どこかの書評を見て、面白そうだったので購入。
この手の本もよく買ってしまう。
あとがきによると、作者はかなり古い人で、1886年生まれとなっている。
広告代理店で働いた後、42歳で引退し、シカゴ大学で経営史と広告の教授として働き、その時にこの本を書いたとのこと。
という事は、数十年前の本ということになるが、内容的には全く古いとは思わない。非常に薄い本で、1時間で読める。字も大きく、老眼鏡無しでも読める。
内容は、題名の通り、新しいアイデアをどうやって着想するか、という方法論。
この本を参考にしたのかどうかはわからないが、渡辺昇一の「発想法」という本の内容を思い出した。エッセンスとしては同じ事を言っているんだと思う。(この本はその中の肝の部分を書いてある。)昔の本では、川喜田次郎の「発想法」という本もあった。(有名なKJ法の生みの親)
「数学を作った人々」の3巻目にも、どうやって新しい数学的発見をするのか?ということについて、同じような事が書いてあった。この作者も、「数学を作った人々」に出てきた、数学者ボアンカレの「科学と方法」という本を参考図書として巻末に挙げていた。
面白いと思ったのは、この人のアイデアに関する定義。「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない、ということである」という部分。新しいアイデア(=発見)といっても、それはバラしていくと既存の要素の新しい組み合わせになるのかもしれない。
また、資料集めの部分で、アイデアを探している領域の知識も大事だが、「一般的知識をたえず豊富にしようとすることから生まれる資料」の両方が必要、と書かれていた。やっぱり、広く色々な領域で問題意識を持ち続けることが大事なんだと思う。一つの専門領域だけではなく、幅広い知識がないと、新しいアイデアは生まれない。
アイデアの材料を集めた後は、いったんそれから離れ、無意識に任せる、というのは本当にそうだと思う。朝トイレですごくいい考えが浮かんだりするのは、寝ている間に無意識が考えているからだろう。(ただ、この手のヤツはすごくいいと思って後で見たらたいしたことがなかったり、トイレから出て顔を洗ったら忘れてしまった、というケースも多い。本に書かれているものとはレベルが違いすぎか?)
本の後半に、長い解説を、物理学者の竹内 均という人が書いている。
作者には悪いが、こちらの方が面白かった。
この人は20年間で280冊の本を書いた、とのことであるが、その方法を述べた後で、重大な注意事項として、次のように書いてある。
「最後に一つ、重要な注意事項がある。それは方法論や道具に凝ることなく、直ちに仕事を始めよということである。方法論についての議論の最後にこういう事を言うのは、ややぶち壊しの感じがする。しかし私はそれを言わずにはいられない。世の中には方法論や道具だけに凝って、結局何らの仕事をしないでしまった人が大部分である。ワープロやコピーやパソコンが容易に手に入るようになった最近では、この傾向が著しい。私の考えでは、@好きなことをやり、Aそれで食べることができ、Bその上それが他人のためにもいささか役に立った人生が自己実現の人生であり、理想の人生である。方法論や道具はそのためのものであり、本末を転倒してはならないのである。」
計画を立てたら、半分以上終わった気になったり、道具にこだわったりする自分としては耳が痛い。
道具よりも実践。
よく考えないと。
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