東野圭吾が面白い、という話を聞いて、本屋で物色。一番読みやすそうなのからいこう、ということで購入。
作者は間違いなく大阪人、という事が大阪弁のネイティブスピーカーならすぐにわかる。それほど大阪弁の話し言葉を正確に書いてある。やっぱり、先生はセンセである。
主人公は、25歳の、しのぶセンセという小学校のセンセで、生粋の大阪人、口も手も早い、という設定。五編の短編が入っているが、どれも面白い。
ところどころに大阪ならではの、ボケと突っ込みの会話も入り、ここは大阪弁がわからん人はわからんやろなあ、という優越感を感じながら笑える。
キャラクターの設定も良くできていて、子供も大人も、こんなんおるなあ、と思える。大阪のダウンタウン(僕はあまり行ったことはないが)という雰囲気が良く出ていると思う。
作品の中に、工場の組織の話があり、すごくリアリティがあって詳しいなあ、と思ったら、作者は生産技術のエンジニアとして会社勤めをしたことがあるとのこと。そらそやなあ、詳しいハズや、と納得。
解説を宮部みゆきが書いているが、土着の東京人である彼女は大阪弁が大好きで、東野圭吾の作品の中でも、これがダントツお気に入り、とのこと。「勿論ほかにも力作・傑作があるので、こう言うと著者はコケてしまわれるかもしれませんが・・・・ままよ、好きなものはしょうがないのだ。」と書かれている。
こういう本を読むと、「大阪弁がわかる」ということがすごくラッキーだと思える。
とかく、大阪はひったくりが多いとか、違法駐車が多いとか、色々と言われるけど、大都市の中では歩く速度が世界一(だったと思う)だったり、大阪弁を話せたり(当たり前か)する。
解説の中で、宮部みゆきが、
<大阪は、都市として膨れ上がりながらも、頑として「大阪」であり続けています。これが、関東がまだ泥と埃の僻地でしかなかったころから文化都市だったという、年季の強みでしょう。都市の気骨が違うのです。そして、そういう街とがっちりヘソの緒が繋がっている作家が、個性的で骨太でないわけがないのです。>
と書いている。
色々あるが、そういう一面もあるのだから、大阪はもっと誇りを持って、復活し、景気を良くしてほしいと思う。
中身より解説の解説みたいになったが、ミステリなので中身はあまり言えないから、仕方ないか。
とにかく、面白かった。これの続編があるので、そちらも読もうと思う。
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