「いってきまーす!」
「お姉ちゃん、行ってらっしゃい!」
「頑張っておいでー。」
知る人ぞ知るオダマキ4姉妹。
長女である彼女――は、期待と緊張を胸に秘め、ペリッパ―に乗った。行き先は…
「ペリーさん、ルネシティ…って分かる?」
ペリッパ―は、”分かった”という合図に一声鳴き、空へ舞い上がった。
「ミクリさんって、一体どんな人なんだろう。」
彼女の向かう先は、ルネシティのルネジム。
今後の彼女の”職場”になるかもしれないところだ。
「もう着いた。…それにしても、何か変わった町だね。」
火山の火口にあり、”そらをとぶ”か”ダイビング”でしか来ることのできない町。
それがルネシティ。
「あそこだね、ルネジム。次はなみのりお願い!」
ルネジムは、町の真ん中にあった。
ジムに向かう途中、は町の女性達の会話を偶然耳にした。おそらく、彼女と同年代か、少し年上の。
「ミクリ様、今日も素敵ねぇ!」
「ジムリーダーの子たちが羨ましいわ、毎日一緒にいられるんだもの。」
「あの美しさは罪よ!」
(………本当に、どんな人なんだろう……?)
「失礼します!お邪魔しまーす!カントーのハナダジムからやって参りました!」
ジムを入ってすぐに大きな声で叫んだ。すると、奥から1人、男の人が優雅に氷を滑りながらのところまで来た。
「これはこれは、かわいらしいお嬢さん。始めまして、ルネのミクリです。」
の目の前までやってきた男性――ミクリはニッコリ笑い、そう自己紹介をした。
なるほど、確かに。さっきの会話どおり、そこら辺の女性より美しく、かといってオカマっぽいわけでもなく、
きれいな水色の髪と目。個性的な髪形と服装が多少気になるが、一言でいえば、”素敵な人”だ。
「ハナダジムからのお使いですか?それとも……。」
うっかりミクリに見とれたままになっていたは、ミクリに問い掛けられハッとなった。
「あ、申し遅れました!カスミの…カスミさんの紹介でやって参りましたオダマキです。ここで働かせてください!」
慌てて自己紹介をした。ミクリはと言うと、一瞬あっけに取られたような顔をしたが、すぐに再びニッコリ笑って、
「ええ、いいですよ。」
と答えた。
「……え?」
「え?」
「いや、あの。」
少しばかり”こんらん”気味な。
まさかこんなにあっさりと承諾してもらえるとは思っていなかったからだ。
「それだけですか?」
「それだけって?」
「もっと、こう、試験とか面接とかは…。」
「ああ、うちではしていないんです。私は来るもの拒まずですから、基本的に。」
「してない……。」
そうつぶやいたは、へなへなとその場に座り込んだ。さすがのミクリもこれには驚いた。
「ちょ、さん!?大丈夫ですか?」
「ち、力が…抜けました……」
言葉どおり力のない声では続ける。
「ルネジムはホウエンで一番レベルが高いから、難しい試験があったりして、ジムリーダーも怖い方かもと思って緊張していたので……。」
ミクリはまた少しあっけに取られた顔をしたが、やがて、
「ふ……。」
声をあげたかと思うと、クックッと笑い出した。
「ミ、ミクリさん〜。」
笑われた事に、思わず情けない声を出す。
「ふふ、すいません。取り越し苦労でよかったですね。」
そういうとミクリは、の手をとり彼女を立たせた。
「わっ……。」
が驚いてミクリを見ると、ミクリは穏やかな顔で笑っていた。
さっきまでの笑顔と似ている気もしたが、さっきまでのはどちらかというと”営業スマイル”だったが、
今は目の前の、年の割りに幼い少女を微笑ましく、かわいらしく思って自然と笑顔になっている。
「今日は定休日なので、初仕事は明日です。」
「えっ、あ、はい。」
「このあと何か用事はありますか?」
ふいに尋ねられて、は一瞬戸惑ったが、
「え、ない…ですけど。特には。」
「ポケモンコンテストを見に行きませんか?カイナシティで行われるハイパーランクの分なら、今から行けば間に合います。」
「え!?」
思わぬ誘いに、はまたしても驚いた。
そして、2人でカイナまで出かけ、は約8年ぶりのコンテスト観戦を楽しんだのだとか。
いきなりデート。
ミクリは書いてみたらこんなんなりました。