長編小説番外編 HMforガールネタ 牧物2ネタ お題配布元
1 高すぎた望み (牧物2、長編番外)
「パパ、いつまでもポプリを子ども扱いしないで!」
「何を言ってるんだ、ポプリはパパの子どもだろう。」
「もー、そういうことじゃなくって!」
「あはは、いつも仲良しですね。ポプリちゃんとバジルさん。」
――“あの人”は、相変わらずなんだろうか。
『おとーさん……。』
『何だ。』
『………なんでもありません。』
――物心ついたときには、もうすでに親子らしい会話はほとんどしていなかった。
『ユーリア、私は仕事に行く。家政婦のリサの言う事を聞いて、大人しくしていなさい。』
『う………ひっく。』
『いつまでもめそめそしているんじゃない。』
――お母さんが死んで1日しかたっていなかったのに、あんな言い方って、あんな態度って無い。
『なんで?ロキって私の許婚なの?…そんなの勝手に決めないでよ!』
『お前に任せるとろくな男を連れてこないだろうからな。会社の発展のためだ。何かおかしいか?』
――ここに来る事を許してくれたのがむしろ信じられないくらい、父さんは自分の会社やお金の事しか考えていない人間。
「もー、パパはいっつも!」
「バジルさん、ポプリちゃんのこと大好きなんだね。」
――うちにはあんな光景、一回も無かった。
“仲良し父子”、夢見た時期もあったけど、すぐに諦めた。
だって私にとってそれは、高すぎた望みだったんだもん。
2 見ていて下さい
「ユーリア、お墓参り?」
「リック。」
お墓の前に腰掛けたユーリアにリックは声を掛けた。
「うん。お爺ちゃんとお婆ちゃんと、それにお母さんの。」
「え…でもユーリアのお母さんって…」
言いかけてリックは口をつぐんだ。口にすることでユーリアを傷付ける気がした。
「うん、実家の近くにあるよ、お墓。だけど、ここがお母さんの故郷だから。ここに帰って来て見守ってくれてると思うんだ。」
「そっか。」
ユーリアと別れた後、リックは空を見上げてポツリと呟いた。
「……見ていて下さい。」
あの子を。あんなに頑張っているあなたの娘を。
そう思わずにいられなかった。
3 写真と証言
エリィの祖母のエレンは、ユーリアの祖父の若い頃を知っている数少ない人物。
同時に花の芽の移り変わりもずっと見てきた。
「ユーリアちゃんの牧場ね、昔はもっと広かったのよ。」
「そうなんですか?」
「ほら、これ。当時珍しかった航空写真よ。」
エレンから渡された写真を見るユーリア。そこに写っていたのは確かにあおぞら牧場。
……大きな木が何本も生えている。建物も多い。水を汲む池も多い。
そして何より、広さが今の2,3倍はある。
「広かったんですね、本当に…。」
「そうなのよ、いろいろあって少し狭くなってしまったけど。」
「へえ……。」
(何があったの!?何があったらこんなに変わるの!?)
