この本はすごく売れた本だが、読みやすい本という感じではなかった。口述筆記の本であり、何となく本全体の脈絡が無い。でも、書いてある内容はよくわかる。
一部、面白かった部分を抜粋すると、
個性を美化するのはウソじゃないか、と考えるのが常識であり、若い人への教育現場において、お前の個性を伸ばせなんて馬鹿なことは言わない方がいい。
「知る」ということは、ガンを告知されて、あと半年の命、といわれたときに、桜の花が違って見える、というように自分が変わることを言う。
人生の意味は外部にある。「自己実現」というが自分が何かを実現する場は外部にしか存在しない。人生の意味は自分だけで完結するものではなく、常に周囲の人、社会との関係から生まれる。
赤ランプと黄ランプがあって、黄色が点いたときにだけボタンを押す、スピードは関係なし、というテストで、今の小学校高学年は30年前の低学年とほぼ同じ正解率である。この実験のポイントは抑制であり、今の子供は我慢ができなくなっている。
東大の口述試験で頭蓋骨を2つ置いて、違いを言わせたら、こっちの方が大きい、という答えしかできないバカ学生がいる。実物から物を考える習慣がゼロだ。
というような内容。
その他に今の教育について、辛口のコメントが書かれている。
それにしても、今になってこの人がこんなに売れるのは何故だろう。
タイトルの勝利だろうか。
人間の解剖を専門にしている作者は、人間、というモノをずっと物理的に見てきたから、いろんなことを考えられたのだろうか。世の中に、作者のような経験をした人はたくさんはいないだろうけど、人間をモノとして見れば、誰であろうがほとんど変わりはなく、いったい何をもめているのか?と思えるようになるのかもしれない。
人間は、実際の経験にすごく縛られるものだと思う。いくら自由に考えているつもりでいても、実際の経験からの影響は、ものの捉え方や思考のパターンに及ぶはずだ。何度となく人間の解剖という作業をしつつ、作者は何を考えたのだろうか。
バラしてみたら、みんな同じ、というところからバカの壁が見えるのか。
最近、「知る」こととか「人生の意味」とか、そんなことを書いた本ばかり読んではいるが、自分が本当にそれについて考えられてないことが実感できる。実感してもしかたないのだが。とりあえず、問題意識だけ、詰め込んでおこう。
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