【戦隊の部屋・扉へ】

戦隊回顧録

戦隊シリーズ各作品について、振り返ってみる。


目次
ゴレンジャー このページ

 


1.秘密戦隊ゴレンジャー(1975〜77年)

 ゴレンジャーと言えば、NOVAが唯一、「ごっこ遊び」を体験した戦隊と言えます。
 世代的に、ゴレンジャーの放送時期が、ちょうど幼児期になりますし、次のジャッカーは、どうも素材的に「ごっこ遊びに不向き」(これは後述)。
 それに、小学校低学年の時期は、再放送のウルトラシリーズにハマってましたから、「戦隊ごっこ」と言えば、NOVA自身は、「ゴレンジャーごっこ」しか思いつかない、と。
 ということで、ここでは「ゴレンジャーと、ごっこ遊び」という観点で、振り返ってみたい、と思います。

 A.戦隊メンバーについて

戦士名 変身前の名 主な使用武器
アカレンジャー 海城 剛 レッドビュート
ニューレッドビュート
アオレンジャー 新命 明 ブルーチェリー
ウルトラブルーチェリー
キレンジャー 大岩 大太 怪力による肉弾戦
YTC
キーステッカー
キレンジャー(2代目) 熊野大五郎
モモレンジャー ペギー松山 ピンク(イヤリング)爆弾
モモカード
ミドレンジャー 明日香健二 ミドメラン
ミドパンチャー

 まず、メンバーは5人。これは当然ですね。「5人そろってゴレンジャー!」ですから。

 が途中で転勤(九州支部の教官として派遣)し、未熟な2代目に交代したものの、途中殉死してしまい、初代が出戻るという、「戦隊初の殉職」というイベントがあります。
 これについては、複雑な思い出があります。友人のT兄弟は、なりきりグッズとして、「ゴレンジャー隊員ヘルメット」を買ってもらいました。お兄ちゃんは、アカレンジャーのヘルメット。弟は、キレンジャーのヘルメット(体型も割りと似ていた)。で、ヘルメットには、変身前の名前がサインのように書かれていたわけです。アカは当然、海城剛と、そしては大岩ではなく、熊野大五郎と書かれてありました。その兄弟は割りと、ヘルメットがお気に入りで、いつでもかぶっていたわけですが、熊野が戦死してから、弟くんはヘルメットをかぶって来なくなりました。今でも、幼心に傷ついたであろう、T弟くんの気持ちを察するに余りあります。

 ともあれ、クライマックスで、アカレンジャーから一人ずつ名乗っていくシーンは、子供たちにも真似しやすく、「トイヤー!」という掛け声とともに、ごっこ遊びを盛り上げてくれました。
 個人武器も良かったですね。
 アカレッドビュート(ムチ)は、縄跳びの縄で、簡単に代用できます。さすがに本当に攻撃するわけには行かないので、「レッドビュート!」と叫んで、地面をビシッと叩きます。そうすると、戦闘員(ゾルダー)役の子が「ホイーッ」と叫んで、倒れる真似をしてくれる。この辺の掛け合いは、子供ながらに自分の役割をきちんとわきまえていた、と思います。
 アオは、弓を射る構えだけで、なりきっていました。「ブルーチェリー!」とか「ウルトラブルーチェリー!」とか掛け声とともに、矢を放つ真似をすると、やはり戦闘員は倒れてくれますね。とりあえず、武器名を叫ぶのは、「ごっこ遊び」に非常に取り入れやすかったと思います。
 は、前期は武器がありませんでした。一応、人形などには「トランシーバー型のYTC」が付属品でついていたのですが、基本的には肉弾戦で、「怒ればデッカイ噴火山た〜い!」と言って、攻撃していましたね。後期になって、棒状武器のキーステッカーが出てきて、遊び方にも幅が出てきましたが、ごっこ遊びでの印象は薄かったような。バットで簡単に代用できそうなものですが、やはり遊びで使うには危ない感覚があったのでしょうかね。
 モモは、「いいわね、行くわよ!」と爆弾を投げるだけで、OKと。「ゴレンジャーごっこ」の役割は、ジャンケンで決まっており、男の子がモモをやることも多々あったわけですが、大抵、やけくそになって、「いいわね、行くわよ!」と叫んでいました(笑)。まあ、モモの役割は、ゴレンジャーストームのボール蹴りの始めだったこともあり、それなりに大切なポジションだとは、みんな了解していたようです。
 そしてミド。実は、ゴレンジャーでNOVAが一番好きなキャラが、ミドだったりします。武器のブーメランがお気に入りで、適当な木切れで簡単に代用できました。剣のように使ったり、「ミドメラン!」と叫んで(当てないように)投げたり、とにかくアクションが行いやすい、と。近年の「ゴレンジャー本」なんかを見て、しばしば「ミドレンジャーは一番地味なキャラ」と評価されたりもしますが、そういう人はきっとゴレンジャーごっこを経験していない、と思います。ミド「ミドメランという武器だけで、充分、個性を発揮している!」と断言。

