブームであった.

ドレスアップと再塗装済みの商品化中古車の第1弾『シグマ・ゴールデンロイヤル』のデビューに合わせて掲載された.

屋外看板

このネタも枯渇したかな…と思っていたのですが、素晴らしいアイテムが発掘されました。このコーナーとしては新しいジャンルの広告ですが、ディーラーの看板なども含め、今後の発見が期待されます。

高級花嫁貸衣装 ことぶき
花嫁専用車 広告

岐阜県にて発見.赤色が完全に抜けて少し怖い.
車はA31デボネア.ホイルキャップ中央のDマークも描かれている.
マル仲さん提供
天井の開く車で (有)こふぢ
花嫁専用車 広告

山形県にて発見.デボネアと思いきや,実は1967年式のFORD.

掲示板への投稿時に大いに盛り上がった一枚.

ちくわ犬さん提供
  

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