1 髪の毛くいっ
「おーい! 遊びに来たんだぜー!」
勇洙はそう言い、日本に住む幼馴染の少女の三つ編みをくいっと引っ張った。
「勇君! もう、引っ張らないで下さいよ〜。」
「何でだぜ?」
「何でって……ほどけちゃうじゃないですか!」
ポコンと怒る彼女に対して、勇洙はあははは、と笑っている。
「ほどけたら編みなおしてやるんだぜ! 三つ編みの起源は俺だから、ちょちょいのチョルーだぜ!」
自信たっぷりに勇洙は言った。
「違うですよ……もう、相変わらずですね。」
勇洙の笑顔は何故か憎めない。耀や菊はこんな時疲れた顔でため息をつくが、彼女は笑顔になった。
2 あじありとるぶらざーず+ヒロインにインタビュー
Q 他の3人の事をどう思っていますか?
〜香くんの答え〜
「んーまあ、一応マブ? スパダチ? 的な?」
〜ヒロインの答え〜
「もちろん、とっても大事なお友達ですよ。みんな大好きなのです!」
〜湾ちゃんの答え〜
「兄弟で親友で大切な存在よ……まあ、爆竹とか主張とか自重してほしいけどね、出来れば……。」
〜ヨンスの答え〜
「全員俺が起源なんだぜ!!」
〜兄'sのコメント〜
「これで本当に仲良いからすげぇある。」
「友情の形は色々ですね。」
3 えいるるるふーる
「うぷぷ……。」
「…こら。」
「くすくす………。」
「言いたいことがあるなら、はっきり言ったらどうなんです。」
菊は自分の側で肩を震わせ笑う彼女に怒った様子で言う。もっとも、口調は怒っているがその顔は真っ赤で、全く怖くない。
「だって菊にぃに、フェリさんの嘘にあっさりだまされた上“えいるるるふーる”って!」
「……そんなに笑わないでくださいよ……。」
菊が恥ずかしそうに目を伏せる。彼女は何故かテレビをつけ、ビデオデッキを操作する。
「極めつけはこの表情! 菊にぃに可愛すぎですっ!」
テレビに映し出されたのは、あの日の耳まで赤い菊の表情。
「うわあああああああ!」
「ビデオ撮っておいてよかったです。」
「消しなさいっ!!」
1 ギリシャと彼女のゆる関係
「……そうだ。俺、日本語少し覚えた……。」
「わぁ、それはすごいのです。よかったら聞かせてくださいませんか?」
彼女が言うと、ヘラクレスは少し恥ずかしそうに
「あ…あなたはネコ美さんですか?」
と言った。
(ネコ美さん……ネコが好きなヘラさんらしいです。)
「はい、そうです。」
「ネコ美さんは誰の事が好きですか?」
「えーと……友達のネコ吉さんです。」
「ネコ吉さんは私ですか?」
「ふぇ!? えーと、ノーコメントで。」
(少しびっくりしました……。)
(……ちえ。)
2 方向音痴貴族
「迷いました……。」
オーストリアことローデリヒは、広いヨーロッパの片隅で途方に暮れていた。
「どうしましょう……。」
腕を組み、考える。だが道は分からない。久しぶりにイタリアへ行って、自分の家に帰ろうとしただけだというのに。
(むしろ行きに迷わなかった事が不思議でならない。)
「とりあえず歩いてみましょうか。いつかは着くでしょう。」
根拠の無い決意を胸に、ローデリヒは歩き出……そうとした。
「ローデさん?」
「おや、貴女は。」
ちょうどいいタイミングで歩いてきたのは、世界会議で何度か顔を合わせたことのある妖怪の少女。
「お久しぶりです。お出かけですか?」
「あ、いえ……これから帰るところですよ。」
ローデリヒが言うと、彼女はえらく驚いた。
「だってローデさん、今反対方向に行こうとしていませんでした?」
「道が分かるのですか?」
まさかの彼女の言葉に、今度はローデリヒが驚いた。
「ええと、オーストリアは確かあっち方向ですよ。」
彼女が指差した方向は確かに、自分が行こうとしていたのと真逆だ。
「以前エリザさんやフェリさんにクラシックコンサートに連れてきてもらった事があるんです。」
「そうですか。大丈夫、もう分かりました。では失礼いたします。」
「……まだオーストリア領まで大分歩きますが、その、道大丈夫ですか…?」
「………一緒に行ってもらえますか。」
出来れば自分の弱点を他人に知られたくはないが、背に腹はかえられない。
「……何か可笑しいですか。」
隣を歩く彼女は、さっきからくすくすと笑っている。
「あ、ごめんなさい。何か意外だなあ、と思って。」
「意外?」
「はい。ローデさんっていつも冷静というか落ち着いてらっしゃるので、方向音痴なのがすごく意外で、でもちょっとほっとしました。完璧なだけじゃなくて、そういう面もあるんだなあって。」
「はあ……そういうものですか?」
「はい。」
ローデリヒ自身は恥ずかしい欠点でしかないこの方向音痴だが。
(まあ、こんな日があってもいいでしょう。)
3 似たもの兄弟
ある日。
「あ、アーさん。お饅頭を作ったので、よかったら食べていかれませんか?」
彼女の一言に、アーサーは大層喜んだ。
「そ、そうか。腐ったら勿体無いからな、食べてやるよ。」
……ただ、それを正直に表には出さないが。
またある日。
「あ、ピー君。お団子を作ったので、よかったら食べていかれませんか?」
彼女の一言に、ピーターはやはり大層喜んだ。
「そうですか、シー君に食べてほしいのですね。しょうがないから食べてやるですよ!」
……ただ、やはりそれを正直に表には出さない。
「アーさんとピー君はやっぱりよく似ていますね〜。」
「な、なんでですか! シー君に失礼ですよ!」
「てめえシーランド、どういう意味だそれは!」
4 彼の女装とあの子の反応
「リトー。」
「あ、おはよポーラン……うえええええ!!」
トーリスの目の前にいたフェリクスは、ピンクのフリフリのワンピースを着ていた。
「何なん? いきなり叫んでー。」
「お前のせいでしょー……もう、そんな格好して。」
「なんで? 似合っとるやろー。」
「うわあ返事に困る問いかけ。」
呆れるトーリスを余所に、フェリクスはポーズをとるなど非常に楽しんでいる。
「あ、トーくんにフェリくん。こんにちは。」
と、そこに知り合いの妖怪の少女がやって来た。
「やあ、こんにちは。」
「久々だしー。」
二人共彼女と親しいため、笑顔で挨拶を返した。
「あの…フェリくん? その格好……。」
「ん? これ?」
――しまったああ!!
