2005年5月3日
薔薇の雨 田辺聖子 中公文庫

こないだ本を整理していたら、いつの間にか一番多くなっていたのが田辺聖子の文庫本であることがわかってしまった。自分でもびっくりするほどたくさん持っている。それだけこの人がたくさん書いているという事なんだろうけど。

連休で、特に何もない時などは田辺聖子の読みどきである。

この歳になって、本屋で田辺聖子の本を買うのは何となく気恥ずかしいのだが、好きなものは仕方がない。
若い頃は、いかにも頼まれて買いました、という顔をして買っていたが、そんなことを本屋のレジの人がわかるわけもない。この頃は開き直って、自分で読みますという気合いを入れているが、それとて本屋にとってはどうでもいいことだろう。要は、好きなものは好きなのだ。

源氏物語も、枕草子も田辺聖子で読んだ。特に源氏物語は面白かった。これが平安時代に書かれた小説なのか、と感心した思いがある。

薔薇の雨は1989年に発表された短編集。
エッセイも多いが、基本的にこの人は恋愛小説を書く人だ。
ペーソスにあふれる中年ものも書いているが、それらもたいがい男女のからみである。
この本を書いたときに、すでに60歳を超えているのだが、それでも恋愛ものが書けるというのはすごいエネルギーだと思う。

しんそこ悪い人は出てこないし、民放のテレビドラマのような無理やり作ったようなセリフもない。
とにかく、いい話なのである。
自分の身に起こることはないにしても、読むと元気になる。
60歳を過ぎてもこんな小説を読んで、面白いと思えれば、幸せだと思う。

ピンク色を基調にした装丁で、表紙に薔薇の絵が描かれている本を買うのは気が引けるが、やっぱりいいものはいいのだ。
5つの物語はいずれも若くない男女のお話。
興味のある方は一度どうぞ。

これはやめられない。