「おーい、ちゃん!」
「ダイゴさん!」
「偶然だね、ちゃん。そうだ、僕今お菓子持ってるんだけど、よかったら一緒にどうだい?」
そういってダイゴは、自分の持っている袋をに見せる。
「わぁ、いいんですか?ありがとうダイゴさん!」
「昨日、用事でカントーに行ったらあるお店で店じまいセールやってて。」
ダイゴの持っていたお菓子は、銘菓“カントー煎餅”。
「わーい!カントー煎餅だ!これ好きなんですよー。」
「食べた事あるの?」
「お姉ちゃんがハナダジムにいた頃、時々家に帰ってくる時に買って来てくれたんですよ。」
コップに水筒のお茶を注ぎながら、が答える。
「ああ、なるほどね。そういえばミクリから聞いたけど、ちゃんは今ルネジムにいるんだよね。」
「あ、はい。ミクリさんって、とってもいい人ですよね。“お姉ちゃんが羨ましい”って、他の3人でよく話してるんです。
ミクリさんってかっこいいことで有名だし、それにとっても優しいですし!」
「………へえ……。」
自分が気に入っているが他の男を褒める事が、少なからず気に食わないダイゴ。
「あ、そうだ!お姉ちゃんで思い出した。あの、ダイゴさん、お願いがあるんです。」
しかし、が上目遣いで彼女の顎のあたりで両手を組み、“お願い”ポーズをしたとたん、ダイゴの機嫌は直った。
「なんだい?何でも言っていいよ!」
「私、今お姉ちゃんからカントーのポケモン図鑑借りてるんですけど、そろそろ返して欲しいって言われてて。
今朝勉強終わったから返さないといけないんですけど、お姉ちゃん、他のジムトレーナーの人たちと今日の夜から強化合宿するらしくって。
それで、合宿に行く前にルネに行きたいって思ってて………連れて行ってもらえませんか?」
誰かに頼る以外、新米トレーナーのにルネに行く術はなかった。
「御安い御用だよ。さあ、乗って。」
ダイゴがボールから出したメタグロスに乗り、2人はルネへ向かった。
「あれ、?どうしたの?あ、ダイゴさんも。こんにちは。」
2人が到着したとき、ルネジムはちょうど昼休憩の時間だった。
「久しぶり、ちゃん。」
まだがハナダにいた頃、ハルカの紹介でダイゴは彼女に会っていた。
「お姉ちゃん、借りてた図鑑返しに来たよ!」
「え、じゃあひょっとしてダイゴさん、わざわざをここまで連れてきてくれたんですか?すみません、お忙しいのに。」
「いや、大した事じゃないよ。」
「そうそう。ダイゴは年中暇を持て余しているのですから。」
3人で話していると、突如ミクリが現れた。
「わ、ミクリ。どこから現れたの?」
「ここは私のジムです。どこからだって現れますよ。…と、やあ、こんにちはくん。久しぶりですね。」
がいる事に気付いたミクリは、すぐさま笑顔であいさつをする。
「お久しぶりですミクリさん!」
途端にも笑顔になるが、ダイゴにはそれが気に食わない。
「調子はどうですか?」
「すっごくいいです!ムロのトウキさんに、よく育てているって褒められました!」
「良かったですねぇ。」
とミクリが笑いながら話すのを見ているダイゴは、イライラ指数がどんどん上がっていっている。
「あの……ダイゴさん?」
それは、鈍感なにも分かるほどだった。
「はは、なんでもないよ、ちゃん。ミクリ!」
引きつった笑顔でに返事をし、ミクリを呼び、少し離れた所へ連れて行くダイゴ。
「何ですか?」
「ミクリってさあ、女の子皆に優しいよね、本当。」
「はあ。」
「でもさぁ。」
ちらちらととの方を見ながら、聞こえないよう小声で続けるダイゴ。
「あんまり皆に優しくしていると、八方美人とか思われたりしない?」
「あ、全く心配ないから。」
長い付き合いのダイゴに対しては、ミクリはくだけた話し方をする。
「でもさ、僕思うんだけど、ちゃんやちゃんにはちょっと特別優しくしてない?」
「はあ?」
一瞬怪訝な顔をしたミクリ。だが、
「……ははあ、そういう事。」
マブダチの勘で、すぐに察知し、そして。
「な、何が?」
「ロリコン。」
きっぱりと、言い放った。
「し、失礼な!」
「では、聞いてみるか。」
“何を?”といいたそうなダイゴを放って、とのほうへ戻るミクリ。
「君。ここまでダイゴに連れてきてもらったのですよね。」
「え、はい。」
「さあ、そこで貴女に質問です。」
何やら楽しそうなミクリ。
「ダイゴは、貴女にとってどんな人ですか?」
「え?」
「!?」
ミクリは今にも叫びそうなダイゴを2人に気付かれないように目で黙らせ、笑顔でに尋ねる。
はというと、少しの考えたが、笑顔でこう言った。
「頼れるおにいちゃんって感じの人です!」
「そうですか。よかったですねぇ、ダイゴ?」
“おにいちゃん”的存在であることに喜んでいいのかどうなのか、複雑な心境のダイゴに、そんな彼の心境をわかった上で笑いかけるミクリ。
「お、お兄ちゃん……。」
は続ける。
「だって、ダイゴさんがいなかったら私こんなに順調に旅を続けられなかったと思うんです。感謝してます!ダイゴさん、いつもありがとう!」
最高の笑顔でそう言った。
とたんに、ダイゴの気分も最高になったのだとか。
かっこいいダイゴさんを書こうとしたはずが、ヘタレになった。
……まあいっか。