[“アイス少年奮闘記”を読み、支持して下さった方々にお礼を述べてください。]
「……何これ、意味分かんない。」
どこからか届いた手紙に書かれた指令。
アイスはため息とともにそう言ったが、次にそれを読んだは意味を理解したらしい。
「アイス君、前北欧の皆さんと私でオーロラを見に行ったじゃないですか。そのエピソードを読まれた方々が気に入って下さったそうなのです。」
「……何、公開されてたって事? 人のプライベート……。」
ますます意味分かんない、とアイスは拗ねて口を尖らせる。
「ええと、人気投票企画に参加して下さった方々ありがとうございます。“アイス少年奮闘記”が一番人気という結果になりましたので、御望みのお礼&おまけをうpさせて頂きます。せっかくなので人気投票に参加された方以外もお楽しみ下さい。」
指令に続いて表記されていた文章を、は読み上げる。
「馬鹿馬鹿しい…僕帰るからね。」
「待ってください、この手紙まだもう一枚あるのです。えーと……」
[人気NO.1のお祝いとして映画のペアチケットを差し上げます。アイス君とで行ってきなさい。]
「……二人で?」
後半の記述に興味をひかれたらしく、去ろうとしていたはずのアイスが戻ってきた。
「そうみたいですね。アイス君、いつが都合いいですか?」
「今から行こう。」
チケットに書かれた劇場案内や上映時間を確認し、アイスは即決した。
「今からですか?」
「そうだよ、嫌なの?」
「いえいえそんな。ただ、急だなぁって思って。」
「いいから行こう、なるべく早く。」
――誰かに嗅ぎ付けられたら、また邪魔されるし。
前回のほろ苦い経験を生かし、アイスはささっと支度をしてと共に映画館へ向かった。
「そういえば、何の映画なのですか?」
「えーと………忍、たま?」
チケットに描かれたアニメの絵柄と文字を見て、アイスは首を傾げるが。
「本当ですか!? 私、それすごく見たかったのです! 菊にぃにってば酷いんですよ、私が湾ちゃん家に泊まりで遊びに行っていた時に待ちきれないからって一人で見に行っちゃって!」
「…へ、へえ。」
はチケットを見てぱあっと顔を輝かせ、どれだけその映画を楽しみにしていたかを語り出した。
「菊にぃにもインターネットでのお友達もすごく良かったって。アイス君にも気に入っていただけたら嬉しいです。」
「……そっか。」
自分が楽しむだけでなく、きちんと一緒に行くアイスのこともは気遣う。
――そういうトコ尊敬するし………好きかな。
ふと芽生えた自分の気持ちに気付き、アイスはこっそりと微笑んだ。
「アイス君、早く! 始まっちゃいますよ!」
「まだ平気でしょ。コンビニで飲み物でも買ってこうよ。」
「映画は時間ぴったりに始まるんですよ、それにあそこの映画館持ち込み禁止です!」
「分かった分かった。」
慌ただしくても、喉が渇いていても、元のアニメを知らなくても。
――楽しそうなと一緒なら、それだけで僕も楽しいんだ。
(……あ、そうだ。)
アイスはに気づかれないよう、こっそり後ろを振り向いた。
「その……人気投票ってやつに参加してくれた人、さ。あんたたちのおかげでデート出来るみたい。………だから、ありがとう。映画楽しもう。」
アイス君にはもっときちんとお礼を言わせる気でいたのですが(それこそ、読んでくれたお嬢様方を悶絶させるのを目標にw)、
なんか全然素直になってくれませんでした。困った子だ。