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・・・俺は約束を果たすため・・・ ・・・向かう事にした・・・ ・・・あの場所へ・・・ 〜3 years ago〜 電車の中・・・朝7時半 「・・・寝むい・・・」 俺は必死に眠気と戦っていた。 昨日はあまりよく眠れなかったせいで、かなり眠い。 「はぁ、何でこんな朝早いねん・・・俺が寝起き悪いの知ってるくせに・・・」 俺がこんな朝早くから大阪に向かっている理由。それはまったく下らない理由だ。 俺の寝起きの悪さが直っているかの証明だとか言って時間を早めに設定しやがったんだ。 ったく・・・いらん所はちゃっかりしてやがる・・ しばらく寝ないためにぐちぐちと考えていたら・・・・ 「まもなく、新大阪〜、新大阪〜」 「ん、もぅ着いたんか・・・早いな・・」 俺はゆっくりと電車を降り、改札を出る。 時間は9時過ぎ・・・まぁ10時までは余裕だな。 俺は久しぶりに街を見ようとゆっくりと歩いていく事にした。 久しぶりだが、街は変わっていなかった。 違うといえば、朝早いせいか、もしくは、年末のためか・・人が少なかった。 「ふ〜ん、ここ人が少ないとやっぱ変な感じやな・・・」 昔を思い出しながら歩いていると、正面に学校が見えた。 「そっか、ここに小学校あったんやな・・・変わらへんな」 俺と彩音が通った学校。今では小さく見える。 「っと、そろそろ公園やったかいの〜」 学校から更に10分ほど歩いたところにそれはあった。 俺と彩音が出会い、別れ、再会を約束したあの公園が・・・・・ 「懐かしいな・・・変わってない・・・」 周りには人はおらず、ただ静かな空間だった。 「さて、まだ少し早かったか。動くのも何だし、待つか。」 俺はベンチに座って待つ事にした。 「・・・さすがにこの寒い中遊ぶガキもおらんな。まぁ年末やし、それも仕方ないか・・」 誰も居ない公園は空虚な感じがして、少し寂しい気分になった。 「俺が居た頃はよぅこの寒い中でも走り回ってたもんやねんけどな」 ふと苦笑がもれる。と 「今と昔じゃ時代が違うわよ、今の子供なんてゲームばっかりでひ弱だしね。」 声は後ろから聞こえてくる。懐かしいあの声が・・・ 「それもそうやな、俺らの居た頃なんて、ゲームなんて無かったしな。」 ゆっくりと後ろを振り向くと、彼女が居た。日向彩音が・・・ 「あはは。おはよう、梗耶。久しぶりね」 笑顔で言ってくる彩音。外見こそ変わったが、その笑顔は変わっていなかった。 「久しぶりやな、彩音。元気にしとったか?」 「うん、元気が取りえだからね。それより、よく覚えてたね? ちょっと心配だったのよ。梗耶の事だから忘れてるんじゃ無いかって」 「当たり前やろ。一時も忘れなかったぞ、俺はな。忘れたら後が恐いからな」 笑いながら言う俺。内心ちょっと焦っていた。そんな俺をじーっと見つめ 「ふふ、ホントは忘れてたね?まぁいいよ。こうして来てくれたんだしね。」 微笑んで言ってくる彩音。さすがは幼馴染だと感心 「さっ、早く行こ。こうしてる間にも時間は過ぎてるんだよっ。」 俺の腕を掴み、足早に歩き出す彩音 「早くって何処行くつもりだよ?って腕掴むなぁ〜!」 「別に何処も行く当てなんて無いよ。いいじゃない別に〜、腕くらい〜」 不平を言いつつ腕を離さない。ここまで来ると意地でも離さないなこりゃ・・ 「何処行くでもいいから、とりあえず腕は離せ」 「・・・腕組むの、嫌?」 上目使いで言ってくる彩音。か、可愛い・・・じゃなくて 「嫌じゃないが、何だ、こうしてると勘違いされるだろ。」 「勘違い?私は別に気にしないも〜ん。」 更に俺の腕を掴む。む、胸が・・・当たって・・・ 「私、お腹空いたな〜。軽く何か食べようか。確か喫茶店があったよね?」 