第2部「神話」
「ドゥアド」:古代エジプトの宗教的な文献としては、有名な「死者の書」など、死者の埋葬と復活を説く古代テキストと呼ばれるものがあります。その中でもとくに謎に包まれているのが「ピラミッド・テキスト」と呼ばれるものであります。このテキストこそがピラミッドとスフィンクスの謎を解く重要な鍵だとされています。宗教的文献の中に「死者の世界」とその象徴を表す言葉として「ドゥアド」という言葉があります。しかし「ピラミッド・テキスト」において「古王朝時代(ピラミッド時代)につけられた意味からみると、「ドゥアド」は「未来の黄泉の国で、天空に存在する」と考えられます。ピラミッド・テキスト151節には次のようにあります。

この意味は明らかだとあるエジプト学者はいいます。「太陽が地平線で清められるとき(ヘルカル。ライジング)、王と同一視されたオリオンとシリウスの星がドゥアドに覆われる。」これは実際の天空における自然現象で、現実に起こることであると。古代エジプト人の概念では、星の仲間に入ろうとする死んだ王はまずドゥアドを通り抜けなければいけない。そうすれば王は正しい方向に導きられるのである。同テキストの650節にはこうあります。

死んでお星様になるのにも手順が必要である、ということか(笑)?

上記の現象が見られるのは年に一度だけであり、ピラミッド時代では夏至にしか起こらなかった。夏至の日に太陽が昇る直前に、オリオンとシリウスが地平線に現れたのだった。つまり古代エジプト人にとおて「ドゥアド」が活発な動きを見せるのは「夏至」の時だったのである。



「オシリス王国」:古代エジプト人の間には「最初の時」といわれる時代の存在が信じられていた。それは「ゼプ・テピ」と呼ばれるもので、「神々が地上に降りてエジプトに王国を作った悠久の昔」を指している。そして神・オシリスがこの支配していたとも考えられている。それも揺るぎ無い信念を持って、「ゼプ・テピ」が実際に存在したことを確信していた。そう、オシリスがこの「最初の時」に天空から降りてきてギザ・ネクロポリスに王国を作ったのだ。そしてオシリスは妻のイシスとともにこの王国を繁栄させた。しかしその繁栄は、それを嫉んだ弟、セトに突如として踏みにじられることになる。弟、セトによってオシリスは殺されたのである。このときにはオシリスとイシスの間には子供がなかった。そこでイシスはオシリスを一時的に復活させ、やがてホルスを生んだ。ホルスの使命は伯父のセトから「オシリス王国」を取り戻すことであった。セトとホルスは激しく争った。そこで、オシリスの父である大地の神ゲプは二人を仲裁した。セトの故郷の上エジプトの王にセトを、オシリスが殺された下エジプトの王にホルスを任命した。しかし、ゲプはセトとホルスの分け前が同じであることに疑問を感じるようになった。そしてセトが死んでから、遺産をホルスに相続させた。2つに分裂していたエジプトは再び統一され、ホルスは王となった。さて、セトに殺されたオシリスは「ソカルの地」に埋葬されたようである。このことはシャバカ・テキストという文献に記述されている。ホルスは「ソカルの地」でオシリスを助け出した。「ソカルとはメンフィス(地名)のネクロポリスの神であるという説」や、「ピラミッドの時代にはオシリスとソカルが同一視されていたり」、「ロスタウ(地名)は現在のギザであるが、メンフィス時代の埋葬の場所で、またソカルとして有名なオシリスの家であった」などと様々な説がある。しかし、どうや「ロスタウ」、「オシリス」、「ソカル」、「ソカルの地」などには共通されるなにかしらのものがあるように思われます。さらに第1部冒頭で記述した、スフィンクスの前足の間にある石碑には、「ロスタウ」はギザのピラミッド群のことを指すと記述されている。そしてギザが「最初の時の荘厳な場所」で、スフィンクスは「ソカルの家」の横にあるとも記述されている。
ここでシャカバ・テキストに沿ってもう一度整理して見ると・・・。
オシリスの息子ホルスは、オシリスが「最初の時」に地上に作った「オシリス王国」を手中に収めた。そしてホルスによってオシリスは「ソカルの家」に助け出された。テキストによるとその状態でオシリスの魂は天空に解放され、「オリオンのある場所」で「ドゥアド」を作った。そこは天の川の右岸で死者のための「天空(天界)のオシリス王国」だったのである。
つづく



参考文献:グラハム・ハンコック、ロバート・ボーヴァル共著 「創世の守護神」より