「ちっちぇー頃のも、そりゃあもう可愛かったあるよ!」

それはある夜、上海の小さいが小綺麗な居酒屋の一角。

一癖どころか軽く百癖はある五人組が、共通の知り合いであるの話題で盛り上がっていた。


ちみっこ妖怪と美人過ぎる変態


「今も昔もあんな可愛い妖怪は世界中探してもぐらいあるよ!“耀にぃにとお呼びしてもいいですか?”って、こんなこと言われたらぎゅーってして頭なでなでするしかないあるよー!!」

この中で唯一を小さい頃から知っている耀は、頭を撫でるゼスチャーを交えながら“当時の自慢”を繰り広げる。

――当然、その話を聞いて他のメンバーが羨ましがらないはずはなく。

「ずるいぞ中国! なんでは俺の妹じゃないんだい!?」

「って、お前より年下じゃねーあるか。」

アルフレッドはハンバーガーを頬張りながらどうにもならない文句を言う。

「そこまで自慢して、どうして写真もビデオもないのかな? 中国君、僕を困らせて楽しい?」

「どっちも昔そんなモン無かったある! 分かってて黒いオーラ出すの止めろあるよ!」

よっぽど羨ましかったのだろう、イヴァンからは今にも冬将軍を呼び出しそうなオーラが出ている。

「ここは俺の出番だな!!」

高笑いと共に、アーサーはどこからか先端に星飾りのついたステッキを取り出した――顔が赤い、既に相当酔っている。

「せめてパブッてねー時にしろある!!」

ツッコミ疲れか、耀のアーサーへの言葉はどこかズレている。

――小さい頃のか……。

フランシスは四人から少し離れたところでワインを呑みながら、静かに考えを巡らせていた。

ああ、きっと可愛すぎて吐きそうになるくらい可愛いんだろうなぁ。

今でもあんなに可愛いんだから、あれが小さく丸くなって無垢さに磨きがかかっている状態だろ?

イタリアが昔着ていた服とか似合うだろうなぁ。

そいで“フランシスにぃに”とか呼ばせて、膝に乗せて頭撫でて可愛がって一緒のベッドで寝て……

……と、無害な想像は瞬く間に犯罪臭さを伴う妄想へと進化してゆく。

そして、ちびを見たいという欲求が最高潮へ達した時、フランシスの瞳が怪しく光った。

「おいイギリス! 俺が許す、の所行って存分にほあたってこい!」

「おおフランス、俺達の思いは一つだな! よし任せろ!」

アーサーは酒をもう一杯煽ると、勢いよく白い羽をばたつかせて東の日本へ飛んでいった。

「あっおいコラあへん……!」

耀が止めようとした時には既に遥か彼方。

「法国、なんつーことしてくれたあるか!」

「なんだよ中国、“あの頃の”に会いたくないのか?」

耳元でぼそっと呟かれたそのキーワードは、耀にとっても甘美な誘惑。

頭の中に、笑顔のちびが浮かぶ。今のも可愛いが、それとこれとはまた別だ。

「会いたいある! 皆の衆、れっつらごーあるよー!!」

耀の掛け声を合図に、残された四人もアーサーを追って日本へと向かった。

「我の家の特殊部隊が“日本は今日独国の家に泊まっている”と教えてくれたから、邪魔者はいねーある!」

「君……その特殊部隊、俺の家には来させないでほしいんだぞ。」


所変わって日本・東京。辺りが暗くなってきた頃、が網戸を閉めようとしたら玄関のチャイムが鳴った。

「はーい。」

玄関を開けると、天使の格好をしたアーサーが何故か笑顔でそこに立っていた。

「よう、。」

「あらアーさん、こんばんは。」

「……何あるか、あの胡散臭い笑顔。」

「動じない、凄いな……。」

他の四人は何となく物陰に隠れ、こっそりと見守る。アーサーは“胡散臭い笑顔”のまま、例のステッキを出してに向けた。

、ちょっと面白いものを見つけたんだ。試してみないか?」

「わあ、何だか魔法少女みたいですねぇ。」

のほほんとそう言い、はアーサーの持つステッキに顔を近付けた。

――今だ!