「ん、あぁ、確かすぐそこにあったはずだ。」 「んじゃ、行こうか」 結局、腕を掴まれたまま、喫茶店に行く羽目になってしまったのだった。 数分歩くと、喫茶店はすぐに見つかった。 「いらっしゃい、何名様?」 「二人です。」 「では、こちらにどうぞ」 ウエイトレスに案内され、席に座る。 「ご注文がお決まりになったらお呼びください。」 そういって去るウエイトレス 「何食べようかな〜」 メニューを見る彩音 「軽くにしとけよ。後で昼飯食べるんだからな。」 「わかってるよ、サンドイッチなら梗耶も食べれる?」 「あぁ、少しならな」 「んじゃ、それにしよ。すいませ〜ん。」 俺は珈琲。彩音はサンドイッチと紅茶を頼んだ。 「それにしても、髪切ったんだ。前はもぅちょっと長かったのに」 「当たり前やろ、あれから3年経ってんねんぞ。ほっといたらやばいわ。」 「それもそうだね。ねぇ、梗耶は今もここに住んでるの?」 「・・・いや、俺は家を離れて違う所に居る。」 「へぇ、梗耶の家も引越ししたんだ。ちょっと残念。おばさんに挨拶に行こうと思ってたのに」 彩音に悪気は無いとわかっていても、家の事を聞かれ、少しイラついた。 そんな時に注文の品が来て助かった。俺は珈琲を飲み、気を落ち着かせた。 「いや、俺だけだ、家を離れたのは・・・親はこっちに居るよ。」 「えっ、梗耶だけ家出たの?何で・・・っておじさんか・・・理由は・・・ご免ね」 俺の気持ちを察したのか、少し声を落して謝ってくる。 「気にすんな。ずっと家は出たかったんだし、今はのびのびやってるよ。」 微笑んで言う俺を見て 「梗耶、何だかしばらく見ないうちに強くなったんだね。それにすっきりした顔してる。」 「あん?そりゃ3年も経って変わってなかったら恐いやろ」 「あはは、それもそうだね」 1時間ほどそこで談笑した後、店を出て 「ねぇ、おばさんに挨拶してきたいんだけど、いいかな?」 不意にそんなことを言ってきた。 「別に俺に聞かんでも行ったらええやろ。俺はこの辺うろついてるわ。」 「そっ?それじゃちょっと待っててね。」 走って俺の家のほうに向かっていった。 「はぁ〜、何であの家の事言うかな・・」 俺はその場で溜息をつき、彩音の帰りを待った。 〜15分後〜 「遅い・・・何やっとんねん、あいつは・・・」 「ごめ〜ん!!遅くなっちゃった。」 向こうから走ってくる彩音。近くまで来ると、息を整えながら歩いてくる。 「ご免ね、ちょっと話が長くなっちゃって」 「まぁ、久々やったし、別にええけどな。」 「おばさん、梗耶の事気にしてたわよ。最近手紙が来ないって」 「別に書く事も無いしな、まぁ、年明けたら一回家帰るか・・さて、何だかんだで昼前か・・」 「まだお腹空いてないし、どっか見に行こう!!」 「へぃへぃ、今日はお前さんに任せるよ。」 こうして夕方まで色々な所に付き合わされ、疲れきった俺が居たのだった。 楽しい時間というものは、すぐに過ぎ行くものである。 「あ〜、面白かった〜」 満足そうな笑みを浮かべる彩音 「あ”〜、疲れた・・・」 そして、横には疲れきった俺が居る。 「まったく、運動不足だぞ、梗耶。これくらいでへこたれるなんて」 笑いながら言ってくる彩音に 「アホか、一体何ヶ所行った思ってんねん!一日で12ヶ所やぞ!誰だって疲れるわい」 「そ〜ぉ?私は疲れてないけど?」 「ったく、相変わらずタフや奴やの、お前は・・」 「元気だけが私の取りえですから」 お互いに笑いあった。時間を忘れて・・・・ 「あっ、もぅこんな時間なんだ。」 時間にして午後9時。確かに回りは暗くなっていた。 「ん、そうやな、えらい暗いと思ったらもぅそんな時間か・・」 少しの沈黙が訪れる 「そろそろ、帰らないと。電車が無くなっちゃうね。」 「そやな、そろそろ駅に向かうか」 「あはは、そうだね。