昔々、その昔。
西や北の国の人たちが、まだあまり東の国に来ていない頃のお話です。
「違うのです違うのです、朝ちゃんのバカー!」
「は泣き虫なんだぜ!」
「うわあん、明のにーにぃ!」
「……また泣かされたあるか。」
「ちゃん、大丈夫? 朝ちゃんに何言われたの?」
ここアジアの大国、明では明さんと弟分の朝鮮と香港、妹分の台湾とが暮らしていました。
は台湾島の右下あたりにある、小さな小さな島国です。
「奉蘭の起源は俺って……。」
「ひどい、奉蘭はちゃんのところにしか咲いてない花なのにね。」
「の家は同じアジアでも気候が違って珍しい生き物や草花が多くあるから、朝鮮は羨ましがってるあるよ。あいつの期限説は話半分に聞けある。」
「はい……。」
「ほら、菓子食って落ち着けある。日本がこの間持ってきてくれたやつがあるある。」
「あー、ちゃんいいなー。明のにぃに、湾もー。」
「心配しなくてもいっぱいあるある。」
優しい明のにぃに、もう大きいから離れて暮らしているけど何かと気にかけてくれる日本のにぃに、
ちょっと意地悪だけど面白い朝鮮、女の子同士一番の仲良しの台湾、大人っぽい香港。
難しい“セカイ”のことは分からなくても、温かい家族と過ごし、国が平和ならそれだけで幸せだったのです。
しかしいつからか、西の方から強い国がアジアへやってくるようになりました。
最初は南から、そして明のにぃに改め清のにぃにも狙われるようになりました。
「……日本のにぃに、朝ちゃん……清のにぃに、どうなっちゃったのですか?」
清のにぃにや台湾は阿片に侵され、香港は遠く英国へ行くことになりました。
「香ちゃん、行かないで! 湾ちゃん清のにぃに、しっかりしてです!」
長い間鎖国中の日本のにぃにや小さい、朝鮮には何も出来ません。
ついに西の人たちはにも目を付けました。
「へー、こんな島あってんや。しめた、まだ誰にも見つかってないみたいやな。」
「……おにーさん、誰ですか? 香ちゃんを連れてった人ですか?」
「香ちゃん? ちゃうちゃう、おにーさんはスペインゆーねん。今日からお前の親分や。」
見たことのない国、聞き慣れない言葉。は不信感と不安感でいっぱいです。
「とりあえずお前んところの国民何人か俺ん家の国民の使用人にもらうな。それとあの辺の土地、トマト畑にしよか。」
「え……何それ。そんなの嫌です、なんでスペインさんがそんな勝手に……。」
は最後まで言うことが出来ませんでした。
スペインが怖い顔で物騒な物を持っていることに気付いたからです。
「ごめんけどなぁ。自分拒否権ないで?」
かつて太陽の沈まない国と呼ばれていたスペインでしたが、この頃にはすでに植民地の多くを手放していました。
植民地の数は国力の証、そのためスペインは焦っていたのです。
「行くで、琳寧。」
「ま、待って! 助けて清のにぃに、日本のにぃに!」
優しく頼れるアジアの兄弟は自分の国のことで精一杯でした。
『は泣き虫あるな。』
『ほら、お土産ですよ。。』
『! 今日は俺んちに遊びにくるんだぜー!』
『ちゃん、頭かわいくしてあげるー!』
『、この本読んで。』
――かつて仲良かった兄弟たちが、離れていく――
「いやあああっ!!」
スペインの家で暮らすようになってから時々耳にする“セカイ”の話は、あまりいいものではありませんでした。
大好きなアジアのみんなにも会えず、は毎日泣き暮らしていました。
(みんな元気でしょうか……中国のにぃにや湾ちゃんは阿片治ったのでしょうか………私のこと、みんな覚えてくれているでしょうか。)
有色人種は白色人種に差別されていた世の中ですので、みんなが自分と同じ目に合っていないか、それも不安でした。
転機が訪れたのはそれからまた数十年後、香港と久しぶりに会った時です。
その頃のは文化や言語にスペインの影響が色濃くなり、涙も涸れ果てていました。
「香……ちゃん?」
「よう、。元気そう……じゃねーな。」
「スペイン親分と住むんしんどいんです……みんなの様子も分かりませんし。そいえば、なんやアジアの方戦争しとるってホンマですか? 香ちゃん、なんか知っとってですか?」
「そう、俺その話しに来たんだけど。今度日本兄の家行くんだ。英国、俺を置いとく余裕がなくなったんだと。」
「……え。」
「台湾からちらっと聞いたけど、日本兄が中国兄とか美国とかと戦ってるらしい。」
「日本のにぃにが……? そんな、なんで中国のにぃにと…それに美国なんて、無茶やないですか。勝てるわけがない。」
「俺も詳しいことは知んない。でも前一回日本兄はロシアとも戦って、負けなかった。、世界が変わっている。もしかして日本兄が勝ったら、もその流れに乗じて独立出来るかも。」
「独立……。」
そのニュースはまさに青天の霹靂でした。
長い同居生活の中で、自分たち有色人種が白色人種に勝つなど不可能だと思うようになっていました。
しかし日本のにぃにがその“常識”を覆そうとしているのです。
スペインは中立を保ったその戦いは知らない間に日本のにぃにが負けてしまい、終わりました。
ですが日本のにぃにの頑張りは他の――西洋の支配を受けているアジア諸国に勇気と希望を与えました。
そして、にも。
「親分。」
「お? どしたん、。」
「うち、独立しますわ。アジアに帰るんです。」
「……本気か? 知らんで?」
スペインの本気の目にも、もうは怯みません。
(白人には敵わんと、誰が決めましてん。私かって国です、日本のにぃにみたいに頑張ります!)
それが1950年の独立戦争です。この戦いで勝利したは無事に独立を果たしました。
スペインとの同居時代もなんとか残されていた豊かで珍しい自然や穏やかなな国民性は観光客に好評で、
は“小さいけど素晴らしい国”と有名になりました。
「みんなー、こっちこっち!」
「ちゃん! 誘ってくれてありがとう。」
今日は久しぶりに台湾、韓国、香港の三人が遊びに来ました。
「、マジ変わりっぷりパネェ。」
「香ちゃんにだけは言われたないですわ、それ。」
「本当すごいわよね。元々の良さとスペイン時代の良さがいい具合に混ざり合ってる。」
「! 聞いて驚くんだぜ、お前の起源は……」
「韓ちゃん、それ以上ワケの分からんこと言うたら野生の狼がようけおる山ぶちこむでー。」
かつて気の弱かったはすっかり強くなり、アジアの頼れる大国のうちの1つになりました。
「ほな行きましょかー。まずは1の遊園地、塚フェアリーランドー!」
どんな国にも発展する力がある。どんな国にもすばらしい何かがある。
はきょうも元気です。
リクエストのヒロイン幼少期亜細亜夢でした……ごめんなさい色々とごめんなさい。
最近大東亜戦争や日本のことをネットでちまちま勉強していて、気がついたらこんなものを書いていました。