 ミド擁護の意見を、ごっこ遊びの観点以外からも、主張してみます。
 アカ「頼れる隊長」ですね。
 アオ
「クールな副リーダー」で、かつ「飛行メカのメインパイロット」、いわゆる切り札的存在でありました。
 「コミカルな怪力戦士」で、「無線機などの電子メカに強い」という属性もあります。後の戦隊でも、がメカニックや科学者属性を発揮することが多いのは、実はキレンジャー以来の伝統なんですね。
 モモは、ヒロインにして、爆弾製造の技能があります。
 そして、問題のミド。彼の特徴は、「若さと素早さ」。設定上では、特筆する個性は見られないものの、戦闘アクションでは、非常に動き回っているんですね。
 また、ドラマ上の役割はたいてい、ペギーと一緒に行動し、先行調査(スパイ活動)を担当します。その場合、大抵お姉さんのペギーが場を仕切ることになりますから、地味な印象を与えると。でも、ミドミドなりに「まじめな弟分」を演じています。ミドがもし、派手さを目指すなら、若さのあまり暴走するキャラに変わるしかなかったわけですが、そうなると、お守りに回るペギーの負担が大きくなるばかりで、スパイアクション的なドラマの進行にも悪影響が出ることでしょう。
 さて、ミドは先行調査の途上で、しばしばペギーとともに、敵に囚われることになります。昔のヒーロー物では、敵に捕らわれるのは女子供の役割でしたが、その点ではミドも子供の役割を果たしている、と言えます。ミドの外見は、もちろん子供ではなく、青年ですが、物語上の役割は子供と言っても過言ではないでしょう(青影や、G4つばくろの甚平ほどストレートでないだけで、やっていることは本質的に同じ)。

 ミドがつかまった後のドラマ展開は、大体、3つに分かれるかな。

 1.アカが敵怪人相手に苦戦。その間に、アオミドたちを救出。「5人そろってゴレンジャー!」で、クライマックス戦闘に突入。

 2.助けに来たアカも、敵の罠にはまってつかまる。アオが救出して、「5人そろってゴレンジャー!」で以下同文。

 3.ミドが自力脱出を試みる。その間に、苦戦中の仲間たち。ようやくミドが駆けつけて来て、「5人そろってゴレンジャー!」で以下同文。

 多少の役割の変動はあっても、ミドがつかまりやすいキャラで、その救出がドラマの核になることはしばしばです。
 ミドは後輩キャラなので、先行調査にしばしば出されますし、ミド一人で事件を解決してしまえるなら、戦隊である必然性はないため、先行調査に失敗することとなります。
 逆に、他のキャラがつかまった場合でも、後輩のミドに助けられるのでは印象が悪いため、その際は、先輩のアカアオに随行する形で、モモを救出することになります。よって、先輩を立てる役割の上からも、必要以上に目立つことはない、と。
 仮に、ミドが地味と言うなら、「従順で、自分の役割をきちんと果たし、暴走しない後輩キャラ」を地味と評することになり、ミドの立場で派手さを獲得しようと思えば、「生意気で、自分の求められている役割に逆らい、しばしば暴走して周りに迷惑をかけるキャラ」でしかなく、それはすなわち「プロの戦士失格」となります。

 結論として、ミドが地味なのは、「物語構造的に、おいしいところを得にくい役割」にあるからであって、その反面、アクション面では、充分に個性を発揮している、と。ゴレンジャーがドラマ同様に、アクションに力を入れている番組である以上、ミドのアクションを再度見てから、ミドが本当に地味なキャラか判断してほしいです。
 ま、映像を見ずに、ストーリー解説などから判断するなら、ミドが地味なキャラと思うのもやむを得ないし、また個性抜群の他のメンバーに比べれば、見劣りするのも仕方ないかな、と思うけど。