「にーさま!」

「え、!?」

それは、ある日の某国国際会議場での一コマ。

影武者ってGO!


、お前なんでこんな所にいるんだぜ?」

「にーさま、家に書類いくつか忘れてったんですよ。湾姉に頼んで連れてきてもらいました。」

はい、とはヨンスに書類を渡した。

「あー……全然気付いてなかったんだぜ。助かったんだぜ。」

「お礼はここのレストランでのランチで手を打ちます!」

「ちょ、何勝手に決めてんだぜ? ここは高いんだぜ。」

「えー、だって湾姉が“にーさまは普段から見栄張ったりするから少々高くてもおごってくれる”って。」

「妹のお願い聞いてあげないなんて、ヨンちゃんけちんぼよー。国際社会で言い触らすよー。」

「湾!!」
「台湾!!」

何勝手なこと吐かしてるんだぜ、と続けようとした言葉に、別の声が重なった。

「あらー、老師。」

「お前ここで何やってるあるか! 我は認められねーあるよ!」

「耀さん先走りすぎです、落ち着いてください……。」

年長国家二人の登場に、ますます場は賑やかになった。

「耀兄に菊兄、こんにちは。」

「おやこんにちは、さん。」

! お前何菊なんかと仲良くしてるんだぜ!」

「やだ、にーさまったら。私達が豊かになれたのもほぼ菊兄のおかげなのに、今だにそんなコト言ってんですかー。」

「それは言わない約束なんだぜ! 菊に面倒見てもらったのは一生の恥なんだぜー!!」

「騒がしいぞ、一体誰だ。」

「ヴェ、菊や耀たちだ。楽しそう〜。」

廊下での騒ぎを聞き付け、他の国々も集まってきた。

「あれっ。なあなあ本田、その女の子誰や? 一人は昔王の代わりに来とった子ぉやんな?」

「はい、私は台湾ですっ。たまに間違えられますが老師の一部ではないです!」

「あ……わ、私は済州特別自治道です。ヨンスにーさまの妹でといいます。」

台湾の自己紹介に耀は異議を唱えようとしたが、直後のの自己紹介でタイミングを逃した。

「へ〜、ヨンスさんに妹がいたなんて知らなかったよ。」

「お兄さんと全然似てなくて可愛くて礼儀正しい人ですね!」

「ラトビアアアアア!!」

「……ヨンスとは正確には義兄妹あるからな。500年くらい前にヨンスが拾って妹にしたあるよ。」

「へえ、そうなんだ。」

新しい仲間(といっても国ではないが)を囲み、一同すっかり和気あいあい。

と、そこに何やら焦っているセーシェルが駆けてきた。

「ぎゃああああん! フランシスさん助けてー!」

セーシェルはフランシスの姿を見つけ、叫びながら背中に抱き着く。

「セー!? どうしたのいきなり!」

「ちょっとした手違いで眉毛ブチ切らせちゃって今追われてるんですー!」

「なんだって、眉毛が!?」

(眉毛……?)

場の空気が一気に変わったが、眉毛が何か唯一分からないはただただぽかんと騒ぎを見守る。

「うわあああ! 私また眉毛ん家に連れてかれる、やっと独立したのにー!」

「セー落ち着いて、みんなで守ってやるから!」

「……にーさま、眉毛って?」

がこそっと尋ねるがヨンスは何故かそれには答えず、とセーシェルを見比べ笑顔になった。

「いいことを思い付いたんだぜ!! 影武者を用意して、アーサーの目をくらますんだぜ!」

「影武者ぁ!?」

やセーシェルを含む全員が怪訝な顔をし、ヨンスの方を見る。

(俺、注目されてるんだぜ……!)