……見られた、彼女に。
女装姿を見られたフェリクス本人より何故かトーリスが慌てている。だが、彼女の反応はトーリスの想像とは違っていた。
「可愛い! 凄く似合ってらっしゃいます!」
「え?」
「感激です、男の娘が耀にぃに以外にもいたなんて……ちょっと小悪魔系な感じもフェリくんのキャラに合っています……!」
「……よく分からんけど……俺、誉められとるん!?」
「ええ、もちろんです!」
「うわー、リト聞いた!? 俺めっちゃ嬉しいしー。」
「……俺、もうつっこまないよ。」
5 蘭さんと私
数百年前、蘭さんと私が知り合った頃――
「蘭さん、こんにちは! お茶どうぞなのです〜。」
「おー、ありがとう。お前は(小さくて)可愛いのう。こんぺいとう食うけ?」
――蘭さんはこんな感じで、すごく優しいお兄さんという感じの方でした。それがここ数十年では――
「蘭さん。こんにちは、お久しぶりです。菊にぃには今手が離せませんが、あがって待っていてください。」
「……お前、昔は(小さくて)良かったんにのう……。」
――蘭さんはこんな感じで、心底残念そうにため息までつくのです。
「…という訳なのです。私何か蘭さんに悪いことをしてしまったのでしょうか。」
彼女の話を聞いたベルは一言。
「あー、お兄の趣味のせいやで気にしんとき。」
1 勝手に同盟
「はい、調印……と。これでOKね。」
「はい!」
ここはエリザの家の一室。今日は珍しく、湾が遠くアジアから訪ねてきている。
「私達の同盟が見事成立した訳ね。」
「はい! お互い頑張りましょうね。」
「洪湾同盟別名、彼女を守る同盟!」
彼女とは勿論、日本の家で暮らしている友人のこと。
優しく可愛い彼女は世界の色んな国から想いを寄せられているが、その中には助平や変態なども含まれている。
その様な輩から彼女を守るため、エリザと湾が手を組んだのだ。
「ヨーロッパで彼女が危険な目に合ってたら、私が相手をフライパンでぶちのめす。」
「アジアで彼女が危険な目に合ってたら、私が中華鍋でぶちのめします!」
「完璧ね! 頑張りましょう、台湾ちゃん!」
「はいっ!」
――洪湾同盟、上司を全く介さずここに締結――
2 似たもの義兄妹
某年某月某日某曜日、某所での世界会議の日。
「あれ? 日本はどうしたんだい?」
“JAPAN”と書かれた座席に座っているのは菊ではなく、一人の少女。
彼の妹分である彼女は国でも地域でもない妖怪の少女で本来ここにはいられないのだが、“日本の秘書”ということで特別に同席が認められている。
それでももちろん、日本がいなくて彼女だけ、という状況は普通有り得ないのだが……
「菊にぃには有休なのです。」
「って、世界会議に有休もくそも無いだろ。体調でも悪いのか?」
アーサーが突っ込みながらも心配し、他の国々も集まってくる。
「今日はね、“ドロップクエスト三”の発売日なのです!」
「……は?」
世界が一斉にきょとんとした。
「何ある? それ。」
「俺知ってる! 日本の家で最近話題のテレビゲームなんだぞ!」
「まさか日本のにーに、それを買うため休んだんじゃ……。」
「はい、その通りですよ?」
「なんだそれは! 不真面目極まりないのである!」
「日本ってそんな奴だったか……?」
「本当ですよね。彼は世界でも有数の真面目さが売りだというのに。」
各国は戸惑いを隠せない。
「で、代わりに来たのです。」
「ヴェー、なんで日本を止めなかったの?」
フェリシアーノまでもがただただ日本のサボリに驚いている。
「だって、菊にぃにに私の分も買ってきていただけるようお願いしましたから。」
「……っておい!」
平然と言う彼女に、各国がいっせいに突っ込んだ。
(だめだこのオタク兄妹、早く何とかしないと……)