○この字典は、個々の漢字を構成要素(以下「部品」という)に分解し、その部品の意味を参照する便宜を提供するものであり、そのことにより、元の漢字の成り立ちや本来の意味の理解を助けることを主眼として編集した。
○対象とする親字は常用漢字の範囲(今のところは小学1年生配当漢字のみです)とし、いくつかの漢字に共通して用いられる部品についても収録して解説した。
【部品の抽出】○部品の抽出にあたっては、現代の印刷活字や電子データの字形をベースとし、義務教育を受けた人が漢字を注視した時に部品として認識するであろう「かたち」を抽出するよう努めた。このため、抽出された部品が、意味的には一つのまとまりになっていない場合もあるが、それについては本文の解説で補った。
○部品(常用漢字であり、かつ他の漢字の部品となるものも含む)について、現代の活字でほとんど同じ形となっているものでも、成り立ちの経緯が異なるものについては、①②等の符号を付加して区別した。ただしそのうち一つが常用漢字の場合は、それには①を付加せず、部品にのみ②以下の符号をつけた。
○部品がごく少数の漢字または部品にのみ使われている場合は、部品として取り上げることはせず、当該漢字(または部品)の本文のなかで説明した。
○伝統的に同じ部に属するとされているものでも、正字と部首とで形が大きく違う次のようなものは、別の部品として扱った。これは、漢字の成り立ちを全く知らない人でも、現代の漢字の形から、部品の意味を調べることができるようにとの配慮からである。
○逆に、形の違いがわずかなものについては、同じ部品であるとみなした。
○索引は、常用漢字の部と部品の部とに分けた。部品がそれ自体、常用漢字である場合は常用漢字の部に入れ、漢字ではあっても常用漢字でないものは部品の部に入れた。
○索引における漢字の配列は、常用漢字表によった。常用漢字表の配列のルールは次のとおり。「字種は字音によって五十音順に並べた。同音の場合はおおむね字画の少ないものを先にした。字音を取り上げていないものは,字訓によった。」
○部品の配列は、その部品が漢字(常用漢字外)であるか否かを問わず、画数順とした(同画数の中での順序は、最終的には使用頻度順とすることとしたい)。
○本文は、漢字1字ごと、部品1つごとに1シート(html1ファイル)とし、索引からリンクを張った。
○常用漢字については、親字の下に、常用漢字表の音訓を、音はカタカナ、訓はひらがなで記載した。また、常用漢字表にない音訓は、必要に応じ、( )で記載した。部品についても、漢字として各種字書に音訓が掲載されているものは、なるべく( )で記載した。
○常用漢字表に「いわゆる康煕字典体」として掲げられている字体については、親字の下に「旧字体」として掲げた。また、同表に掲載されていなくても、康煕字典の字体と同表の字体が異なる場合は、必要に応じ、「康煕字典」として親字の下に掲げた。ただし、一点しんにょうの字の康煕字典体は二点しんにょうだが、それ以外に違いがない場合は、掲出しない。
○常用漢字表の字体など、当用漢字字体表以降の字体を「新字体」と表記した。
○常用漢字のうち、分解できるものについては、その構成を示して部品に向けてリンクを張り、部品の方からもそれを使う漢字に向けてリンクを張った。部品がさらに分解できる場合も同様にリンクを張った。その他、関連する字や部品の相互間に、なるべく細密にリンクを張るよう努めた。
○漢字の分解にあたっては、なるべく現代の字形のまま分解するよう努めた。古代文字から形が変わっており、原型を踏まえて解説した方が分かりやすい場合は、2行目以下に古代文字での分解を記した。
○漢字の分解の根拠については、主として字統の説によった。筆者が疑問を感じて他の説によった場合もあるが、その際は本文に明記した。
○字源や部品の成り立ちについては、すべての字について、次の字書を参照したうえで、主に「字統」及び「甲骨文字辞典」に基づき解説し、その他の主な異説も適宜記載した。(ただし、当然ではあるが、甲骨文字辞典は、甲骨文字が残存する漢字しか収録していない。)
説文解字注○各辞書からの引用は、適宜省略・要約・現代語化した。
○漢字の部首分類は康煕字典によった。このため、成り立ちによる説明と部首とが整合していない場合があるが、解説で補った。
○部首の和名は「全訳漢辞海」によった。
○甲骨文・金文・小篆等の古代文字の画像は、台湾・中央研究院のウェブサイト「漢字古今字資料庫」から引用した。その際には、極力現代の漢字の字形に近いものを選び、字形の連続性が理解しやすいように努めた。
○JIS第1・第2水準以外の部品などは、画像を用いて表示した。
○画像をリンク元とする場合は、その画像に枠線を施し、リンクがあることが分かるようにした。
○用語については、web上の字典であるので、必要に応じて適宜検索していただけばよいが、一般的でない用語については次に意味を掲げる。
・部首字:「康煕字典」において漢字を分類する各「部」の、先頭に掲げられた漢字。「○部」という部の名称の○に該当する漢字。
・初文:ある意味を持つ漢字が最初に作られた時の字体。例えば、「土」は土地神を意味する字として造られたが、のちに神事に関する部首の「示」がついた「社」の字が造られ、土の当初の意味は社が担うようになった。このため、「土は社の初文である」という。
※「六書(象形・指事・会意・形声・転注・仮借の六種の造字法)については、筆者の論考
(会意∩形声)⊃転注?(「会意兼形声」字のうちに「転注」が含まれる?)
及び 仮借とは何か もご覧ください。