――変だよ。おかしい。意味分かんない。

何でこんなに心臓ドキドキ言ってんの?


アイス少年奮闘記


「あ、フェリさん。ルートさんが向こうで探してましたよ。」

「ヴェ!? 何でだろ、俺今日はまだ何もやってないよ〜。ありがとね、!」

(だから、何でこんなドキドキするの! 本当意味分かんない。)

さっきからの方を見てはらしくない自問自答をしているアイスランド。

長く生きている立派な国だが、その姿は思春期の少年そのもの。

(ただ、うちにオーロラ見に来れば? って言いたいだけなのに。)

頭の中でオーロラ、オーロラと繰り返し、よし! と気合いを入れ直す。

!」

「アイス君。どうしたのですか?」

の笑顔を見たアイスは更にドキッとする。

頭の中で再びオーロラ、オーロラ。

「あのさ。今晩暇? せっかく会議で北欧まで来てんだし、うちにオーロラ見に来れば?」

「わぁ、オーロラ……」

「おっ。発見だっぺー!」

アイスの誘いに対するの答えは、訛りの強い大きな声にかき消された。

「で、デンさん。こんにちは。」

ーこの後暇け? 暇ならデートすっぺ!」

ホスト国のデンマーク、の戸惑いもアイスの不穏なオーラも一切気にしない。

(あんこウザい……本気でウザい……!)

「おい、アイス。」

「ノル。」

「何だべ、あれ。」

通りがかったノルウェーがアイスに尋ねた。

「あー…なんかデンがにデートすっぺーとか言ってる。」

「ん? 聞ぎ捨でならねっぺな。」

「え?」

“聞き捨てならない”という言葉に味方の登場か、と一瞬期待したが。

とデートすんのは俺だっぺ。」

――ええええええ!!

「おいこらあんこ。」

「何だ、ノルも俺とデートしたいんけ? 残念ながら、が先約だっぺ!」

「あんこやがまし、そご退け。」

「ノ、ノルさん。」

、俺ん家来んけ? 美味いマリネ食わしてやんべ。」

(余計ややこしくなった……。)


「あ。アイス君、ちょうどよかった。ちゃん知りませんか?」

「フィン、スヴィー。」

ならすぐそこでやっかいさん二人に挟まれているが、先ほどのノルの例もあるため教えるべきか悩む。

に何の用事?」

ちゃんに用事がないなら、この後うちに呼ぼうかなって。花たまごが会いたがっているんです。」

「お前もか。」

「? 何がですか?」

アイスの呟きにティノは首を傾げるが、その間にベールヴァルドが紗那を見つけた。

「フィン、あっご。」

「あ、本当だ。おーい、ちゃん!」

「ティノ君、それにベールさん。」

ちゃん、この後何か用事ありますか? なかったら……」

(ますますもって意味分かんない………。)

アイスは今や完全に蚊帳の外となってしまった。

―――別に……。


僕が元々あいつを誘ったのだってあいつは色んな国に遊びに行くのが好きだから、だから僕ん家にも来れば? って思っただけで。

だったらが楽しめるなら、別に誰の家でも僕には関係……。

(……いや、違う。)

他のヤツの家よりも、僕ん家に来てほしい。僕ん家を楽しんでほしい。

僕ん家のいいところを知ってほしいし、僕自身を知ってほしい。

僕がを楽しませたいんだ。


自分の気持ちがはっきりと分かった今、兄弟たちにみすみすを渡すわけにはいかない。

。さっきの話、考えてくれた?」

「あ、アイス君。みなさん、ごめんなさい。私今日はアイス君のお家に行く約束したんです。」

えーっ、とデンやティノが明らかに残念そうな声をあげた。

ノルとベールヴァルドは顔には出さないものの、やはり残念そうだ。

「一番最初にアイス君に誘ってもらったので……他のところはまた次の機会、ということで。」

……。」

アイスはにやけそうなのを必死に我慢した。(そうしないと、何を言われるか分からない。)

「じゃあそういう事だから。行こ、。」

「あ、俺いー事思い付いたっぺー!」

デンがさっきと打って変わった笑顔で叫んだ。対照的にアイスの顔が青くなる。

、アイス! 俺らも一緒に行ぐっぺ。な、お前ら。」

「はあ!?」

「あんこ、お前たまにはいい事言うな。」

「ちょっと、ノル!」

「僕も賛成です!」

「……ん。行くか。」

「フィンにスヴィーまで……。」

もう、本当こいつら意味分かんない。何でこういう時だけ連帯感発揮するワケ?

「アイス君……あの、みんなで行くのも楽しいと思いますよ。」

意気消沈したアイスを気遣ってか、はそう声をかける。

「……そうだね……。」

他の四人に対抗する気力が残っていないのか、嫌だを連発してに悪印象を与えたくないのか。結局アイスは全員で来ることを認めた。


「おーっ。絶景だっぺなー。」

「何回見ても良いですね、アイス君家から見るオーロラ!」

「うわぁ、とっても綺麗です! そうだ、カメラカメラ!」

ははしゃぎながらカメラを構える。

「アイス君、声かけてくれて本当にありがとうございます! 感動です!」

「あ……うん。」

人数が4人ほど増えたのは誤算だったが、まあコレでも別にいいかなと思うアイスだった。


思春期可愛いよ思春期。(同士募集中)

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