2005年2月6日
脳ミソを哲学する 筒井康隆 講談社+α文庫
1995年に発行された本を2000年6月に文庫化したもの。その時に買って、読まないまま積まれていた。こないだ本棚の整理をしていて発見。

筒井康隆がさまざまな科学者と対談している。対談相手は、科学哲学者、解剖学者(養老孟司)、動物行動学者(日高敏隆)、数学者(森毅)、気象学者、理論物理学者など。日高敏隆との対談が載っていたので買った、という事を思い出した。

対談の中に出てくる、動物行動学者の日高敏隆の本は面白い。何冊か読んだが、人間とは何かを考えさせられる。そうそう、日高敏隆との対談があったので買ったんだった。積ん読になってしまっていたが、見つけてよかった。

この本は、動物学者を父に持つ筒井康隆が、的確な突っ込みを入れて、それぞれの専門の科学者の対談を通して、1995年当時の科学の先端を紹介するとともに、各々の分野の専門的な部分をわかりやすく語らせている。

養老孟司との対談の中では、なぜ人間が世界中に広がることが出来たのかという事について、二足歩行の方が四足歩行よりもエネルギーが少なくて済む、という解剖学的理由が説明される。

日高敏隆の対談では、現在の生物学の先端は、生き物そのものを見るのではなく、ミクロの部分であるDNAやゲノム、タンパク質の研究などになっているが、そこの学生にチョウの行動について話をしたら、自分のやっていることの意味がわかって、初めて生物学の最先端に触れたような気がした、という感想があったとのこと。ミクロを見ても、総体を忘れないこと、という事が語られる。

数学者の森毅は、数学で大成するためには、わからないことに耐える力がないといけない、との話がある。これは仕事でも同じだと思う。全てをわかった上でやろう、などという事は実際の世界では難しい事であり、少々わからなくても、それに耐えてとにかくやってみるとか、わからないまま置いておくとか、そういう能力は大事だと思う。

気象学者との話を読んでいると、1995年の時点で、既に人間がどれだけ環境を変えているかということに驚かされる。フロンガスによるオゾン層の破壊など、これからまだまだ影響が進んでいくとのこと。今年の台風ですごい風が吹いたが、これは成層圏にあるオゾン層が破壊され、空気の対流が成層圏にまで及んでいるという事が考えられるらしい。

現代の科学がやっていること、科学者が考えていることというのは興味深い。やっぱり一流の人なんだろう。

最後に立花隆との対談の中で、科学が細分化されてきており、これからは視野の広いトータルに考えられる学者が必要だ、という話になっている。それが「宇宙船ビーグル号の冒険」というSF小説の中に出てくる、総合科学者というようなものらしい。

長いことSF小説も読んでいないが、「宇宙船ビーグル号の冒険」はおもしろそうなので読みたくなった。