ステファニー・プラムのシリーズの番外編。
タイトル通り、クリスマスのために書き下ろしたものらしい。
謎の男が突然部屋に現れる、ファンタジー仕立てになっている。
ステファニーはハードボイルドだと思うが、他のハードボイルド主人公と違うのは、実家があり、故郷があり、家族があり、トモダチがあること。孤独なハードボイルドではない。
でも、逃亡者逮捕請負人(バウンティ・ハンター)として、事件を追いかける気概はハードボイルドだと思う。
ただ、家族やトモダチがおもしろすぎるのだが…。
この番外編は、クリスマスが舞台で、シリーズ本編とはおもむきが違う。
アメリカ人にとって、クリスマスは日本人よりも特別な日だろうし、その時期は冬でも暖かい雰囲気になるんだろうと思う。
ステファニーの家庭への思いがこもった部分をひとつ、紹介する。
「死ぬときに何かひとつ持っていけるとするなら、あたしは母さんのキッチンのにおいを選ぶ。朝はコーヒーを淹れるにおい、二月の寒いに日にキッチンの窓を曇らせる紫キャベツとポット・ローストのにおい、九月にカウンターにのっている熱々のアップルパイのにおい。こんなことを言うとダサいと思われるかもしれないが、そうしたにおいはあたしにとって、親指や心臓と同じくらいに自分の一部であり、現実味のあるものなのだ。あたしがはじめてパイナップルのさかさまケーキのにおいをかいだのは、母さ
んの子宮にはいっている時だったと、誓って言える。」
ほのぼのとした気持ちになれる、いい物語だった。
でも、本編を読んでないと、わからないネタもあるので、この本からステファニー・プラムのシリーズに行くのはやめた方がいいと思います。
これで文庫になっている9冊全部読んでしまった。
次が待ち遠しい。
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