「ミクリさん、おはようございます!」
「おはようございます、さん。」
がルネジムのトレーナーになって早3ヶ月。
努力家の彼女は、今日のようにジムが休みの日でもちょくちょく来て、バトルの特訓をしている。
ミクリもまた、休みの日もジムに出てきて、バトル以外の仕事(主にデスクワーク)をすることが多い。
必然的に、この2人が一緒にいる時間は長くなる。
「ミクリさん、お茶飲みませんか?」
の手には、紅茶の入ったカップが2つ。
「ああ、淹れてくれたのですか?ありがとうございます。」
「あ、いえいえ。自分ののついでですから。」
2人は並んで据わり、カップに口をつける。
「調子はどうですか?」
「絶好調です!最近の挑戦者さんたちは強いから、私はもちろんポケモンたちもものすごくやる気になれて。
1週間で3匹とも、レベルが3も上がったんですよ!」
「へえ、それはすごいですね。」
笑顔で自分のポケモンのことを語るは本当に楽しそうで、つられたミクリも笑顔になる。
楽しい時間。
なんのひねりもないと言われたら否定できないが、今みたいにと2人で過ごしているこの時間にはこの言葉がぴったりだと、
最近ミクリは思うようになった。
が特訓をし、自分は仕事をし、
時々お互いに相手の特訓や仕事を手伝うこともある。
そして、2人一緒に休憩をとり、どちらかが淹れたコーヒーや紅茶を飲みながらジムやポケモンの話をし、
自分たちのポケモンにも食事をさせ、その様子を眺めながら
「あはは、ミロカロスって意外と食べる量多いんですね。」
「やはり体が大きいですからね。……それより私は、ペリーさんの食事の異様な速さが見てて面白いですね。」
「あごが大きいですからね〜。」
と言った、当たり障りのない会話をする。
そしてしばらくしてから、また特訓と仕事に戻る。
時々ダイゴや彼女の妹たちの乱入もあるが、それはそれでまた違った“楽しい時間”になる。
ミクリは、こんな時間をがこのジムに来るまで経験したことはなかった。
彼女以外のジムリーダーは全員、休日にジムに出てくることはめったになかった。
各々、プライベートの時間を大事にしているらしい。特訓も家でやっていると、以前彼女たちのうちの1人から聞いた。
もちろん、別に表立って問題があったわけではないが、
普段はにぎやかなジムで1人で仕事――というのは、時々ふっと寂しくなるものである。
そんな時彼は、ボールからポケモンを出して自由に遊ばせていた。
しかしやはり、自分以外の人間が誰かそばにいる、というのは何故か安心感がある。
そしてその誰かがだから余計にそうなのではないかと、ミクリは思う。
無駄にミクリに近寄ったり、むやみに仕事を中断したりせず、自分の特訓に精を出している。
(ずっと前、1回ジムトレーナーの1人が休日にジムに来たが、そのときの彼女の振る舞いはその真逆だった)
そして絶妙のタイミングでミクリを休憩に誘い、世間話をしてホッと和ませる。
じゃなければ、きっとこんなに楽しく休日を過ごすことはできなかっただろう。
しかし、1つ気になることがある。
「さん。」
「はい?」
ミクリはそのことを彼女に尋ねることに決めた。
「その、今日みたいによく休日に来てくれますが…大丈夫ですか?その、特訓に来ることでプライベートの時間が十分に取れないとか。」
は一瞬きょとんとしたが、すぐにいつもの笑顔で、
「大丈夫です!私、特訓好きですけど、他にやりたいことがあるときはちゃんとそっちを優先させてますよ。」
と言った。
「そうですか。」
「ええ。それに、ここでこうやってミクリさんと過ごすの、楽しいですし。」
笑顔のままで、彼女はそう付け加えた。
そしてそのまま、ポケモンたちと再び特訓を始めた。
「……そう、でしたか。」
彼女も自分と同じように、一緒に過ごす時間を楽しいと思っていてくれたこと。
そのことがミクリには不思議と嬉しかった。
ミクリのキャラはこんなんだったのだろうか。
他のジムトレーナーsがミクリスキーだということが見えてないような……。