※初代牧物やってた人なら分かる。どうやって航空写真撮ったんだという突っ込みはスルーで。
4 子供たちの贈り物
「おーい、ねえちゃーん!」
「おねえちゃーん!」
「こんにちはー!」
仕事が一段落した昼下がりのこと。
「ケンタ君、ユウ君、メイちゃん。」
3人の元気な声は、牧場の奥にいたユーリアにもばっちり届いた。
「こんにちは、どうしたの?」
ユーリアが尋ねると、3人は何やらはにかみながらもじもじとしている。
「?」
「あのな、ねえちゃん。」
ケンタが残りの2人にせーの、と声をかけ――
「じゃーん!」
ユウとメイが後ろ手に持っていた紙を広げ、ユーリアに見せた。
「わあ、ひょっとして……。」
「あのね、私たちがんばっておねえちゃんをかいたんだよ。」
「いつもおやさいくれたりあそんでくれたりするから、ありがとうの絵なの!」
笑顔で動物に囲まれ、野菜を持っている自分の絵。
「……ありがとう、みんな。嬉しい!」
こんなに純粋な心がこもった贈り物をもらうのは初めて。
ユーリアは絵を受け取り、3人が帰った後家の壁に大事そうに貼った。
5 グレイ君と私(1年目の秋と冬の間)
「クリフ、一位おめでとう。本当にすごい走りだった!」
『ありがとうございます、ユーリアさん。』
秋の草競馬も終わって、世の馬達はほっと一息。ユーリアはすっかり仲良くなった馬クリフに会いに来ている。
「そういえば、あれからグレイはどう?」
『グレイね、最近少し雰囲気が柔らかくなったんです。昔ほどじゃないけど、よく話すようになってくれて。』
「本当? よかったね!」
よくしゃべるグレイ――ユーリアには全く想像がつかないが、それが本来の彼かもしれない。
『あ、グレイ。』
クリフが顎で指した方を見ると、確かにグレイが家から出て来た。
「……なんだ、また来たのか。」
ユーリアの姿を見つけたグレイは素っ気なく声をかける。
「……すぐに冬が来る。牧草は早目に刈っておけよ。」
ぼそっとそう言うと、グレイは再びユーリアに背を向けて家畜小屋へ入っていった。
「……ねえクリフ、今の……。」
グレイの方からユーリアに話し掛けてくる、まして気遣うそぶりを見せるなど、少し前までは考えられなかった。
『ね? 柔らかくなったでしょう?』
「……うん、本当。」
1 もしもシリーズ。もしもリックが学校の先生だったら。
リック「つまり、魚の内部はこんな構造になっているんだ。分かったかい?」
生徒「じゃあリック先生、この鶏は?」
リック先生の 目の色が 変わった!
リック「いい質問だね!まず鶏はね、○○がこうで、………で、そしてその右に見える××はこんな仕組みに……。」
生徒達「…………………」
キーンコーンカーンコーン。
リック先生が 正気に 戻った!
リック「あれ?まだここまでしか進んでないね…おかしいなあ、今日中にテスト範囲終わると思ったのに……。」
生徒達(おめーのせいだ、おめーの!!)
※ちなみに生物。
2 ポプリの大ボケ
散歩中、クレアはポプリと出会った。
「ポプリちゃん、おはよう。」
「あ、クレアさん!今度、ポプリのおうちに遊びに来てね。」
「………うん………。」
上機嫌でポプリは家に入った。クレアはその場で考え込む。
(私、今ポプリちゃんの家の前にいたんだけど…。ポプリちゃんとは家の前で話してたんだけど……。ここ、突っ込んだほうが良かったのかな……。)
※ちなみに実話
3 元気だよ
宿屋の電話が鳴った。
「はい、もしもし。ミネラルタウンです。……わあ、久しぶり。」
看板娘、ランが電話を取り、受話器の向こうの相手と少し話をし、店内を見回す。
「カレンがいるから、呼んできてもらうよ。カレンー、ちょっとポプリちゃん呼んできてくれない?」
カウンターにいたカレンに声をかける。
カレンはポプリを呼ぶ理由に検討がついたため、「分かったわ」と言い呼びに行った。
数分後。
「カイッ!」
受話器の向こうで自分を待つ、大好きな人の名前を叫びながらポプリが店に飛び込んできた。
息を落ち着かせ、ランから受話器を受け取る。
『もしもし、俺。久しぶり』
「カイ……久しぶり。」
『お前、相変わらずだな。さっきの声、こっちまで聞こえた。』
「えー?」
笑いながら話す2人。
『……よかった。』
「え?」
『元気そうで安心した。俺がいないのが寂しくて泣き暮らしてるんじゃないかって思ってた。』
「……大丈夫だよ、ポプリは元気だもん!」
――だって、カイが電話をくれたんだもん。
4 届いてください
「あとちょっと……!」
目当ての本まで、あと約1cm。クレアは必死に図書館で背伸びをしていた。
……と、その時。
「これかい?」
すっと長い腕が伸びて、あっさりと本棚から彼女がとろうとしていた本を引き抜いた。
「ドクター…。」
クレアは腕の主を見る。
「意外だな、君もこんな難しい本を読むんだ。」
「な、なんですか? それ。私だってね、勉強する時はするんですよ。」
「ははっ、そうだね。ごめんごめん。じゃあ、これで。」
ドクターは自分の読む本を借り、そのまま外へ出て行った。
クレアは、図書館の奥へ行く。
外を――今出て行った彼と、彼の妻のエリィの姿を見ないように。
――届かないのは、本だけじゃなくて。
5 ここに居てもいいですか
「あれ、ドクター?」
「やあ、クレア君。こんにちは。」
「こんにちは。どうしたんですか?こんな所で。」
2人はマザーズヒルの湖近くにいる。クレアはよく薪割りに来るが、ここでドクターと会うのは初めてだった。
「釣りをしに来たんだ。」
「へえ、何か意外ですね。得意なんですか?」
「まさか、下手の横好きだよ。」
はは、とドクターは苦笑する。
「君は仕事かい? 薪割りか何か?」
「ええ、まあ。でも今日はよします。」
「え? いいのか?」
「はい。その代わりここに居てもいいですか?」
「別にいいけど……。」
「では、遠慮なく。」
クレアはすとんとドクターの隣に腰を下ろした。
(薪割りよりも、あなたと過ごしたい)
6 本当に他に選択肢はなかった?
