ドイツの戦争責任について、戦後の東西緊張の中でNATOの強化を狙うアメリカと、ドイツ人のホロコーストからの名誉回復、軍部の強化などの要因から、戦争責任とホロコーストは別、という考えが生まれ、悪いのはナチで一般のドイツ人は悪くなかった、というすり替えが行われた、という内容。
確かにホロコーストと第2次大戦の責任は一緒にはできないと思う。ドイツ人の立場になれば、自国民全体の罪とするには、ホロコーストは重すぎ、すり替えたい気持ちはわかる。
筆者の調査では、ナチに荷担した人たちも戦後は悪いのはナチ、という立場になっている、という口ぶり。ハリウッドの映画も一役買っており、ナチの親衛隊と対立するドイツ軍、というステレオタイプは見たことはある。ソ連に対抗するためにドイツ軍の強化を図りたいアメリカと旧ドイツ軍人の思惑が一致した結果、という事らしい。
ドイツは戦争責任を明確に認め、日本のようにうやむやではない、と思っていたが、彼らが認めたのはナチが行ったホロコーストに対する責任であり、日本で言う戦争責任ではない、ということがわかった。いろんな事がポリティカルバランスで動いている事が良くわかる本。
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