2003年11月11日(火)
社交界たいがい 山本夏彦 文春文庫

亡くなってから買ったが、この人の文章は簡潔で、きれがある。コラムの達人、といわれている。しかし、この人のコラムの本当の面白さはやはり内容にあると思う。何冊か読み、山本七平との対談なども読んだが、僕の常識を越えた視点がある。
朝日新聞を非難した件で、"正義と良心を売るのはもっとも恥ずべきことだと聖書にある"と書いてあったり、"産業革命以降、人間のしてきたことは、時間と空間を限りなく無に近づける事であり、今こそ哲学と宗教の出る幕だが、出る見込みが全くない、そもそも哲学や宗教に絶望して生じたのが機械信仰"であり、"ある種の動物が全地球を覆ってわがままの限りを尽くして許されるということはないのである"と書かれていたりする。
"自分の国の不利を招かないためにはサギをカラスというのが健康なのである。"正義が頭上にあると人はどんな悪いことでもする。"など、警句にあふれている。