―――やだ、やだよう。

私、まだお兄さんに勝ってない。

出直すって約束したのに―――。

『ゴヨウ、分かったわよ!』

再びめぐってきた定休日の朝、わざわざゴヨウの自宅にシロナから電話がかかってきた。

「何がですか?」

『先週話したじゃない。ちゃん。分かったわ。』

「はあ……。」

『もう!“はぁ。”じゃないわよ!よく聞いて、ゴヨウ。ホウエンでチャンピオンやってるダイゴ君から聞いたんだけどね、
ちゃんは今16歳で、初めて私たちのところへ来たときは10歳。あのあとホウエンに帰ったけど、すぐに倒れたんですって。
何でも結構重い病気らしくて、お医者様に“もう今まで見たいな激しいバトルは難しい。旅や四天王への挑戦なんて、もってのほか”
だって診断下されたらしいの。』

「…………。」

そんな状況になっていただなんて、思っても見なかった。

大方、家族のもとに帰ったらシンオウに再び行く気が失せたのでしょう、やっぱり子どもですね……位に思っていた。

『でね、彼女は今ホウエンのミシロタウンって所で治療を続けながら暮らしているらしいわ。ねえ、ゴヨウ。行ってあげて。』

「……は?」

ゴヨウはシロナの言った事の意味がすぐには理解できなかった。

『だから、彼女の所へ。“嫌です”は禁句よ。これはチャンピオン命令!あのね……』


電話を終えると、ゴヨウはホウエンで唯一行った事のある場所、サイユウシティへテレポートで向かった。

頭の中で、さっきシロナから聞いたことが浮かんでくる。

ちゃんはね、病気が分かったときすっごく泣いてお医者様やご両親に訴えたんですって。
せめて、せめて、最後にもう1回、お兄さんの所へ行かせて。治りが遅くなってもいいから。だって、お兄さんに約束したの。
もう1回行くって、言ったの。お願いだから、お願いだから。そう、何度も言っていたそうよ。』

何故?

いくら悔しかったといえ、あの日の口約束だけで、そんなに?

何故?

何故、自分は今、彼女の所へ向かっている?

同じ疑問を繰り返しながらタウンマップの通り進み、ミシロタウンへ着いた。


「ここですか……。」

表札には、シンオウの人間であるゴヨウも聞き覚えのある、“オダマキ”の文字。

シロナがダイゴから聞いた情報が、もう1つ。

“オダマキ ” オダマキ博士の次女。

(よく考えたら……。)

彼女が今も、自分の顔を覚えているでしょうかか?

ひょっとしたら、自分は“忘れたい過去”になってやしませんか?

と、ドアの前でためらっていたら、不意に後ろから声をかけられた。

「うちに何か用ですか?」

ゴヨウは振り返り、はっとした。

……さん?」

記憶の中の彼女に、そっくりな少女がそこにいた。

だが、すぐに別人だと分かった。

現在の彼女は16歳、ここにいる少女は10歳前後。のわけがない。

「あ、お姉ちゃんの知り合いですか?私は妹の……」

少女――は急にゴヨウの顔や髪をまじまじと見た。

「……どうかしましたか?」

「ひょっとして、お兄さんはシンオウの最後の四天王の“お兄さん”?」

おそらく自分の事を言っているのだと思ったゴヨウは、

「ええ……。」

と言うないなや、

「おね、おねおね、お姉ちゃん!!」

に手を引かれ、家の中に連れて行かれた。


に案内された、の部屋。ゴヨウはまた、ドアの前でためらっていた。

は一緒にいない。2人で話をしたいだろうと、家にいた彼女達の姉がゴヨウだけを部屋へ向かわせた。

やがて決心がついたゴヨウは、ドアをノックした。

返事がもらえたので、部屋に入る。

を一目見たゴヨウは驚いた。

ベッドで体を起こしていた彼女は多少やせて、色白になっていたものの、面影は残っていた。確かに”彼女”だった。

ゴヨウを一目見たも、また驚いた。

「……お兄……ちゃん………。」

やっと会えた。彼女は嬉しさのあまり泣き出した。

ゴヨウは少し驚いたが、彼女の傍に行き、自分のハンカチを差し出した。

会ったら言おうと思っていた事が、いっぱいあった。

しかしゴヨウはこの瞬間、それらを全て忘れ、ただ一言だけを口にした。


「私の名は、ゴヨウといいます。」



初・夢小説。頑張りました。

ちゃんほとんど出てこないけど、ね。

ちなみに一箇所反転あります。

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