田辺聖子らしいエッセイ集。
昔は、「カモカのおっちゃん」シリーズをよく読んだ。
このエッセイ集にも、夫であるおっちゃんが時々出てくるが、病気になってから書かれたようで、それほど登場しない。
おっちゃんの代わりに、飲み友達たちが出てくる。
人生における、いろいろなテーマについて、警句を交えながら、時には軽妙に、時にはじっくりと筆を進めている。
「寝首」という題で、「神サンは人間の思う通りに動いてくれない」ということから、
神サンは人の寝首をかく。
という警句(アフォリズム)を作り、<ま、こんなトコやな>という関西弁のひとことに、人間の強さを感じている。
「 ともあれ、<ま、こんなトコやな>には、自分というものを客観視して、それなりに評価している色合いがある。<神サン>は<やんちゃ>であるからききわけがない。<泣く子と神サンには勝てぬ>というところだ。しからばこっちの、大人側としては、できる限りの手は打つものの、ある点までくると、
<ま、こんなとこやな>
とうそぶいていなければしょうがないだろう。そして自分の頭を撫でてやればよい。」
このひとの文章は、読みやすいし、読んでホッとする。
70歳を過ぎても、恋や異性について、面白い考察が書いてあったり、生きていくことのしんどさや、人間関係の難しさなどを、実際に思い当たる例をひいて書いてある。
夫であるカモカのおっちゃんを亡くしてしまったが、長生きして、もっと書いてほしい。
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