2004年8月29日 |
あなたに成功をもたらす人生の選択 オグ・マンディーノ PHP文庫 |
原題はThe Choice、「選択」である。 この本は作者の自伝に近いらしい。 元々保険会社で働く優秀なセールスマンであったが、色々と精神的な事件があって、幼い頃の夢である作家になる、という事を実現するというもの。もちろん、人生をどうしたら良いものにできるのか、という本を主人公が書き、それで大成功をおさめるのだが・・・ そこにミステリアスな老作家や「神」が出てきて、彼の人生で究極の選択を迫られる・・。 読みやすい小説で、成功哲学を説く人はやはり成功した人なんだ、という当たり前の事に気づく。 ただ、彼の成功物語には自慢や見栄などの嫌みが全くなく、より良い人生を選択すれば自ずと成功する、という確信のもとに書かれているためか、読んでいてうれしくなる。 このところずっと、オグ師の教えを請うてきた。読んだ直後はすごく感激して、それなりの事を考えるのだが、日常生活に埋没してしまうと、読んだときに感じた事が飛んでいってしまう。 この本の中に出てくる老作家も、その事を指摘していた。 「・・・結局私や君が書いたような本のすべてが、やがては本棚の隅に追いやられ、埃にまみれて、いつしか完全に忘れられてしまうことになるんだ。・・・彼らは、どんなにいいことを聞いても、すぐに忘れてしまうんだ。そして、試みることをやめてしまう。もともと人間にそれ以上のことを求めること自体が、誤りなのかもしれない。・・(中略)・・そんな連中に対して、私たちが成功の原則を長々と述べたてたところで、いったい何になると思う?人類は、救済される価値なんてないのかもしれない。そんな人類を救おうとする試みなんて、私には、全く無意味に思えるけどね」 これに対して、主人公は、 「・・・私は、個人的には、救済されるに値する人びとは、決して少なくないものと信じています。私は、あなたが人殺しを一人指摘するごとに、他人を救うために自分の命を投げ出した人物を、少なくとも一人は指摘できると思います。また、あなたが泥棒を一人指摘するならば、それに対して私は、たとえどんなにお腹が空いていても、パン一切れさえも盗もうとしない人々を、千人は探し出して見せます。 いかなる人間の中にも、あるとても特別な成分が存在しています。私たちは、それを見ることもできなければ、触ることもできません。しかし、それは間違いなく存在しています。そして私は、その成分をそこに配置したのは神であると確信しています。私たちは、これまで、その特殊な成分を、魂、霊、光、あるいは輝きなどという名で呼んできました。その神からの贈り物を何と呼ぼうと、そんなことは問題ではありません。問題は、たとえ何と呼ぼうと、その不思議な力を持つ成分が、現在、大多数の人々の内部で、極めて不活発な状態で存在している、という事実です。 ・・・(中略)・・・ 彼らのすべてを救うことは、もちろんできない相談です。それは、かつてこの地球上を歩いた最も偉大な教師<イエス・キリスト>にさえ、できなかったことなんです。私たちにそれができないからといって、がっかりする必要なんか全くないんです。私たちにとって重要なことは、試みることです。そして一人でも多くの人間を、あるいは、たとえ一人だけであっても、その人間を静かな絶望の中からはい上がらせ、より大きな可能性の追求に向かわせることができたならば、それで私たちは、十分に満足していいのではないでしょうか・・・・私はそう考えています。」 そういう事なんだろう。 徹底した性善説。本のことを忘れても、答えは自分の中にある、気づきなさい、ということか。 最後に、たくさんの聴衆を前にして、主人公は演説をするのだが、その中でこう言っている。 「・・・私は、より良い人生を選択する! 私の幸せの追求の旅は、もはや完全に終了した。これまでの私の、なんと愚かだったことか!今私は知った・・・幸せは、新しい家、新しい仕事、新しい友人などの中に隠れているものではなかったのだ。それはまた、決して売り物などでもない。自分自身の内側に満足と安らぎを発見できない者は、それを求めて他のいかなる場所を探し回ったとしても、ただ時間を浪費するのみである。幸せを外側に求めたとき、手にできるものは落胆のみである。・・・それは手を伸ばしてつかみ取るものなどでは決してない。それは、自分がすでに与えられているもの、および、自分が新たに与えられるものの一つひとつを、感謝とともに、心から喜び、楽しむことに他ならない。・・・」 またまた引用が長くなったが、自分の中にそういうものがあるのか? それを考えないといけない。 幸せとは何か、考えてみたい人にお勧めします。 オグ・マンディーノを何冊か読んできたが、この人が全世界で人気があり、いまだに本が売れ続けているというのは、よくわかる。 この人の説いているのは、あくまで自分が満足できればそれでいい、というものではなく、やっぱり成功する、という事だと思うし、だからこそ人気があるんだと思う。 成功には当然経済的な事も含まれる。それがすごい事だ。 利他主義や自己の内なる良きものの声を聞いて、前向きになることと、”成功”というものを結びつける、というのは、アメリカン・ドリームの哲学だと思う。(そんな単純な言い方をすると怒られそうだが) そういうものが今の日本にも必要だと思うし、この人の本がもっと読まれてもいいと思うが、何といって良いのかわからないが、日本の伝統的な和の考えとか神との契約というような概念が、わかるためのハードルになるのではないかという気がする。 すでにオグ・マンディーノさんは亡くなっているが、いい人に会えて良かった。 |