「あ、こんにちは、ゴヨウさん。」
「こんにちは、さん。」
ゴヨウが休日にの元へ来るのは、だんだんと恒例になりつつあった。
だが、はここ数回、ゴヨウの様子がおかしいと睨んでいた。
「ねえゴヨウさん。」
「なんですか?」
「最近何かあったの?」
ストレートにゴヨウに尋ねる。
「え?」
何故いきなりそんなことを尋ねられるのか全く分からず、ゴヨウは不思議そうな顔をする。
「だって、ゴヨウさん最近元気ないみたい……。」
のこの言葉は、ゴヨウにとって図星だった。
もっとも、元気のない理由は“最近何かあったから”ではないが。
「……何でもありませんよ。」
しかし、ゴヨウは得意のポーカーフェイスでそう答える。
「ウソ。」
は納得しない。
「だって、ゴヨウさん話してても時々さみしそうっていうか、辛そうっていうか、そんな顔してるんだもん。」
自覚していなかったことを指摘され、ゴヨウは二の句が告げずにいる。
は続ける。
「私じゃ、相談相手になれないの?愚痴を聞くぐらいなら出来ると思うよ。」
「………だ、大丈夫です。」
ゴヨウは声を絞り出し、そう言った。
「…………私、そんなに頼りない?……私が、健康じゃないから?」
の声が小さくなっていく。
「…っ、違っ……!」
いつの間にかの目に涙がたまっていたことに気付き、ゴヨウは“すみません”と詫びた。
「………聞いて、頂けますか?私の……懺悔を。」
「…………懺悔?」
ゴヨウはゆっくりと話し始めた。
「初めて会った頃のことを、覚えていますか?」
は頷く。
「あのころ私は16歳でしたが、既にシンオウ地方でチャンピオンの次に強い者だと世間に認められていました。」
は、だまってゴヨウの話を聞いている。
ゴヨウは続ける。
「チャンピオンのシロナさんに勝つため、日々修行をしていました。……私が勝てない相手は、いないと………思って…………
天狗に、なって、いました……。」
「そう………。」
「そんな時にあなたがやってきて、私は、自分より幼い、未熟なトレーナーだと思って………見下していました。」
は少しショックを受けたが、努めて顔には出さずに話の続きを聞く。
「ですが、あなたは私に対して、いつも笑顔で、真っ直ぐに向き合ってきました。
……私にはないものを、全部持っているように思えました。………今も。
私は、自分が恥ずかしい。さんを見ていると、天狗になっていた自分が汚いものに思えて、
今までの生き方がすべて間違いだったような気が……しました。」
ゴヨウの目からは、いつの間にか涙が落ち始めていた。
「あなたと一緒にいると、とても安らぎます。ですが同時に、そんな自分を自覚してしまって、
こんな汚い自分が嫌で嫌で………あなたに知られてしまったら、嫌われるかと思いました。
そんな考えもまた、汚いような気がして…………。」
は、手元にあったハンドタオルで、ゴヨウの頬の涙を優しく拭う。
「ゴヨウさんは、間違ってないよ。ゴヨウさん、優しい人だよ。」
「………?」
「ゴヨウさんは、私のところに来てくれた。いろんなお話とか、お薦めの本とか、美味しいお菓子とか持って、会いに来てくれたじゃん。」
穏やかな笑顔で、は続ける。
「間違ってたってゴヨウさんは言うけど、今みたいに気付いたんなら、それでいいんじゃないかな。
間違いに気付かなかったら間違いのままだけど、気付いたら、変わっていけるんじゃないかな。」
はっとした表情になるゴヨウ。
「ゴヨウさんが自分のこと嫌だって思っても、周りの人はそうじゃない。私は、ゴヨウさんと会えて嬉しいよ?」
優しい言葉に、ゴヨウはまた涙を流す。
は、まるで小さい子供をあやすみたいに、彼の背中を優しくさすった。
「恥ずかしいところを見られてしまいましたね………幻滅、していませんか?」
しばらくして落ち着いたゴヨウは、心なしか顔が赤いように思えた。
はそんな彼を見て、くすっと笑う。
「大丈夫。幻滅なんてするわけないよ。」
「……もう泣かないようにします。」
まだ恥ずかしそうなゴヨウ。
「なんで?泣きたい時は我慢せずに泣いたらいいと思うよ?」
「………いや、それはちょっと………。」
「恥ずかしいの?」
いったい本日何度目になるのか、ゴヨウの図星を突く。
「大丈夫、恥ずかしくないようにしてあげる。」
いっしょに泣いてあげるから。
ゴヨウはまだ少し恥ずかしそうだったが、そういって微笑んだにつられて、自然と笑みがこぼれた。
書きたかったゴヨウの懺悔。
頑張って書いたつもり……です。
相当いい感じになってきましたが、まだくっついてはいませんので、あしからず。