2005年12月29日(火)
やっつけ仕事で八方ふさがり ジャネット・イヴァノヴィッチ 扶桑社ミステリー

ステファニー・プラムのシリーズ。8作目。
これで、今出ている邦訳版の文庫は読んでしまったので、9作目の文庫化を待たないといけない。

作を重ねるたびに、ステファニーが生き生きとしてきて、脇役も面白いキャラクターが出てきている。
今回は、へっぽこの弁護士が大笑いさせてくれる。

少しネタバレするが、ステファニーが公園の池のガン(鳥のガンである)に襲われる場面を紹介する。

「あたしは水際までの短い距離を歩き、クラッカー・ジャックの箱をあけた。一羽のガンがあたしに突進してきて、膝をくちばしでつついた。あたしは飛びすさったが、ガンはガアガア鳴きながらくちばしをくりだし、あたしに迫ってくる。あたしはクラッカー・ジャックをひとつ、できるかぎり遠くに投げた。ガンはそれを追って猛然と走っていった。大間違いだった。とたんに、クラッカー・ジャックをひとつ投げることは、ガンたちへのパーティー招待状に等しいことが判明した。突然、公園のあらゆる場所からガンたちがあたしめがけて突進してきた。鈍くさい水かきつきの足を猛然と動かし、太った尻を振りながら、大きなガンの翼をばさばさいわせて走ってくる。ビーズのような黒い目玉はあたしのクラッカー・ジャックの箱にひたと据えられていた。あたしめがけて走ってきながら、ガアガアギャアギャア鳴き声をあげ、獰猛に身体をぶつけあってわれ先にと先陣争いをしている。
「生命が惜しかったら逃げるのよ、あなた!そのクラッカー・ジャックをやりなさい」近くのベンチから、老婦人がどなった。「箱ごと投げるのよ、でないとそのうるさい鳥どもに生きたまま喰らわれちゃうわよ!」
あたしはしっかりと箱を握りしめた。「まだおまけを取ってないのよ。箱のなかにまだおまけが残っているの」
「おまけのことは忘れなさい!」・・・

この後、ステファニーは大変なことになるのだが、格好悪いが素敵なハードボイルドのステファニー・プラムの一面である。
「まだおまけを取ってないのよ」という言葉が、ステファニーらしくて、笑ってしまう。

本国では既に9作目が出ているとのこと。
早く邦訳されて文庫になるのが待ち遠しい。