「おお。」
どこかの町のどこかの洞窟に、どこかの御曹司であるはずの青年が1人。
「いいなあ、この石。……よし!」
「ダイゴ君、なんだか機嫌いいみたいね。」
「むしろ、心ここにあらずって表現のほうがしっくり来るな。」
サイユウシティのポケモンリーグでこんな会話をしつつチャンピオン・ダイゴを眺めているのは四天王のフヨウとカゲツ。
ダイゴはというと、さっきからいい笑顔かと思ったらいきなりにやけたり、そわそわと歩き回ったり時計を見たり、挙句の果てに小躍りしたり。
それらの行動の原因が気になった2人は、彼に聞くことにした。
「ダ・イ・ゴ・君!」
「どうしたんだお前。さっきから。」
「あっ、フヨウにカゲツ。いつからいたの?」
「ずっといたよ!」
ダイゴのボケに、思わず2人同時に突っ込む。
「ねえ、それより聞いて〜うぷぷぷ。」
頭の中に向日葵でも咲いているのかと疑うぐらい上機嫌なダイゴに若干引きながら、
「何かいいことでもあったの?」
と尋ねるフヨウ。
「これをね、ちゃんにプレゼントしようと思うんだけど、喜んでくれるかなぁ?」
「どれどれ………え。」
「これ……?」
ダイゴが2人に見せたのは、一見ただの石。
「どう?」
「どうっていわれても、これってただの石ころだよな?」
「失礼な!ほら、よく見て!」
ダイゴに言われて渋々よく見ると、少し綺麗な色をしているようにも思えてくる。が。
「ちょっとは綺麗かもしれないけど、ごめん、ただの石にしか見えないわ。」
若干、気を使いながらもきっぱりと告げるフヨウ。
「もう、二人とも見る目ないなあ!いいもん、ちゃんはきっと喜んでくれるからね。」
お互いに顔を見合わせるフヨウとカゲツ。
「………ダイゴ。女の子にあげるプレゼントが石ってのはどうかと思うぞ?」
カゲツの隣でフヨウもうなずく。
「えー、………そうかなぁ?」
さっきまで浮かれていたダイゴも、友人の真剣な態度に少しばかり不安そうになる。
「普通さ、相手の趣味に合った物を贈るんじゃない?自分の趣味のものあげたって、相手が気に入るかどうかなんて分かんないと思う。」
「…………そ、そうかなぁ?」
「だからさ、ダイゴ君。」
「よし!」
石じゃなくてお花でもあげたら?とアドバイスをしようとしたフヨウの言葉を遮って、ダイゴが叫び立ち上がる。
「ダ、ダイゴ?」
カゲツとフヨウを見下ろし、ダイゴは笑顔でこう言った。
「この石、このままあげようと思っていたけどちゃん好みに可愛くラッピングしてくるよ!」
あっけに取られたフヨウとカゲツの突っ込みを待たずに、ダイゴは
「善は急げ!」
と、去っていった。
「……あ、あいつ何にも分かってない!」
残された2人がそう叫んだのは言うまでもない。
「やあ、、ちゃん!」
「あれ、ダイゴさん!偶然ですね、こんにちは!」
が木の実を育てている道路で待ち伏せしていたダイゴ。
本人は気付いていないが、無論、偶然ではない。
「とつぜんだけど、ちゃん、これ受け取ってもらえるかな?」
ダイゴの手には、綺麗にラッピングされたあの石。
「…え!?い、いきなりですね。いいんですか?もらっちゃって。」
「もちろん。」
ダイゴからそれを受け取る。
開けていいよとダイゴに言われたため、その場で開ける。
「……わあ、綺麗な石!」
「この間見つけたんだ。気に入ってもらえたかな?」
「はい、もちろん!ありがとうございます、大切にしますね!」
とわかれた後、ダイゴはすぐにフヨウとカゲツに報告したとか。
ボケのダイゴと突っ込みのフヨウ・カゲツとミクリ。
リーグではダイゴ・フヨウ・カゲツの3人で一緒の事が多いです。