2004年5月28日
大阪ことば学 尾上圭介 創元社
貸してもらって読みました。どうもありがとうございました。

作者は豊中・神戸で学生時代を過ごし、東大に行って、現在東大の文学部助教授。
大阪弁にひときわ思い入れがあるらしく、大阪弁がどのようにして人とのあいだの摩擦をさけるようにしているかとか、合理性があるとか、能率的であるとか、そのようなことが文法的に説明されていたり、音の変化がどのようにして起こってきたか、というような事が解説されている。

大阪弁は音としてはもっちゃりしている(母音が長い)が、話のもって行き方は回りくどいのを嫌い、たてまえを語らない。歩くのも速いが、しゃべりも速く、結論が遅いのを嫌う、などなど。
ふだん何気なくつかっている助詞(特に 〜ネン )の意味について、納得のいく説明がされており、わかりやすい。

最初の部分に、マスコミの質問に対して関西人が震災の時に答えた例とか、電車の扉に貼ってある注意書きとか、動物園の注意書きとか、色々と事例紹介があり結構面白い。
個人的には動物園の注意書きが一番面白かった。

文学部の助教授だけあって、文法的な解説は興味深いが、ちょっと大阪弁をほめすぎかな、という気がする。

大阪弁は合理的でないとかいう批判に対して反証をあげて反論しているが、何となく大阪人なら、どう批判されようが、大阪弁は大阪弁であり、ほっといてんか、というのが正しい?姿のような気がする。
何といわれようが、大阪弁はええねん、という鷹揚さが大阪弁のネイティブの態度ではないか。

うがった見方だが、きっと作者は東京暮らしで大阪弁を話すことで苦労したとかいう経験があったのではないか。そこまでほめんでも・・・という気もする。

でも、大阪弁の助詞について、こんなに詳しい解説は聞いたことがなく、その意味では勉強になる。

僕は神戸生まれの神戸育ちだから、生粋の大阪弁というものを知らないが、大阪弁ネイティブの人はだいたいにおいて、話が面白い。表現が多彩であることは間違いないと思う。

ちょっと大阪びいきがきついが、大阪弁を分析的にみたらどうなるか、という事を知りたければ、非常にためになる本だと思う。