この日は東アジアのメンバーが会議のため集まっていた。

ヨンスの上司が菊の上司に無理難題を突きつけ菊の上司がそれをのみそうになるという老体に悪い場面もあったが、何とか無事に終了した。

……そして、真の争いは会議終了後のロビーで起こった。


明日のご予定は?

「じゃーんっ!」

向かいに座る親友のに台湾が見せたのは、ショッピングモールのパンフレット。

「わあ、ついにオープンしたのですね!」

「そうよ〜、もー凄いんだから!」

台湾に大きなショッピングモールが出来るということで、も湾も半年前から一緒に行こうと楽しみにしていた。

「今日私の家に泊めたげるから、明日の朝から行きましょ。」

「はい、楽しみです!」

「二人だけで出かけるの久しぶりよね〜。」

。」

楽しげに話す二人に、菊が声をかけた。

「あら、日本のにーに。お疲れ様〜。」

「ちょうどよかったのです。菊にぃに、私明日……」

「聞こえていました。駄目です。」

「ええーっ!」

二人揃って不満を声と表情に表した。湾はすぐさま反論する。

「何でよ、明日は二人共大きな仕事無いんでしょ。」

「いいえ、明日には私の原稿を手伝ってもらいます! VOC@LOIDのオンリーが迫っていますから!」

「異議あり、異議あり!! その理由には納得出来ない!」

「何故ですか! 店なんていつでも行けるでしょう!」

「ずっと前から楽しみにしてたし、第一私の方が先にと約束してたのよ! そっちこそいなくても何とかなるでしょ!」

「なっ……新刊落とせと言うんですか!?」

菊と湾、普段はアジアの中で一番気が合う二人だが今日はお互いに一歩も譲らない。

(菊にぃにと湾ちゃんの喧嘩、随分久しぶりです……ではなく、止めなければ!)

「二人共落ち着いてください……」

「あいやー、珍しいこともあるもんあるねー。何事あるか?」

「耀にぃに!」

たまたま通りがかった耀、菊と湾の言い争いを見てに事情を尋ねた。

「実はこれこれこういう訳なのです……。」

「なんだ、そんな事あるか。我に任せるよろし!」

耀は自信満々で「こら、お前ら!」と二人の間に入った。

(さすが耀にぃに、頼りになります……。)

と、が事態の収束を信じほっとした次の瞬間。

は明日我と漢詩の勉強会をするあるよ!」

「ふえっ!?」

耀の考えた解決策は意外なもので、当然は驚く。

菊と湾も一瞬ぽかんとしたが。

「何言ってんのよ中国のにーに! は私とショッピング!」

「いいえ、原稿です!」

が勉強会したいと言ったあるよ!」

「嘘つけー!!」

「や、耀にぃに……?」

瞬く間に二人の喧嘩は三人に増えた。

当のをよそに言い争うばかりで、もはや彼女一人の力では止められない。

がはっきり自分の意思を示せばよいが、耀はともかく先に約束した湾と原稿落とす危険性のある菊のどちらを優先させればよいのかが彼女には難しい。


「うるさいんだぜー。うちの上司が文句言ってるんだぜ。」

一方そのころ、廊下まで響く三人の喧嘩に上司共々イライラが募ったヨンスが喧嘩の場所まで文句を言いに来た。

(しかし普段一番うるさいお前が言うな。)

「あ、。」

「ヨンくん。」

ぶすっとしていたヨンスだが、どういう訳かを見つけた途端にこっとした。

「いいところで会ったんだぜ! 思い出したんだぜ。」

「ヨンくん、あの喧嘩止められそうですか?」

「ん? そんなの別にいいんだぜ! 俺への用事思い出したんだぜ。」

「私への…ですか?」

「俺んちの新作ネトゲがプレイ出来るようになったから、明日にでもプレイしに来るんだぜ! 日本にはまだまだ上陸しないんだぜ? ちょるちょる。」

明日、という単語を喧嘩中の三人が聞き逃すはずはなく。

「ダメよ韓ちゃん、は明日私とショッピングなの!」

「違いますよ原稿です!」

「勉強会だって言ってるある!」

「な、何事なんだぜ!? でもとりあえず日本の意見には反対しとくんだぜ!」

ミイラ取りがミイラとはまさにこのこと。

ここへ来たそもそもの目的もすっかり忘れ、喧嘩は四人に増えた。


、何でみんなしてバトッてんの? うっさすぎて寝れねー、マジで。」

「香くん。」

小休憩を邪魔されたらしい香は珍しく若干怒った様子で来た。

「実はかくかくしかじか、なのです。」

「ふーん?」

「どうするのが一番いいのか、もう分からなくて……」

「あ? んなの簡単じゃん。」

「え?」

がこっからいなくなれば万事オッケー、ノープロブレム的な。」

香は喧嘩中の四人に聞こえない用、小声で話す。

「いなくなれば……って?」

「だからー。」

香はの腕をつかみ、こっそり部屋から出た。四人は気付かない。

「ほ、香くん?」

「明日まで俺と遊んでれば全て解決、俺マジ天才。」

「え、ええー……。」

これでいいのかという疑問は残ったが、他に解決策が分からなかったは大人しく香に腕を引かれていった。


「あーっ、がいないー!」

(俺マジラッキー。)

(湾ちゃんや菊にぃにには後で謝れば良いですかね…お土産でも買って帰りましょうか。)


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