“昔々、あるところに”で始まる童話には、いらぬツッコミは無用との暗黙の了解がございます。

本日は私、本田菊監修の「赤ずきんちゃん〜少女と何故か野郎共〜」をお楽しみください。


赤ずきんちゃん〜少女と何故か野郎共〜


昔々、あるところに優しくて可愛い一人の少女がおりました。

少女は少々ウザいがとても妹思いのデンマーク兄さんと二人で仲良く暮らしていました。

ー! こっち来るっぺ!」

「はぁい。なんですか? デンさ……デンにぃに。」

「森に暮らすフィン婆が風邪で一週間寝込んでいるらしいっぺ。サルミアッキ持って見舞い行って来てくれ。」

「フィンばぁばが!? それは大変なのです、すぐに行ってきます!」

おばあちゃん子のは、すぐさま台所のサルミアッキをかごいっぱい入れました。

「ああ、狼には気を付けれ。おめぇはめんこいから狙われっぺ!」

「はい。」

「ええか、寄り道すんじゃねぇぞ。おめぇにもしもの事があったら兄ちゃん、犯罪犯しちまうっぺ。」

家の奥には、デン兄さんが昔愛用していた武器が今も保存されていました。

「そ、そんな! 犯罪ダメ、絶対です!」

「おう。だからな、無事に帰って来い。おめの好きな晩メシを作って待っとるっぺ。」

「はい…私、絶対デンにぃにの元へ帰って来ます!」

ー!」

過保護なデン兄さんと乗せられたによる小芝居の後、ようやくはお婆さんの家に向かって出発しました。


「聞いだか、スー。」

林の中で狼その1、ノルウェーが隣にいる狼その2、スウェーデンに尋ねました。

「ん。」

が一人で出がけるなんざ、滅多にねえチャンスだ。」

このノルウェーさん、数ヶ月前たまたま見かけたに一目惚れをしていました。

ですがデンマーク兄さんが妹に男を近付けるはずもなく、今まで悔しい思いをしてきたのです。

そしてデン兄さんが気をつけろと忠告した狼はまさにこのノルウェーを指していました。

彼はデン兄さんの心配通り、無害な友人スウェーデンに協力を仰いでを自分のものにしようと企んでいるのです。

「スー。」

「ん。」

スウェーデンは抱いていた子犬の花たまごを地面に降ろし、の方を指差しました。

賢い花たまごはスウェーデンの意図を理解し、可愛くの方へ駆け出しました。


「ワンッ。」

「わぁ、可愛いワンちゃんですね。こんにちは〜。」

花たまごはの足元で愛らしく尻尾をふり、抱き上げようと伸ばした腕を避けるとそのまま花畑の方向へ走り出しました。

「あ、待ってください〜。」

も花たまごのあまりの可愛さについ追いかけます。

「よし、上手くいっだな。」

「ん。」

「花たまごが時間稼いどる間に、スーはフィン婆を家から連れ出せ。」

スウェーデンはこっくりと頷き、お婆さんの家へ向かいました。


花たまごは可愛く走りつづけ、を花畑まで連れて来ました

「わあ、綺麗なお花畑です……こんな場所があるなんて知りませんでした。」

花たまごは一仕事終え、満足げに尻尾を振っています。

「そうだ。フィンばぁばのお土産にお花を摘んでいきましょう。」

ようやくお使いのことを思い出したは、色とりどりの花をぷちぷち摘みはじめました。


「はぁい、どなたですか?」

ちょうどその頃。家の扉をノックする音に、フィンランドはのそのそと起き上がりました。

扉に手をかけた瞬間それが勢いよく開き、弾みで前につんのめってしまいます。

「わわっ。」

フィンを助けたのは、一本のたくましく茶色い腕。顔を上げると目つきの悪い狼――スウェーデンがいました。

「おひゃあああ!」

「……こっちゃ来。」

スーはあっさりとフィンを抱え上げ、そのまま森の奥へ行ってしまいました。

「え、何これ何これ! 僕の出番はこれだけですか〜! てゆーか誰かー!!」

フィンの叫びが聞こえなくなった頃、ノルウェーがにょきっと姿を見せました。

フィンの家に入り、たんすから適当に寝巻と帽子を取り出します。着てみると意外と似合っていました。

「うむ。完璧だべ。」

一人頷いたノルウェーは、鏡を見て微調整をしてから布団に潜りました。


「ふう。たくさんお花を摘んだら遅くなっちゃいました。フィンばぁばー、ですー。」

一方は、布団で自分を待ち受けている者の正体などつゆ知らずに到着し、扉を開けました。

「おお、。よぐ来だな。」

「……フィンばぁば?」

明らかにいつもと違う様子を不思議がりつつも、は布団に近付いていきます。

「フィンばぁば……いつもとお声が違うのです。」

「病気だからな、しょうがねえべ。」

「言葉使いも違うのです。」

「年寄りとは本来訛りがきづぐて聞き取れねえモンだ。」

「………あなた、フィンばぁばではないですね?」

はボケの割に意外と勘はよかったのです。

「ばれたか。」

ノルウェーはむくりと起き上がり、帽子を取りました。

「あの…どちら様でしょう?」

「俺はノルウェー。近所に住むモンだ。」

あえて狼とは言いません。賢明ですね。

「ノルウェーさん……?」

「んだ。俺はおめぇをずっと見できた。俺の女になっでくんねぇか。」

「……へ、ええっ!?」

突然の愛の告白には驚き、次いで顔を真っ赤に染めます。

「朝から晩までおめぇの事考えてんだ。頼む、俺の嫁さなっでぐれ。」

「あの……あの……。」

「ちょっと待ったー!!!」

が混乱と恥ずかしさのあまり倒れそうになったその時、大声と共に扉がバコーンと開きました。

を放してよね!」

「誰だ、おめぇ。」

「通りすがりの猟師、アイスランド。何か文句ある?」

「馬さ蹴られて死ね。」

「意味わかんない。」

「邪魔すんでね。」

アイスを睨みつつちゃっかりを抱き寄せたノルの腕を、彼は銃で軽く叩きます。

「邪魔? 退治しようとしてんだけど。から離れてよね。」

「ああ?」

基本平和主義のは、すでに二人の間に挟まれ何も言えずにおろおろとしています。

「……さてはおめぇもの事狙っどるな?」

「な!?」

どうやら図星をドカンと突かれたらしく、アイスの表情が一気に赤く変わりました。

「何言ってんの!? 意味わかんない!」

「じゃあ俺がを嫁にしでもええな?」

「それは駄目!」

場の混乱はすでにのキャパシティを軽々と越え――

「で……」

は彼女にとって救いの、残りの二人にとっては滅びの呪文を叫びました。

「デンにぃにーーーー!!!!」

「呼んだっぺか、ーーーー!」

武器を持ったデン兄さんがフィンお婆さんの家の扉を蹴破って入って来ました。なぜ聞こえたのでしょう。

、無事だっぺか!」

「デンにぃにー! 事態が私のキャパを遥か上回ってどうしましょう!」

「大丈夫だ、おめぇは何も心配すんな。悪い奴らは兄ちゃんが懲らしめっから、家の外出て待ってろ。」

大好きなデン兄さんの言葉に、は素直に頷きました。


――そして一時間後、大怪我を負ったノルとアイスは喧嘩をしながら帰っていき、デン兄さんとも帰路につきました。

家につくと風邪の治ったフィンお婆さんが送り届けられていたため、三人で仲良く晩ごはんを食べましたとさ。

おしまい。



めでたしめでたし……おやこんな時間に誰か来たようd

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