以前実家で、何気なく文庫本を1冊借りて、家で読んだらやたら面白く、それから手あたりしだいに文庫を買って読んだのが田辺聖子。大阪弁の小説を書いたらこの人の右にでる作家はいないと思う。時々無性に読みたくなる。今回も会社の帰りに衝動買いした。
題名通り、昔の映画の思い出を綴ったもの。思いでの映画を順に語るのではなく、俳優ごとに章がもうけてある。洋画が多いが、邦画も紹介されている。僕も見たことがある俳優はオードリー・ヘップバーン、マリリン・モンロー、ジャン・ポール・ベルモンド、勝新太郎くらいだが、章ごとに映画のスチール写真があり、文章だけでなく写真も楽しめる。
田辺聖子の文章はすごくわかりやすく、情感があって、読んでいるとその映画を見てみたくなる。一つの映画を見てこんなに映画から感じとれるものがある、ということと、その時代の心の記憶の鮮やかさと、その説明のうまさに驚かされる。ビデオを借りに行く楽しみができた。
それにしても、作者がこの本を書いたときの年齢が70歳を超えていると思うのだが、すばらしい記憶力だと思う。一番印象に残った一言。「しかし人の青春にはいくつもスペアがあるものだ。年をとってみるとそれがよくわかる。」46歳で共感できるということは、僕も年をとったということだろう。 |