2004年6月14日
毒笑小説 東野圭吾 集英社文庫
「あの頃ぼくらはアホでした」、「怪笑小説」に続く東野圭吾のエンターテイメント系。

個人的には怪笑小説の方が面白かった。毒笑小説の方がブラック気味の作品が多い。
お勧め作品は、「誘拐天国」、「手作りマダム」、「マニュアル警察」といったところ。

巻末に京極夏彦と作者の対談が載っている。
その中で作者は、筒井康隆を評して、「数少ない教科書」と言っている。やっぱり、筒井康隆を意識しているのか、と納得。

本を読んで笑う、というのは筒井康隆の作品が最初の経験だった。これにはびっくりした。本当に声を出して笑える本があるとは、それまで想像したことも無かったし、新鮮だった。
最近、「日本列島七曲り」を読み直したが、今読んでも面白い。このジャンル(勝手にエンターテイメント系、と名付けているが)は、その後あまり出ていないのではないか。
最近、エッセイでは、さくらももこで笑えたが、小説ではあんまり無いと思う。
田辺聖子の短編の中に、関西のペーソスの笑いがあるものもあったかな・・・。
その意味で、東野圭吾の本は良かった。

対談の中で、泣かせるより笑わせる方が難しいのに、お笑いを求めると評価されない、と京極夏彦も東野圭吾も言っている。どういうわけか、笑いというのは小説ではランクが下になるそうだ。

二人とも、笑いを求めて書く場合は、一気に書かないとダメ、テンションが下がってしまわないうちに書き終える、という事らしい。
そうやろなあ。
笑い、という感情はテンションの上がり下がりの中で生まれ、その変化が大きいほど笑える、というものだろうし、活字で笑わすというのは、話をして笑わせるよりも、つぼが狭い(スイートスポットが小さい)と思われるので、よほど乗って書かないと、うまくいかないんだろうと思う。
その乗りをキープするためには、長編ではしんどいのかもしれない。

関西系のこの手の作家がもっと出てきて、笑えるのを書いてくれたらいいのだが・・。