2003年10月7日(火)
天才数学者たちが挑んだ最大の難問  アミール・D・アクゼル 早川文庫

フェルマーの最終定理を証明する道のりを書いた本。本来の意味はわからないが、1995年にアンドリュー・ワイルズが楕円理論のモジュラー性などを使ってフェルマーの最終定理の証明した、そこに至るまでのピタゴラス時代からの歴史と偉大な数学者の業績について書いてある。
ガウス、オイラー、フーリエ、ガロア、アーベルなどの数学者のエピソードは面白い。彼ら全ての業績の上に今回の証明が成り立っている。
すべての数は数直線上にある。無限に続く数直線上の数を扱う数論というのは、すごく哲学的なものだ。有利数と有利数の間に無理数があって、無理数の密度の方が高いらしいが、その中の自然数しか出てこないフェルマーの最終定理を証明するために、20世紀の数学の成果を総動員する事が必要だった、という事、それに反して定理の単純な形、最後にワイルダーが証明の詰めで天啓を得るところなど、すごく面白かった。
1994年9月19日にワイルズは最後の問題点を解く事になったが、その時彼は得た答えがあまりに美しく、単純でエレガントだった、と言っている。数学のすばらしさは複雑に見える事象を、数式を使って単純でエレガントな形で表すことかもしれない。数のように理論で作られた抽象の魅力は、分解すれば、単純でエレガントな形になる、という事か。