「はあ……。」
ミネラルタウンの広場のベンチ。鍛冶屋のグレイはしょっちゅうここをサボリ場所にしている。
「あー、くそ。あの爺さん、思い出してもムカつく!」
あの爺さんとは彼の祖父で鍛冶屋の主人。数ヶ月前、グレイは彼に弟子入りした。
都会で学校を卒業したもののやりたい仕事が見つからず、“なんとなく”な選択だった。
「こんな所来なきゃ良かった。」
祖父の指導は厳しい。
今まで何事もソツなくこなしてきたグレイにとって、何度も叱られたり下積みしかやらされない状況は、苦痛でしかなかった。
「もっとちゃんと就活すりゃあ良かった。」
彼は今日もサボる。自分に足りないものに気付くまで。
1 良い夢を見たよ
牧場主ピート。今日も想い人、エリィの元へ行く。
「おはよう、ピート君。」
「おはよう。これ、卵の差し入れ。」
「ありがとう、とっても助かる!」
ピートが牧場で採れた卵や牛乳を差入れし、少しの間談笑するのは、もはや日課となっている。
「そういえばさ、今日は良い夢を見たんだ。」
「へえ、どんな夢?」
「小さい頃の夢でさ、女の子と遊んでて。ままごとしてるんだけど。」
「うんうん。」
「泥団子を俺本当に食べちゃって、おなか壊したんだ。そのときの夢。」
「………それ、良い夢なの?」
少々困惑気味のエリィ。
「良い夢だよ。何故かは分かんないけど、そんな気がする。」
―――今は、まだ思い出せないけど。
2 花
いつものようにグレイが牧場内を見回っていたときのこと。
(雑草だ……。)
牧草地の隅に、花が咲いているのを見つけた。
花といっても雑草、ほうっておけば牧草のための栄養分を奪う存在。
(抜いておくか。)
その時、ふと彼は自分が思いを寄せる花屋の少女の顔を思い出した。
『お花ってかわいいでしょ。私、お花大好きなの〜。』
――彼女だったら、雑草でも花は花だというだろうか?
「……兄さん、何やってるんだろう?」
ランが見たものは、雑草にじょうろで水をやっている兄の姿だった。
3 リックのちょっといい話
「……邪魔するぞ。」
「やあ、いらっしゃい。」
リックの店にやってきたのは無愛想な従兄弟のグレイ。
「……用事って何だ?」
「ちょっとこの新製品試してほしいんだ。所謂モニターって奴。」
言いながら、リックは戸棚をがさごそと探す。
「ああ、あった。はいコレ。」
リックがグレイに手渡したそれは、ふわっと軽くて鮮やかな青色の――……。
何を渡されたのか理解した瞬間グレイは耳まで赤くなった。
「いらな……」
「……いわけないだろ?」
リックは笑顔で突っ返そうとしたグレイの手を無理やり掴み、ぐぐっと押し戻す。
「無駄にしたら承知しないよ、言っとくけど。」
グレイがその数日後ポプリにプロポーズした時。
「全く、世話が焼けるんだから。」……と呟いたメガネがいたとか。
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