ムロタウンの洞窟前に、少女とポケモン数匹がいた。
「よし、フラッシュもできるようになったし!気合で行こうね、みんな!」
一行は、少し怖がりながらも洞窟へ足を踏み入れた。
ここ、いしの洞窟にいる少女は、新米トレーナーの。
「わぁ、フラッシュたいたらそんなに怖くないね、意外とよく見えるし。」
すぐ上の姉とは違い、彼女はあまりこのような暗い所に入った経験がない。
ふだん地上で出会うポケモンとは違うタイプのポケモンに若干驚きながらも、周りを見ながら楽しそうに歩いていく。
「“ダイゴ”さんって、どこにいるんだろう……。この洞窟そこまで広くはないから、すぐ見つかると思ったんだけど。」
そもそもがここに来た理由。
それは、一つ前の町、カナズミシティで出会った男性のお使いだった。
「旅の途中でお使いを頼まれることが多いってお姉ちゃんが言ってたけど本当だね。」
ポケモンたちと喋り、時に野生ポケモンをゲットしながら彼女は洞窟の奥へ奥へと進んでいった。
「ここ…さっきと似てるけど、違う道だよね?」
弱弱しいの問いに、ポケモンたちは揃って首を横に振る。
「……あ、そうか!このはしごを上がるんだよね!」
なれない洞窟で方向感覚が狂ったのか、の一行はさっきから延々と同じ場所を行ったり来たり、進んだり戻ったりしていた。
「……ここもさっき通ったっけ……?」
頷くポケモンたち。
は再び自信なさげに移動する。
「……違う……。」
いくら進んでも正しいルートを歩けない。どこも同じに見える。
は不安がこみ上げてきた。
「こ……ここどこよぉ〜。」
序盤に調子に乗ってバトルをしていたため、ポケモンたちにも疲れが見えてきた。
しかも、あなぬけのヒモは持っていない。
状況は最悪としか言い様がなかった。
「な、泣いてたって仕方ないよね。とにかく進まないと。」
疲れたポケモンたちに少しでも楽をさせようと、彼らをモンスターボールへ戻し、歩き出そうとした。
が、その時。
「……物音?」
今まで聞こえていた洞窟内のポケモンたちの声とは明らかに違う音が、の前方から聞こえる。
「……なんだろう。」
ひょっとしたら“ダイゴ”かもしれない。違うとしても、人間だったらとりあえず安心だ。
は祈る気持ちで音のほうへ歩いていった。
しかし。
「ひっ……!」
祈りはむなしく、の目の前に現れたのは彼女が今まで見た事ないおっかないポケモンだった。
「こ、こんな大きいポケモンがいるなんて聞いてないよ…?」
驚きと怖さのあまり、はその場に立ちすくんだ。
と、その時。
「あれ……こんなところに女の子が。」
若い男性の声がポケモンの後ろから聞こえた。
「ごめんね、驚かせてしまったかな。」
青年はに気付くと慌ててポケモンをボールにしまい、声をかけた。
「だ、大丈夫です。ビックリしたけど……。」
「君はどうして1人でこんな洞窟の奥に?」
「人を探してきたんですけど、道に迷っちゃったんです。」
2人は洞窟の出口へ向かいながら話をする。
「ダイゴさんっていう方に手紙を渡さないといけないんです。」
「え?僕に?」
「……え?」
「そうか、まだ名乗っていなかったね。僕はダイゴ。手紙、わざわざありがとう。」
はダイゴに手紙を渡した。
「君はなんていう名前?」
「あ、です。」
「ちゃん、か。」
「さっきのポケモンはボスゴドラって言うんだよ。」
「ボス……あ、ココドラの進化系ですね。」
「そうそう……あ。」
話しながら歩いていたからか、あっという間に2人は出口にたどり着いた。
「よかったあ……。一時はどうなることかと思いました。ありがとうございます、ダイゴさん。」
「いやいや。じゃあ、気をつけてね。」
洞窟の出口で2人は別れた。
「ダイゴさん、優しかったな。また会えるかなぁ…。」
そうつぶやいたはまだ知らない。
2人の再会はわずか2日後。
そしてゆくゆくはストーカーに………