「誰か一人をセーシェルそっくりに仕立てあげて逃げ回らせ、本物は次の会議が始まるまで隠れておく。万が一捕まっても、他人なら侵略されないんだぜ。」

「なるほどね。使える手かも。」

「お前にしちゃいい思い付きあるな。」

「兄貴一言余計ですよ。」

「でも、その影武者はだれが……」

菊が言い終わる前に、ヨンスは素早くの右手を掴んで上にあげた。

「わ……私ですか!?」

「あー、ちゃん? いいかもね、背丈や体型が似てるし、黒髪ロングヘアってところも同じだ。肌の色が違うけど。」

「韓国さん…それとえーと……。」

「あ、済州です。」

「済州さん……ホントにいいんすか!?」

「気にすることないんだぜ、困った時はお互い様なんだぜ。」

――こうして恩をじゃんじゃん売って、世界に親韓国をじゃんじゃん増やすんだぜ。

「お二人とも、ありがとうございます……!」

下心に気付かないセーシェルはヨンスの言葉にただ感動する。

「さっ、そうと決まればさっさと着替えるんだぜ。」


近くの小部屋でセーシェルとはお互いの服を交換し、髪型を変えた。

「おお、いい感じ!」

「後ろから見たら全然分からんな〜。特にセーシェルがちゃんの服着とったら肌も見えへんし、眉毛の一人や二人楽に騙せるんちゃう?」

見事なまでの入れ替わりっぷりに各国が感心していると。

「セーシェルウウウウ!! どこ行きやがった宗主国不幸者がああああ!!」

「ヒイッ!」

「うわ……お兄さんやトーニョでも最近はあそこまで怒らせてないよ?」

「よし、影武者GO! セーシェルはのフリして俺の後ろに隠れとくんだぜ!」

「はいっ!」

が走り去った直後、目を血走らせ息を切らしたアーサーが駆け込んできた。

「お前ら、セーシェル見なかったか!?」

「見てませーん。」

不自然に揃った返事に、アーサーは苛立つ。

「何か変だな。匿ってねえだろうな?」

「まあまあ落ち着いてよ。紳士が台なしだろ?」

アーサーは一同を順番に睨むように見ていくが、ヨンスの後ろのセーシェルには気付かない。

「あー、そういやさっきセーシェルみたいな二つくくりの女の子があっちに走っ…」

「早く言えや糞髭!!!」

バタバタとフランシスの指した方向へ叫びながら走っていくアーサー。

さん、大丈夫ですかね……。」

「一応様子を見に行くんだぜ。」


一方、セーシェルのフリをして逃亡中の

「ふー、疲れた。アーサーさん来てないし、ちょっと休憩しよ。」

念のため隠れられそうな柱を見つけ、腰掛けたその時。

「見つけたぞ〜〜。」

「ひゃああああ!!」

背後からの声には叫び、慌てて逃げ出す……が。

「甘えんだよ!」

すぐアーサーに首ねっこを掴まれた。セーシェルと思っている相手が別人とは気付いていない。

「てめぇよくも俺のスペシャルスコーンをゴミ箱に捨てやがったな!! 仕返しにもっぺん侵略して征服して使用人にして今度は○○○とか○○とか○○○○もするか……ら………?」

言ってはいけない単語を二つ三つ並べたころ、ようやく相手がセーシェルでないことに気付いた。

「お前……、か? 済州特別自治道の……。」

………しまったと思ったが、当然時すでに遅し。

セーシェルのものとは明かに違う黒い瞳が驚きと恐怖で大きく開かれ、涙がこぼれる。

「あ、いや! 、これはだな…」

「お前俺のになんてこと言うんだぜー!!」

を心配して追いかけてきたヨンスが二人の状況を見つけ、慌てて走ってくる。

「げっ、任!? 菊に耀まで!」

「にーさまあああ!!」

は急いでヨンスのところまで逃げた。ヨンス、菊、耀の三人が一斉にアーサーを睨み付ける。

「お前最低なんだぜ!」

「あへんはやっぱりあへんあへんある!!」

「アーサーさん……そんな方だったとは……。」

「いや、違っ……髪型と服装でセーシェルだと思ったから……」

「私にそんなこと言うつもりだったんすかー!」

「セーシェル!? お前どうしてそんな格好……」

「アーサー……お前さっきの発言はお兄さんでもドン引き。」

「独立して正解だったんだぞ……。」

「お……お前ら……?」

いつの間にか世界各国がその場に集結し、全員がアーサーを睨むか蔑んだ眼差しで見るか顔を青くしてドン引くかという、つまりアーサーがこの上なく不憫な状態にさらされている。

「ま……待て! これには訳が!」

「言い訳なんて誰も聞いてくれないと思うよ?」

「アーサーさん、最っ低!!」

「君のスコーンなんて、セーシェルじゃなくてもゴミ扱いするんだぞ!!」

ちゃん、大丈夫? ひどい事されんかったか?」

さん、危険な目にあわせてしまって本当ごめんなさい〜〜!!」

「さあ、もう今日は家に帰るんだぜ。俺はまだ会議があるから一緒に帰れないけど、湾に送ってもらえなんだぜ。」

「そうよー、。一緒かえろー。せっかくだから私の家寄っておいしいもの食べて嫌なことは忘れるといいのよー。」

「お……おい、ちょっと」

「何か!?」

台湾の凄まじい怒りの眼差しに、アーサーは「何でもありません…」としか言えなかった。


その日からしばらくの間、アーサーは会議でもプライベートでも他国と会うたびに侮蔑の眼差しを向けられていたという……。



たんがヒロインやってる話は基本人名表記です。言うの遅いって。
ギャグ書くのはたのしーけどむずかしーです。リクありがとうございました!

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