数学を作った人々という本を読んでから、そちらの方向に興味がわいて、何冊か読んできた。
この本は少し難しい。
巻頭に、本の中に出てくる数学者たちの肖像画や写真が載っているが、みんなかしこそうに見える。本を読んでから、彼らの顔を見ているからかもしれないが・・。
数というのは不思議なものだと思う。
1,2,3・・と数は存在する、と最近まで思ってきたが、よくよく考えてみると「数」というモノはどこにも無い。
1本の鉛筆とか、2個のリンゴとか、クルマのナンバーは1234とか、生活の色々なところに当たり前のように「数」は出てくるが、それは単に鉛筆であり、リンゴであり、刻印されたナンバープレートでしかなく、実体のある「数」というものは自分の頭の中にしか無い。
宇宙に人間がいなければ、「数」も存在しないという事だろう。
定規で1本の線を引いて、そこに目盛りを入れて、1,2,3と入れていくと、数直線ができる。
すでに、引かれた線の上の1と2の間には有理数や無理数が「無限に」存在する(もちろん、頭の中にだが)。
この線を伸ばしていくと、どんどん数が増える。それには終わりがない。1と2に間に、すでに無限に数があったのに、その先も延々と続く事ができる。3をちょっと過ぎたところには、おなじみの「円周率(π)」がいる。こいつは、3.14159265・・・と永遠に続く数の仲間である。おまけに、この「数」は分数ではあらわすことができない。
たった一本の直線だが、数の不思議を考えると、何となく深遠な気分になる。誰が発明したのかは知らないが、この「数」というのは人類の発明の中でも、トップに名を連ねるものだと思う。
大きな数では、億とか兆とかいう数まではなじみがある。それを超えると、ちょっと想像ができなくなってくる。
本の中に出てきたが、宇宙の原子の総数は10の80乗くらいの数らしい。10を80回かけ続けた数だ。
本当かな?と思うが、とにかく、すごく大きな数である。
ところが、この本に出てくるリーマン予想(これ自体は素数の現れる頻度に関係している)で問題になる数というのは、10の10の10の1万乗乗というような途方もない数である。
10を一万回かけた回数だけ、10をかけ算し、その回数だけ10をかけ算するという数である。
億とか兆とかいうどころの話ではない。
どうも、その数あたりまではリーマンの予想は正しそうだが、そこらあたりから上になると、どうなるのか?というような事らしい。
もちろん、今の計算機の能力をはるかに超えたところである。
何の役に立つのか?という思いより先に、そこまで思考できる人間の脳に感心する。
(実際にはこの予想が正しいと証明されれば、暗号化通信などの分野で進歩が期待されるとのこと。)
リーマンという数学者が1859年に出した論文の中に書かれている予想は、「ゼータ関数の自明ではない零点の実数部はすべて1/2である。」というもの。これ自体、何のことかさっぱりわからないが、作者が繰り返し色々な方向から説明してくれているので、この本を読むと、リーマン予想は素数がどのように分布しているかという事について言っている、ということはわかる。
「もちろん今日では、1859年にわかっていたことよりも多くのことがわかっている。それでも最初にこの論文で立てられた大きな難問は、世界で最高の頭脳による攻撃にも耐えて、まだ解決されずに残っている。」
ということである。
作者は現在の数学者に、リーマン予想について、正しいか間違っているかという質問をして回っている。
一番気に入っている答えは、「正しいか、そうでないかいずれかですよ」とのこと。
本の前半は素数についての話で、比較的わかりやすいが、中盤〜後半にかけては難解である。
ただし、数学の部分と、それに関連した人々の伝記に類した部分が交互に出てくるので、このリーマン予想という難問に立ち向かった人々の歴史を読むだけでも面白い。
アメリカではこの本がハードカバーで8刷を重ね、ペーパーバックでも出ているほどの人気とのこと。
ちょっと驚いた。
後半は半分もわからず、読んだだけのところもあるが、とにかく日常からはるかに離れたところまで行って、頭の体操ができた。まだ、この手の本は読み続けるつもり。
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