「受」甲骨文 |
爪は、手の指が上から下へ伸びている象形。旧字では「」のかたちで使われ、新字体ではノツとなったものが多い。1)
妥乳浮受授爵采菜採彩渓鶏隠穏稲暖援媛
爪が起源でも、爲→為、爭→争、稱→称 のように、新字体でノツとなっていないものもある。また淫については、2010年に常用漢字に加わったが、旧字体のままである。
「揺」小篆 |
「肉」が変化した月(にくづき)の斜めになったものが、さらに変化してノツとなった。
謠→謡、搖→揺、將→将2)、奬→奨
しかし、同じ構成要素を持ちながら変化しなかったものもある。 祭察擦
「豸」甲骨文 | 「愛」小篆 | 「舜」小篆 |
☆懇・墾(豹・貌)…むじな偏「豸」は聖獣の側面の象形と言われ(字統)、新旧同型である。
☆愛・曖…ノツの部分は、元は「既」の旁の上部。後ろに心を残しながら、立ち去ろうとする人の顔で、新旧同型である。
☆瞬(舜)…「舜」の小篆は現在の字形とは異なっており、「字形の伝承が失われているようである(「字統」)」とされている。新旧同型。
注1) 旧字体では、爪に由来する全ての「ノツ」がの形になっていたと思っていたが、旧字体=康煕字典に掲載された字体 と考えると、そうとは限らないことがわかった。①に掲げた漢字の康煕字典(内府本)での字体を下に掲げる。
上図のとおり、妥・受・彩・媛などは康煕字典でもノツの形で書かれている。理由としては、字ごとに「この字はノツの形」などと決まっていたわけではなく、当時はどちらの形も違和感なく通用していたということだと思われる。 戻る
「将」小篆 | 「将」甲骨文 |
参考・引用資料
新訂字統 普及版第5刷 白川静著、平凡社 2011年
甲骨文字小字典 落合淳思著、筑摩選書 2011年
画像引用元
甲骨文、小篆 漢字古今字資料庫(台湾・中央研究院ウェブサイト)
康煕字典(内府本) 清、1716年[東京大学東洋文化研究所所蔵]:PDF版 初版 パーソナルメディア 2011年