「シー君が何したって言うですか、イギリスのバーカ! 眉毛!」
「うるせえ! お前は国じゃ無えんだから、世界会議引っ掻き回すな! 連れてきてやってるだけでも感謝しろ! それとお前も同じ眉毛だぞ!」
アーサーとピーターの喧嘩を、他の国々は苦笑いをしながら眺めていた。
「くっそ〜……結局会議室追い出されたですよ。世界の一員として地球温暖化問題について意見言っただけじゃないですか。」
会議室の外で、ピーターはメロンソーダを飲みながらぶちぶちと文句を言う。
「お外は暇ですよ……。」
「ピー君?」
ここにいそうなメンバーで自分の事をピー君と呼ぶのは一人だけ。
さっきまでとは打って変わった人なつっこい笑顔で、ピーターは声のした方を振り返る。
「!」
「お外でどうしたのですか?」
「イギリスの野郎に追い出されたですよ。シー君だって会議に参加したいですよ。」
「そうですか〜…。残念だったですね。」
そう言い、はピーターの頭をよしよしと撫でる。
「あー、までシー君を子供扱いするです!」
「あはは、可愛いです〜。」
――この人はいっつもこうですよ……。
幼いとはいえ、ピーターだって男。可愛がられるのも嫌いではないが、やはり格好いいと思われる方がいい。
「そういえば、は何してたですか?」
いつもピーターが会議の場でを見るとき彼女は正装(袴姿)だが、今日はジャージを着ている。
「今日は他のお仕事無いのでお掃除しているのですよ〜。」
ほら、とは手に持っている新聞紙を見せた。
「……それでお掃除ですか?」
「はい、濡らした新聞紙で窓を拭くととっても綺麗になるですよ!」
ピーターは半信半疑だったが、自信満々のの様子に少し興味を持った。
「じゃあ、シー君暇ですから手伝ってあげるですよ!」
「わぁ、本当ですか? それは助かります。」
ピーターはから掃除の方法を聞き、隣で窓拭きを始めた。
「うわあ、本当に綺麗になってるじゃないですか!」
くすんでいた窓ガラスが綺麗になっていくにつれ、ピーターの表情も楽しそうにきらきらと輝いていく。
「シー君お上手ですねぇ。」
「自慢じゃないですが、掃除や補修はシー君得意なんですよ……はあ、早く本当の国になりたいですよ。」
「国ですか〜……難しそうですよね。」
ピーターが国になろうと奮闘しているのもアーサーがそれで苦労しているのも、は知っている。
「早くイギリスの野郎がひれ伏すような巨大帝国になりたいですよ。」
それはピーターの夢であり、野望。
――そしたらきっともシー君ををかっこいいと思ってくれるですよ。
しかし、は。
「帝国ですか〜……それは怖いですねぇ。」
浮かない顔でそう言った。
「へ?」
ピーターはその言葉の真意が分からず、きょとんとする。
「“アーさんがひれ伏すような巨大帝国”なピー君は、ちょっと怖いです。」
「……怖いですか? なんで?」
「……昔、似たことを考えた国があったですよ。他の強い国に追い付こう、追い越そうって頑張りました。」
……だけど、それがもたらしたのは国の疲弊や国民の涙。
の表情が暗くなったのを見たピーターは、彼女が言わんとしている事を何となく感じ取った。
「……。」
「ピー君。強くなりたいのは良いことですよ。ですが、強いだけではダメなのです。強くて優しい国になってくださいね。」
「……わかったですよ。」
「ふー、終わった終わった。」
「疲れたんだぞ!」
会議が終わり、国達がぞろぞろと出て来た。
「おや、シーランド君。を手伝ってくれていたのですか?」
「あ、日本! シー君も新聞掃除をマスターしたですよ!」
えっへん! と、誇らしげなピーターの様子を、菊はほほえましく思う。
「それはそれは、ありがとうございます。もご苦労様、帰りましょう。」
「はい、菊にぃに。ではピー君、また今度です!」
「はい!」
「おいシーランド、俺たちも帰るぞ!」
「あ、イギリスいたのですか。」
「イギリスーイギリスー。」
「何だよ。」
「シー君、決めたですよ。いつか強くて優しい立派な国になりますよ!」
それは夢及び野望改め、夢及び誓い。
文章量に対してセリフ多い気がする。