電車の時間とか見ないといけないしね」 元気そうに笑っていたが、声は悲しそうだった。 〜駅〜 「んと、次の電車が最終か〜」 電光掲示板に表示されている時刻を確認する。 「切符・・・買ってくるね。」 「あぁ」 今が九時半。電車の出発が10時半・・・後60分か・・・ 「おっまたせ〜。何とか空きがあったよ」 「そっか、よかったな。」 「梗耶はどぅすんの?家に帰るの?」 「俺か?そうだな・・・初めての年だし、寮に帰るわ。何故か切符もあるしな」 笑いながら言う俺に 「あはは、何で私より先に買ってあんのよ。」 軽く頭を叩いてくる 「ふっ、これぞ先買いの術だ。」 「また、下らない術なんか覚えてどうすんのよ〜」 二人で笑えるこの時間を俺は本当に心から楽しんだ。 「さて、彩音。ちょっと外見ないか?」 「ん、いいよ」 俺たちは時間を確認し、外に出た。 「は〜、やっぱ夜でも明るいなここは・・」 「そうだね、さすが都会って感じだよ。」 「そうだな、これで当分ここともお別れってか」 しばしの沈黙 「彩音。昔渡せなかったクリスマスプレゼントだ。」 細みの箱を渡す。 「・・・開けて・・・いい?」 「あぁ、今つけてくれ」 箱を開けるよ中には片翼の天使のペンダントが入っていた。 「これ・・・片方しか翼が無い。」 暗い表情を浮かべる彩音 「当たり前だ。もぅ片翼は俺が持ってるからな」 「えっ?」 驚いた表情で俺を見る。俺は満足そうにポケットから取り出した。 「俺とお前のペンダントを併せるとちゃんとしたもんになるんだ」 彩音のペンダントを取り、俺のと繋げると、翼を持った天使が姿を現す 「探すのに結構苦労したぜ。中々ないもんなんだな、二つで一つになるもんってのは・・」 俺はペンダントを彩音の首にかける。 「うむ、どうかと思ったが、中々似合うもんだな」 「・・・・えっ、あ、ありがと・・・・」 俯きながら話す彩音 「気にすんな。前のお返しってことでな」 「でも、何で・・・何でそこまでして・・」 「前に言ってただろ、俺が離れていきそうって。まぁだからって訳じゃないが なんか、形あるもので証明してやりたかったんだ。ありきたりかもしれんけどな・・」 苦笑しながら言う俺の 「ありがとう。大事にするよ。ずっと・・ずっと・・」 涙を流す彩音が俺に抱きついてきた。 「泣くなよ、お前らしくないぞ。」 「私らしくって何よ・・少しくらいいいじゃない」 「ったく・・・泣き止むまでやぞ」 俺は彩音の頭をずっと撫でていた。 〜駅構内〜 「あはは、何か、最後感動したよ。」 普通の笑顔に戻った彩音がそう言ってくる。 「はは、俺は感動を与える人間やからの」 「調子にのんなっ!」 笑いながら軽く小突いてくる。 「「え〜、まもなく、22時30分発の列車が到着します。お乗りのお客様はホームに移動してください」」 無情にもアナウンスの声が響く 「そっか、もぅそんな時間か・・・そろそろ行くね」 「あぁ、今度は最後まで見送らせて貰うぜ」 「・・・うん、ありがと」 まもなくして列車が到着する。 「「え〜、列車点検のため2分ほど停車致します。お待ちください。」」 「それじゃ、また、会えるよね?」 「あぁ、いつでも会えるさ。生きてる限りはな」 「うん、そうだね」 「「お待たせいたしました。22時30分発の列車が出発いたします。 お乗りのお客様は速やかに近くの扉からお乗りくださいませ」」 ピーという音が鳴り響く 「それじゃ、行くね」 「あぁ、じゃあな、彩音」 入る直前俺に振り返り 「・・・・・・・・・・・・・・」 少しの言葉を耳打ちして電車に飛び乗る。 そして・・・・・・・ 電車は走り去った。 「じゃあな」 俺は走り去った後も手を振っていた。 ・・・最後の言葉・・・ ・・・それを知りうるのは・・・ ・・・当事者のみ・・・ |