「ヒョウタさん、大変です!炭鉱に入った人が1人、まだ出てきていません!」

「え!」

それは、一見平和な、ある日の夕暮れ時の出来事。

迷い子かと思いきや。

今週は珍しく、クロガネ方面への他地方からの観光客が多かった。

クロガネ炭鉱の責任者であるヒョウタは、彼らに炭鉱のいい所を知ってもらおうと、

普段の化石発掘作業を休みにし、炭鉱を開け放し、自由に入って見学できるようにした。

見学日最後の今日は1日に47人もの観光客が訪れ、ヒョウタや炭鉱夫たちは案内に管理に安全確認にと1日大忙しだった。

今日の入場者の名簿をチェックしていた炭鉱夫から報告が届いたのは、まさに仕事を終えて解散しようとしていたときだった。


「確かなのかい?ちゃんと確認した?」

「確認も何も、ほら、このオダマキって人だけ炭鉱から出たときに押すハンコが押されていません。

出口で俺が1人1人確認してたから、押さずに帰った……ってのもありえませんよ。」

確かにそうだ。

既に日は暮れかかっている。

炭鉱はただでさえ薄暗いのに、夜になったらどうなる?

自分達でさえ普段この時間にはなるべく作業を終わらせているのに……。

「中で道に迷ったのかもしれない。僕が探しに行く。みんなは外で待っていてくれ。 1時間探しても見つからなかったらいったん外に出て確認をとるから、もしオダマキさんが1人で出てきてもみんなはそこで待機して。僕に知らせる必要はないよ!」

自分より年上の炭鉱夫たちにテキパキと指示を出し、ヒョウタは中へと入っていった。


フラッシュを使いながら、奥へ奥へと進んでいく。

「道に迷うとしたら…このあたりの分かれ道か。でもここにはちゃんと立ち入り禁止の札がついているし……。」

1つ1つ、確認しながら進んでいくヒョウタ。

そうしているうちに、随分奥の方までやってきた。

「そろそろ、探し始めてから40分……。オダマキさん!オダマキさん?」

声を大にし叫びながら捜索を続けるヒョウタ。

と、その時。

「あれは……?」

20メートルほど先の壁の高い位置にあるくぼみに、誰かいるように見える。

「でもまさか、あんな高い所。僕たちだって登らないような所に……。」

そういいながらも気になったヒョウタは、慎重に壁を登る。


「……あのお……。」

怒りも、呆れも、脱力感も湧いてこなかった。

ヒョウタの頭に今浮かんでいるのは、大きな疑問符。

たしかに、くぼみに女の子がいた。

すやすやと、とても気持ちよさそうに昼寝をしている。

多分この子が、オダマキ

だけど、ねえ、何で寝ているの?何で寝れるの?

それ以前に、何でこんな所に登っているの?

「ん〜………。」

ヒョウタが起こそうとしたその瞬間、は目を覚ました。

「……あれ……?」


「ご心配おかけしました。ごめんなさい!」

が目を覚ましたあと、ヒョウタは彼女を探していた事を簡単に説明し、一刻も早く出たほうがいいと急いで炭鉱を出た。

ヒョウタから事の次第を聞いたは、出てすぐに彼と、2人を待っていた炭鉱夫たちに詫びた。

若くてかわいらしい少女が素直に謝ったのを見た炭鉱夫たちがたちまちご機嫌になったおかげで、大したお咎めもなかった。

……1人を除いて。


「………で?…、ちゃん?」

「はい…。」

「どうして君はあんな危ない場所に登って、しかも寝ていたの?危ないじゃないか。炭鉱の中だってすっかり暗くなっていたし。
僕だってまさかあんな所にいるとは思ってもいなかったんだから、君を発見できたのは奇跡だよ。」

「………ごめんなさい……。」

怒鳴りこそしないものの、口調と声色と表情から、ヒョウタが怒っている事は初対面のにも判断できた。

「あの、あたし、小さい頃から山や洞窟を探検するのが好きで、ああいった場所に行くとつい自分の部屋みたいに居心地よくなって、落ち着いて、気がついたら寝ちゃってるんです。 両親やお姉ちゃんたちにも“なおした方がいい癖”だって言われてるんですけど…。」

「はぁ………。」

ヒョウタの怒りが収まったのは、自分の態度がを怯えさせてしまったかもしれないという少しの後悔もあるし、

“探検好き”という部分に、少し興味をもってしまったからでもある。

「ここ、はじめて来たけど凄く素敵なところですね!」

自分の庭のような場所であるクロガネ炭鉱を褒められたヒョウタは、現金な事にもうすでに機嫌はほとんど直っていた。

「また来たいな……あ、あの、危ない場所には、行きませんから……。」

ヒョウタの表情が少し変わったのを目ざとく見つけたは、慌てて付け加えた。

「だ、ダメですか?ヒョウタさん……。」

おそるおそる聞く彼女を見たヒョウタは、ある感情を抱きつつ、こう言った。

「いいよ。その代わり、必ず僕に一声かけて。危ない場所に行きたいときは、着いていくから。」

「あ、ありがとうございます、ヒョウタさん!」


“そらをとぶ”でホウエンまで帰る彼女を見送りながら、ヒョウタはさっき抱いた感情が再び湧いてくるのが分かった。

「妹って、あんな感じかな。」



妹かよっ!!

まあ、出会ったばかりですし、今は妹的存在?

しかし、実際話書いたら凄い子になっちゃった、ちゃん。寝るんかい。サファじゃあるまいし。

最初にも書いたけどダイパプレイ経験がないので、矛盾点があったらば教えてくださいお願いします。


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