2004年7月24日
人生について 山本七平 PHP文庫
前にも書いたが、山本七平と見れば、手当たり次第に本を買っていた時期があって、実はまだ読めていない本がある。この本はその中の一冊。1997年9月15日第一刷となっていた。

この人はあまりエッセイの類を書いていないと思うのだが、この本は珍しくエッセイ集である。
全体が3つのパートに別れており、最初は自分の生い立ちから、終戦後フィリピンで捕虜になり、復員するまでの事が書いてある。
他の著作で第二次大戦の事はたくさん書いているが、どれだけ時間が経っても書かずにおれないほどの体験だったんだろう。第二次大戦のことを知っている人はどんどん減っているが、もっと活字として残すべきだと思う。

2つめのパートは、主に食べ物と宗教のこと、3つめのパートはまさに人生のことや自分のものの見方など。

いずれも、山本七平を知っている人が読まないと、さほど面白くないかもしれない。

期せずして、2冊続けて戦前の事を書いた本を読んだ。僕らの戦前観は、簡単に言うと、閉鎖的で暗く、軍国主義で、悪い時代というものだろう。特高警察や徴兵制度など、昔テレビのドラマなどで見たもののイメージが強く、それがすり込まれている。敗戦によってそれらを否定し、アメリカの助けを借りて民主化をして、明るく生まれ変わったのが戦後の時代、というのが普通の見方だと思う。しかし、このごろ、戦前が100%悪かったという事もないだろうという気がしている。

歴史は連続しているし、人間が終戦を境にころっと変わってしまったわけでもないだろう。確かに帝国主義から民主主義へという、歴史の必然ともいえる変化は良いことだろうが、戦前が全て悪かったというには、戦後の今が悪すぎるように思えて仕方がない。

少なくとも、今よりは社会に秩序があって、みんなに共通の「良いもの」というのがあったように思うのだが・・・。
(もちろん、戦後の良いところはたくさんあるんですけど)

日本の繁栄を作り、少なくとも現在世界でトップレベルの生活が出来る国にした人たちというのは、戦前生まれの人たちだろう。だから、その人達が生きている間に、もっと戦前と戦後の比較を語って、知恵として残すべきではないかと思う。その知恵は、きっとこれからの世の中に役に立つはずだ。もうあまり時間が無いけれど。