数学の内容がこの本が書かれた1930年代に近づき、近代化してきたが、問題はギリシャ時代から連続している。
2000年以上をかけて数というものの不思議に取り組んできた人類(西洋人がメインだが)の叙事詩という感じである。数、というものが人間以前に存在しているものか、それとも人間が作り出したものと捉えるか、という二つの考え方があり、数学者のタイプは2つに分かれる、という事と、数学的発見をするときは、ある日突然のひらめき、というものがあるのだが、それを生み出すのは普段からの努力であり、それなしにはひらめきは得られない、という話が後半に出てくる。
珍しく、この部分は作者の考えが長々と吐露されており、最後になって自分の考えを訴えたかったのか。
数学者の名前で言うと、ボアンカレとか、カントール、クロネッカー、ブールなど。悲惨な人生を送った人もいれば、恵まれた一生を送った人もいる。運命を感じる。作者のE.T.Bellに感謝。
数学という学問は、一体何の役に立つのか、と思った時期もあったが、これこそ人間の自由な思考の成果であって、すごく哲学的なものだ。
2000年からの積み重ねが、一から崩れていく、という状況も出てきたりして、数、という自明だと思っているものに対して、無限などを考えていくと、本当にわからなくなる。
最後のカントールの無限の話は難しいが、面白い。一つの数直線の線分で、長いものと短いものは、同じだけ無限の要素を含んでいる、などという考えは、人間の精神の最高に自由な発想であり、数直線上の数がいったいどうなっているのか、という事を考え抜いた哲学、という事になるだろう。
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