「ねえ、なんでここにはお花がさいてないの?」
「なんでって、牧場に花なんかいらないじゃんか。」
オレンジの髪の少年と、ピンクの髪の少女が話しているのは、町のはずれのグリーン牧場。
「このあたりにお花がさいてたら、きっときれいだよ?」
「そうかなぁ?」
「ね、だったらポプリがお花をさかせてあげるよ!」
「じゃまにならないところにしろよ。」
「いらっしゃいませー。あ、ピート君。」
店の前で花に水をやっていたポプリは、友人に気付き笑顔になる。
「おはよう、ポプリちゃん。ね、花の種って売ってる?」
「あるよ、ムーンドロップ草。何か珍しいね。いっつも野菜と牧草しか買っていかないのに。」
「や、なんか牧場が殺風景な感じがしてさ。春だし、花でも植えてみようかなって思って。」
笑いながらピートは答える。
「殺風景………。」
ポプリは、幼い頃のある少年との会話を思い出していた。
「花………。」
牧場での仕事を終えたあと、グレイは山へ散歩に行き、珍しく独り言を発していた。
「花……か。」
「へえ、グレイって花好きなのか。」
いつの間にか彼の後ろにはピートがいた。
「うわっ……お、お前、いつから。」
「さっき。へえ、グレイに”驚き”なんて感情が備わってたんだ。」
「………何の用だ。」
へらへら笑うピートに対し、すぐにいつもの無愛想に戻るグレイ。
「いやあ、意外だなーっと思って。グレイって花好きだったんだ。」
「……別に好きじゃない。」
山を降りようとするグレイ。
「ツンデレ?」
「………殺すぞ。」
別の日の昼過ぎ、花屋の主人であるリリアが珍しく熱を出したため、娘のポプリが店番をしていた。
「いらっしゃ………あれ?」
ドアが開いたのでそっちを見たら、入ってきたのは意外な人物。
「グレイ。牧草買いに来たの?」
「…………。」
グレイはポプリの質問に答えず、すたすたと店の中に入る。
「……これ、いくらだ。」
グレイが手にしたのは、ムーンドロップ草の種。
「え、300Gだけど……買うの?」
「可笑しいか?」
「お、可笑しくなんかないよ!ありがとう。…牧場に植えるの?」
グレイは若干頬を赤らめ、お金を払うとさっさと出て行った。
――このあたりにお花がさいてたら、きっときれいだよ――
(小さい頃にしゃべったこと、覚えてた……のかな?)
ポプリは少し考えた後、グレイを追って店を出た。
「待って!ポプリも手伝うよ!お花のことに関しては、グレイより詳しいって自信あるんだから。」
「………勝手にしろ。」
”殺風景”なグリーン牧場に、可愛らしい花が咲き誇るようになるのは、もうちょっと後の話。
うわあ………GU・DA・GU・DA☆
ピートの存在意義が分かんねぇ……。構想段階ではもうちょっとまともだったのになぁこの話。