『ゴヨウさん、聞いて!私今度こそシンオウに行けるの!』

「本当ですか?」


嬉しい変化

ゴヨウとが恋人同士になってから数ヶ月が過ぎた。

2人が会う場所は相変わらずの家とその近所がほとんどだったのだが。

『うん、今度こそ大丈夫だってお医者さまに言われたんだ。』

ある夜かかってきたからの電話は、双方にとって嬉しいニュースだった。

「そうですか、それは良かった!」

普段はあまり自分の感情を表に出さないゴヨウだが、絡みとなると話は別。

自分が自然と笑顔になっているのが、鏡を見なくても分かった。

「いつ頃来られるのですか?」

出来れば仕事が入っていない時がいいとゴヨウは考える。

が前から行きたがっているミオの図書館に、一緒に行けたらきっと楽しいだろう。

『えっとね、もう決まったんだ。ちょっと急だけど来週末。上の妹がクロガネに行くから、途中まで一緒に行けるし。』

「来週末……。」

期待で膨らんだゴヨウの胸がしぼむ。

その日はリーグに挑戦者が来るのだ。

「……すみません、さん。その日は私仕事があるので、こちらで会うのは難しいかと……。」

『仕事?』

の言葉はゴヨウの想像とは違っていた。

『それってリーグ戦のことだよね?私、それ見たい!』

「え……え!?」

思ってもいなかった言葉を聞いたゴヨウは驚く。

『邪魔はしないようにするけど…ダメかな?』

「だ、駄目じゃないですよ。」

一瞬戸惑ったものの断る理由もないし、が楽しめるならそれが一番だとゴヨウは承諾した。

『わあ、やった!楽しみにしてるね!』


「……ゴヨウさんが珍しくそわそわしてると思ったら。」

「そんなワケがあったんスね。」

「そうなんですって。」

「あらあら、ゴヨウ君にもついに彼女が出来たのねぇ。」

自分以外のシンオウ四天王プラスチャンピオン、計4名のひそひそ話にも気付かず、ゴヨウは朝からあっちへ行ったりそっちへ行ったりと落ち着かない。

その割に午前中の挑戦者を全て倒した辺りはやはりゴヨウだと言える。

「……遅くないですか?」

ちゃんが?」

時間は現在午後2時。

「何時ごろ来る予定なの?」

尋ねられたシロナは、素直に抱いた疑問を返す。

だが、問われたゴヨウは。

「……そう言えば、聞いてませんでした。」

まさかの人物のまさかの大ボケに、その場にいた全員が「はあ!?」

と言った。

「何て言うか、冷静でしっかり者のあなたは何処へ。」

「て言うか、今どの辺なのか連絡して聞いたらいいじゃないのよ。」

「ああ、そうですね。」

はっとした様子でゴヨウは頷く。

と、ちょうどその時、遠慮がちにドアがノックされた。

「はーい。」

自然にドアの一番近くにいたリョウが開けに行こうとしたが、それより速くゴヨウがドアへ駆け寄り、開けた。

さん!」

「ごめんなさい、ゴヨウさん。遅くなっちゃった。」

例の少女の登場に、部屋にいた面々はわあわあ口々に感想を言い出す。

「あらー、大きくなって。おばあちゃんのこと、覚えてるかしら?」

「はじめましてさん、僕たちゴヨウさんと同じ四天王です。」

「うわー、可愛いじゃないスか!あ、俺オーバ!」

「あ、オダマキです。」

リナは彼らの勢いに少々面食らったが、きちんと自己紹介をする。

「ほらほら、みんな!気になるのは分かるけど、ちゃんはゴヨウに会いに来たんだから。それにそろそろ次の挑戦者が来る時間よ、初めの二人は配置につく!」

「はーい。」

シロナの鶴の一声に、一同はわらわらと持ち場についた。

「ごめんね、ちゃん。騒がしくて。」

「いえ、全然大丈夫です!」

「言った通り、そろそろ挑戦者が来ちゃうのよ。だからゴヨウもスタンバイさせないといけないんだけど……。」

「あの、私バトル観てみたいんですけど、観れますか?」

元トレーナーなだけあって、すでに目がきらきらと輝いている。

シロナはふっと笑い、控え室のモニターで観れると告げた。


「うーくそ、負けた!今日の奴強ぇ!」

「お帰りなさーい。」

ゴヨウの番まで後少し。

他の四天王たちには悪いが、はそれを楽しみにしている。

「本当強いね、この人。よく育ててる。」

リョウとオーバの二人はと年も近いので、敬語は使わなくていいということになった。

「あっ、ヤバいんじゃね?これ命中したら死ぬぞ、キクノさん。」

「あっ、外れた!」

「すごい、間一髪だね!」

3人とも必死でモニターにかじりつく。

「あ、また同じ技……あー命中した!」

「キクノさん負けちゃったか〜。」

「でも、いいバトルだったね。」

モニターがパッと切り替わり、ゴヨウの部屋が映し出された。

「ゴヨウさんだ!」

「あれ?何か緊張してねぇ?」

「本当ですねー。珍しい。」

オーバとリョウは冷静に分析する。

ちゃんがいるからかな?」

悪戯っぽくリョウは笑った。

「私?」

「あー、そうかも。朝からゴヨウさん、そわそわして落ち着かなかったしちゃんが遅いーってすっげえ心配してたし、本当ゴヨウさんはちゃんが好きなんだな。」

「え……」

とたんに赤くなる

「ゴヨウさんは本当、ちゃんに再会してからすっごい変わったんだ。前までただの冷たい人だったけど、最近柔らかくなったし。」

リョウも言う。

「そうなんだ………。」

ゴヨウがいい方に変化したのなら、それはとても良いことで。

その原因が自分ならば、これほど嬉しいことはない。

さらに、自分もゴヨウに再会したことがきっかけで、シンオウまで再び来れるほどに回復した。

「……私、ゴヨウさんに会えてよかったな。」

ぽつりと呟いた言葉はしっかり他の2人に聞こえていて、その後戻ってきたゴヨウ共々散々冷やかされた。


ゴヨウ×は「お互いがお互いの支え」的なカップル。
ちなみにイメージソングが「f/o/r/フ/ルー/ツ/バ/ス/ケ/ット」だったりします。

ポケモン部屋のトップに戻る。
2号館のトップへ戻る。 トップページに戻る。