普段決して合うことのない5人の思考がぴったり一致した瞬間、アーサーが呪文を唱える声が庭中に響いた。


「…………?」

きょとんとした表情の幼女が現れ、

「うおおおおおっっっ!!」

……男共のテンションは跳ね上がった。

「イギリス、生まれて初めて君を尊敬したぞ!」

「可愛いねぇ〜。連れて帰って大事に飾っておきたいなぁ。」

「そんな勿体ないことはさせないさ。まずはお兄さんお勧めの子供ブティックに……。」

「あ、あの……?」

は蚊の鳴くような声でそう呟き、場の雰囲気が怖いのか泣きそうになった。

「おめーら、我のが泣きそうになってるあるよ、自重しろある!」

耀は自分の出番だとばかりにずいっとの近くへ行き、視線を彼女に合わせる。

、怖くないあるよ〜。我のこと分かるあるか?」

金髪でも碧眼でも巨大でもない耀の登場に出かかった涙は一応引っ込んだが、耀の事は分からないのか不安げに首を傾げる。

「………?」

耀は自分の期待していた反応がない事を不満に思い、をまじまじと見て、あることに気がついた。

「……ああ! このはちっこすぎるあるよ、どうりで我のことすら分かんねーはずある!」

「ええっ!!」

衝撃の事実に、場は彼らのアーサーを責める声で満たされた。

はますます訳が分からず、ついに「ととさま、かかさま〜。」と泣き出してしまった。

「あっ……、怖くない。怖くないぞ〜。」

「どうして泣くんだい? ハングリー? バーガー食べるかい?」

「…アメリカ君、それ君の食べかけだよね。そんな汚らしいものをちゃんに食べさせる気?」

「お前ら、の前で喧嘩だけはすんなあるよ、頼むから!」

「………はぁ、全く……。おいおい、お前ら落ち着けって。」

大騒ぎの四人をたしなめたのはフランシス。

がますます怯えてるだろう? 心配しなくても、俺にアイデアがある。イギリス!」

「な、何だよ。」

「俺にもほあたしろ。」

「はあ?」

アーサーも他三人もフランシスの真意が全く分からず、一斉に怪訝な顔をする。

「あのな。小さい子供はむさ苦しい男よりも若くて綺麗な女の方が好きだし、よく懐くんだ。」

「それとてめーへのほあたと、どう関係あんだよ。髭抜くぞ。」

「最後まで聞けって…俺の昔の姿、覚えてるだろう?」

アーサーはフランシスの言わんとすることを理解し、ニヤリと笑った。

「…若かりしお前が女の子のふりをして、を安心させる作戦か。」

「そういうこと〜。」

「任せろ! ほあたーっ!」

ろくでもない時ほど意気投合する二人である。

杖から出た煙に包まれ、フランシスは自主的に腕を上げてくるくると回る。

煙が切れると同時にどこからか出してきたフリルワンピへと早着替えして、ポーズと笑顔を作った。

「なびく金髪・輝く瞳! 見た目は完璧女の子! 美少女国家・フランシス!」

「……何の真似あるか。」

「美少女と変身って言やぁ、変身シーンの可憐な動きと決めゼリフと決めポーズはマストだろ。」

「知らんある。」

幸い、は物陰に隠れているため何も見ていない。

フランシスは“優しくて可愛いお姉さんオーラ”を身にまとい、そっと近付いた。

ちゃん、こんにちは。」

「……こん、にちは…。」

先程までの出来事でまだ少し怯えていたが、フランシスの笑顔には怖がっていない。

「私はフラン子っていうの。ちゃんのお母さんがお出かけしている間一緒に遊んであげてって頼まれたのよ。」

「そうなのですか?」

「ええ。それでね、よかったら私の家に来ない? ちゃんのために、美味しくて珍しいお菓子をたくさん用意しているのよ。」

「いきたいです!」

“美味しくて珍しいお菓子”と聞いて、の目がキラキラと輝いた。

――信じるのかよ!!

人さらいの常套手段にまんまと騙されたを思わず全員が心配する。

「決まりね。じゃあ早速行きましょう。」

フランシスがぱちんと指を鳴らすと、瞬く間に自家用ジェットが現れた。

「うひゃあ!」

「さあ、乗って。二人っきりで楽しく過ごすわよ。」

「はいっ。」

お菓子のためなら未知の乗り物にも動じない。小さいころから歪みない甘党である。

「さすがある………ってちょい待てある!」

――今“二人っきり”とか言わなかったか。四人の頭を共通の不安がよぎる。

「おい、フランス!?」

「俺達も一緒に行くんだろ? なあ! なんでジェット機の扉が閉まろうとしてんだい!?」

フランシスの考えが何となく分かってしまった彼らは、なんとかやめさせようと叫ぶが。

フランシスは“作戦成功”と言わんばかりの極上の笑顔で彼らに手を振り、と共にジェット機へと乗り込んだ。

「………ふざけんなあ!! お前ら、絶対を取り戻すぞ!!」

「おおっ!!」

……だが、二人の行き先は家は家でもフランス本国ではなくセーシェルにある彼の別荘。

ちみっこ妖怪と美人過ぎる変態は、甘いお菓子をたっぷり食べる至福のときを過ごしたとか。



リク内容「フランス兄さんのロリっぷり」ってこういうことですかね? 犯罪は犯していません、念のため。

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