「勝者、チャンピオンのダイゴ!」

「……っ、くそっ!」

周囲の苦悩

「あ、もしもし。ちゃん?うん、ちょうど仕事が終わったんだ。……うん、うん。」

ホウエンリーグチャンピオンのダイゴ。

彼をよく知る者は、かならず一度は思ったことがあるだろう。

“なんでこいつがチャンピオン?”……と。

その理由は………


「ダイゴ、今度ジムリーダーやリーグメンバーの有志でジョウトに行こうって話があるが……。」

「ああ、ごめんミクリ。その日はちゃんにバトルを教える約束をしているんだ。」

「ダイゴ君、お菓子を頂きましたの。お一ついかがですか?」

「ありがとうございますプリムさん、もう一つもらってもいいですか?ちゃんにもあげたいんです。」

「ダイゴ様、来月会社の方で会議があるのでご出席いただきたいのですが。」

「ああごめん、その時期はたぶんちゃんが冒険に行き詰っている時期だと思うんだ。いつでも助けに行けるように、用事は入れないでおくよ。」

…………とにかく、チャンピオン且つデボン・コーポレーションの次期社長という立場であるにもかかわらず、

彼の生活での優先事項は何よりも“オダマキ”なのだった。


「……はあ。」

「はあ、じゃないですよ、ミクリさん!」

今日は全国的に休日。

ルネジムのミクリのもとを、フヨウとカゲツの2人が訪れていた。

「ミクリっちならさ、ダイゴとはマブダチだから上手いことあいつを改心させれるだろ?」

「ミクリっちって……まあ、確かに最近のダイゴは少々、浮かれすぎている感がありますからね…。」

ミクリもそんなダイゴに少々困っていたため、

「わかりました、言っておきましょう。」

と言った。


「………という訳だ。もう少し、チャンピオンで御曹司、と言う自分の立場を自覚した方がいいんじゃないか?」

その日の午後にダイゴがルネジムに遊びに来たため、早速ミクリはさっきの話をした。

「……そうか……。」

普段人の話をあまり聞かない彼も、今回ばかりはいささか反省したように見える。

「それに、あまりお前が仕事をサボっているのが彼女にばれたら、むしろ嫌われるのではないか?」

「……ちゃんに嫌われる……ちゃんに嫌われる……ちゃんに嫌われる…………。」

「え、おい。ちょっと、ダイゴ?」

先ほどのミクリの言葉がよほどショックだったのか、ダイゴはなにやら雨雲のようなオーラを出しながらブツブツと何かをつぶやき始めた。

「ミクリさん、おはようございま……っひゃあっ!!?」

そこに、ジムトレーナーの――の姉が現れた。

ダイゴのただならぬ様子を見た彼女は、2人に何かあったのかと尋ねた。

「聞いてくれる!?ちゃん!!!」

「はっ、はい!?」

「僕、ちゃんに嫌われてしまうかもしれないんだ………。」

今や“チャンピオンや御曹司としての自覚”云々の話は、どうやらすっかりダイゴの頭から抜け落ち、

に嫌われるかも”と、ミクリがダイゴに発破をかけるために言ったことだけが

ダイゴの脳内を支配しているらしい。よっぽどショックだったのだろう。

「え、何を言ってるんですか?ダイゴさん。そんなことあるわけないですよ!」

「へ?」

事情を知らないは、ミクリがダイゴにばれないように“それ以上言うな”のサインを送っているのに気づかずに話す。

「この間だって、バトル教えてもらったって嬉しそうだったし、プリムさんのお土産のお菓子を頂いた時もダイゴさんにすっごく感謝してましたし。」

「……ホント?」

は頷く。

「……………なんだ、そっかあ!」

「ああ……あと少しだったのに。」

いきなり元気を取り戻したダイゴと、その真逆のミクリ。

ちゃん、ありがとう!じゃあ、僕そろそろちゃんのところに行って来るよ。」

そして、ウキウキしながらダイゴはルネを去り、

ガックリ肩を落としたミクリと、事情がいまいち飲み込め切れてない様子のが残された。


そろそろ“かっこいいダイゴ”ファンの方から剃刀送られてくるような気がします…;

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