コノミジャナイ



本当のコトを言うと、貴方はちっとも私の好みじゃない。

私が好きだったのは、気持ちの真っ直ぐな男の子や寡黙な砂漠の戦士達。
おしゃべりは男の価値を下げると思うし、軽薄な女ったらしなんて問題外。

…のハズだった。

貴方の“優しさ”は、女性専用の社交辞令。
全てが上滑りなコトバ遊び。
貴方のホンネは、けっして“レディ−”達には向けられない。

…少なくとも、私には。

自分のコトを“騎士”だなんて言うけれど
どうして大袈裟な台詞や身振りで自分を鎧って、ほんの少しの距離を置いて
私に対しようとするの?

人当たりの良さそうな笑顔を添えて、甘く響く声で風味を付けて
貴方の並べる美辞麗句や楽しい話題は、その大半がドウデモイイコトで
本当の言葉は、100分の1にも満たない。

…だから実は貴方って、Mr.ブシド−よりよっぽど無口だわ。

恋とか、愛とか
そんなお手軽に囁いて欲しくない。
私のキモチが踏み出す前に、踏み込まないで。
私が踏み出せば、逃げてしまうクセに。

…ナミさんが好きで、世界中の女性が好きで。
  なのにどうして、私だけがトクベツだなんて自惚れたり出来る?

私には、時間が無くて。
私と貴方は、ずっと一緒には居られない。

だから、“今だけ”でも一緒に居たいと貴方は言う。
この船に乗っている間だけ一緒に居て、そして国に着けば別離れる。
そんなの、慣れっこなのね。

…それとも、“ダカラ”ちょうどイイの?

貴方の言う“愛”が嘘だとは言わない。
でも、それは私が夢見、望むモノと同じには思えない。

…私の理想が高すぎる?
  現実は違うよって、笑う?

だけど私は、綺麗なだけの思い出なんて要らない。
記憶のアルバムの中で、大勢の女の一人に並べられるなんて、真っ平よ!

…だから、貴方の手は取らない。

形式(かたち)だけの優しさなんて、要らない。
貴方の命なんて、要らない。
笑って私に傅(かしず)かないで。
貴方は海賊で、コックで……王家に仕える家臣じゃない。

自分の都合で私を“女のコ”扱いしたり“王女様”扱いしたりしないで。
勝手に“騎士”になったり“王子様”になったりしないで。
私の知らないトコロで怪我をしたり、危ない目に遭ったりなんかしないで。

求めるモノが、違いすぎる。
夜の闇に紛れて泣きたくなるほどに。

でも、私は泣けないから、貴方には私のキモチが届かない。
貴方はホンネを言わないから、私には貴方のキモチが判らない。

何も判らないのに……どうして?


『周りのどんな犠牲を払おうとも、人を裏切ろうとも生き延びる。つらいことです』


問われたあの日、私は自分が子供だということに気づきもしないくらい子供だった。

それでも誓ったの。絶対に負けない、諦めない、後悔しない。
犠牲にするのが、大切なひとでも。
裏切るのが、自分の心でも。


『ビビ王女、“死なない覚悟”はおありですか?』


“恋をしない覚悟”も、しておけば良かった。
…それとも、“恋をする覚悟”を?


こんなに辛くては、忘れることなんて出来ないかもしれない。
もう二度と、恋は出来ないかもしれない。


……貴方以外には。



                                   − S-side −


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20000Hit Thanks!

今回は甘苦く…とか言いつつも、実は最高に惚気てるように読めないコトもないような。(汗)
こちらは姫サイドです。
相変わらずカンタンには堕ちません。頑固です。

既に恒例となりましたが、このテキストは“お持ち帰りフリ−”です。
お気に召されましたら、連れて帰ってやってくださいませ。
料理人サイドと姫サイドの対ですが、どちらか一方でも構いません。
事後にでも、BBSまたはメールでお知らせいただけましたなら、喜んでお礼に伺います。
なお、フリ−期間は2004.1.3〜未定です。
(期限を設ける場合は、改めてBBS&テキストにてお知らせします。)

ご来訪に心より感謝を。
まだ当面は姫贔屓サンビビ寄りメインのサイト運営になろうかと思います。
…需要は少ないながら、それ以上に供給が少ないので、せめて自分で書かねば…と。(涙)
また、お運びいただけましたなら嬉しいです。


2004.1.3 管理人・上緒 愛