2006年1月28日
人生は、だましだまし 田辺聖子 角川文庫

田辺聖子らしいエッセイ集。
昔は、「カモカのおっちゃん」シリーズをよく読んだ。
このエッセイ集にも、夫であるおっちゃんが時々出てくるが、病気になってから書かれたようで、それほど登場しない。

おっちゃんの代わりに、飲み友達たちが出てくる。

人生における、いろいろなテーマについて、警句を交えながら、時には軽妙に、時にはじっくりと筆を進めている。

「寝首」という題で、「神サンは人間の思う通りに動いてくれない」ということから、

 神サンは人の寝首をかく。

という警句(アフォリズム)を作り、<ま、こんなトコやな>という関西弁のひとことに、人間の強さを感じている。

「 ともあれ、<ま、こんなトコやな>には、自分というものを客観視して、それなりに評価している色合いがある。<神サン>は<やんちゃ>であるからききわけがない。<泣く子と神サンには勝てぬ>というところだ。しからばこっちの、大人側としては、できる限りの手は打つものの、ある点までくると、
<ま、こんなとこやな>
とうそぶいていなければしょうがないだろう。そして自分の頭を撫でてやればよい。」

このひとの文章は、読みやすいし、読んでホッとする。

70歳を過ぎても、恋や異性について、面白い考察が書いてあったり、生きていくことのしんどさや、人間関係の難しさなどを、実際に思い当たる例をひいて書いてある。

夫であるカモカのおっちゃんを亡くしてしまったが、長生きして、もっと書いてほしい。