「潜入調査ですか。」

「ああ、頼む。」

「畏まりました。」


再会


フリー忍者山田利吉が受けた今回の仕事は、ある城の調査。

隣国の城の姫を近々若殿様の嫁にもらうらしいが、その城は小国に戦を仕掛けようとしているという噂が流れている。

姫を溺愛している隣国の殿が不安に思い、調査のために利吉を雇った。

幸運なことに、丁度その城では新しい女性の小間使いを募集している。

もう一人フリーのくの一に声をかけたので、一緒に行ってくれとのことだった。

「畏まりました。」

利吉の隣でそのくの一が、同じように礼をした。

二人は部屋を出る。

「……お久しぶりですね、利吉さん。」

「……ああ、ちゃん。」

二人はお互いに笑い、改めて再会の挨拶を交わした。


利吉の父、山田伝蔵が長年教師をしている忍術学園。

は昨年までそこに通っていた。

そして彼女はくの一ながら伝蔵の担当する実技教科を6年間通して多く取っていたため、

たびたび学園に来ていた利吉とも自然と仲良くなった。

「まさか同じ仕事を受けるなんてね。」

「ええ、驚きました。」

城内の一室で、二人は仕事の打ち合わせをする。

「でも、利吉さんと一緒で心強いです。」

忍者の仕事はいつも孤独と緊張感に包まれている。

だけど、今回のように味方に知り合いがいたら、孤独の部分が少し緩和される。

「ああ、私もだ。」

よりプロ忍者としての経験が多い利吉も、心強いのは一緒だった。

「じゃあ、最終確認です。私たちは同じ村の出身で友人。」

「遠方から一緒に出稼ぎに来た利子と。」

「小間使いの仕事をしながら噂の真相を確かめる、と。」

「よし。」

確認を終えて立ち上がる。

二人は城をでた後、利子とになるため一旦別れた。


「お待たせ、。」

「利子。」

城への道中にある大きな松の木の下で落ち合った時には、利吉とではなく利子とになっていた。

「この道をずっと行けば、例の城だな。」

「ええ。」

周りに人はいないが、念のため二人は小声で話をする。

「じゃあ、行きましょうか。」

用意していた二人の設定に基づいた会話をしながら、城へと向かった。


、お疲れ様。」

あれから3日、今は休憩時間。

「利子、そちらこそお疲れ様。厨房は忙しいでしょう。」

「大丈夫よ、大分慣れたわ。」

小間使い用に与えられた部屋で二人は話す。

「そうそう利子、私と同じ部屋で働いている人が教えてくれたんだけど、ここから少し歩いたところにおいしくて安いうどん屋さんがあるんですって。今から行ってみない?」

「いいわね、行きましょ。」


「……で、何か掴みました?」

うどん屋の端の席に座り、素うどんを食べながら――は利子――利吉に尋ねた。

「いや、私はまだ目立った証拠は見つけていない。」

戦を仕掛けようとしているかもしれないという噂の真相を確かめるのが今回の任務。

「私もそれらしい話は今のところ聞いていません。」

「そうか、だがもう少し探ってみよう。」

「はい。」

雇い主の城主から与えられた期間は2週間。それまでにシロかクロかを判断する必要がある。

「じゃ、戻りましょうか。」

「ええ。」


「そうそう、私も聞いたのよ、戦がどーのって。」

(何?)

利吉の目が一瞬鋭くなる。

「嫌なこと言う人がいるもんだねえ、まったく。」

厨房で話をしているのは古参の小間使い二人。

「戦って……何ですか?」

「ああ利子ちゃん、利子ちゃんは聞いたかい?この城が戦を仕掛けようとしているって噂。」

「いいえ……。初めて聞きましたわ。」

「そうかい、もし今後町とかで聞いたら訂正しといてよ。」

「まったく、うちの殿様が戦なんて仕掛けるわけがないのにねえ。」

「万一血迷っても周りが止めるさ。」

「そうですわね。」


「私も似たことを家老の方々が話しているのを聞きました。」

そう言ったのは

「そうか。」

「ご家老だけならこっちの正体を怪しんでの嘘の情報、というのも考えられますが、厨房のおばさん方も言ってらしたのならその可能性は低いですね。」

「ああ。」

「武器庫にも必要最小限の銃しかなかったですし、シロですね。」

「そうだな。」

しっかりと確信を持って言うの意見は利吉のそれと同じものだった。

「…じゃあ村に帰りましょうか、。」

城を去るときの理由も予め考えてある。

二人は歩き出した。


「あー、ホッとした。やはり何日間も休み無しで利子の格好をするのは疲れるな、精神的に。」

報告も無事終わって報酬ももらい、今回の仕事が全て終了した。

「お疲れ様です、利吉さん。」

「君もお疲れ様。しかし腹が減ったな。」

利吉が空を見上げると、太陽はほぼ真上に位置していた。

「利吉さん、もしよかったらこれから学園に行きませんか?私も仕事の後、時々行くんです。今から行ったらお昼の定食の残りが食べられるかも。」

利吉が時々仕事のあとに学園に来て食事をとったり親子喧嘩をしたりしていた事を、はよく覚えている。

「……いいな、行くか。」

そう言って笑った利吉もも、ここ数日で一番の笑顔を見せていた。


忍者してる話は苦手です。大事な事なので2回言いました。

忍たま部屋へ戻る。2号館のトップへ戻る。 トップページに戻る。